• 2026/04/24 掲載

新入社員の「情報漏えい炎上」はなぜ起きる?“若者叩き”では見えない「企業の盲点」(2/2)

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Z世代はむしろ優秀…それでも情報漏えいが起きる“3つのズレ”

 若者の情報リテラシーの欠如を指摘する意見もあるが、それは間違っているように思う。

 筆者は大学で教鞭を取っているが、大半の学生はSNSを適切に使い分けている。多くの学生は、同じプラットフォームに複数のアカウントを開設し、公開範囲を分け、アカウントごとに投稿内容も分けている。

 一般公開されたアカウントでは、顔写真や自身のプロフィールを投稿しない学生も多い。大学公式のSNSアカウントで学生を紹介しようとしても、「顔を出したくない」という理由で断られることも多い。家族や友人・知人の写真や個人情報に関しても、むやみにSNSに投稿すつことはない。「バイトテロ」も最近はあまり起こらなくなってきている。

 政治的な主張や日常生活の不満をSNSに投稿して、他のユーザーと議論を繰り返しているのは、むしろ中高年の人たちが目立っている。

 それでは、どうして新入社員が情報漏えいを起こしてしまうのだろうか? 筆者が見る限りでは、以下の3点が大きいと考えている。

  • 社会人と学生の情報管理意識のギャップ
  • SNSに対する意識や利用の仕方の違い
  • 雇用の流動化、働き方の多様化の中での社員教育の対応の遅れ

 1つ目に関して言えば、学生は自分自身、あるいはその周辺の人たちのプライバシーを守るという意識は高いが、新卒時の段階では「会社の情報を守る」という意識がまだ植え付けられていないのだ。この点は、新入社員の教育を強化すれば対応できることである。

 教育でカバーしやすい1つ目の課題に対して、より根本的な問題となるのが2つ目の要因だ。若者たちが日常的に触れているSNSの「仕様」そのものが、情報に対する認識のズレを生んでいるのだ。

Instagramのストーリーズ文化が生んだ「最悪の勘違い」

 2点目だが、若者はInstagramのストーリーズ機能やBeRealというSNSサービスをよく使っているが、これらのサービスでは、投稿は24時間でタイムライン上から消えてしまう。

 投稿者としても、消えることを前提に「多少攻めたことを投稿しても問題ないのではないか」」という心理になりやすい。そもそも、学生を見ていると、SNSの投稿に対して「残すもの」、「残るもの」という意識が希薄なようなのだ。

 ゼミや演習で、学生がSNSアカウントを運用することも多いのだが、世代が変わるたびに「過去の投稿を全部消しても良いですか?」という提案を受ける。

 「投稿者も運営方針も変わったのだから、過去の投稿は消すのが当然」という意識のようだ。若者にとって、情報は「流れて消えていくもの」で「蓄積するもの」ではないようだ。そうした認識であれば、彼らにとってのSNSの投稿は、カジュアルで、軽いものになる。

 2ちゃんねるやまとめサイトが隆盛を誇っていた時代は、「ネットの投稿は、削除しても魚拓を取られてずっと残り続けるから気をつけるように」といった注意喚起をしていたが、「魚拓」という言葉もほぼ死語になってしまっている。「スクショ(スクリーンショット)」に変わったというのもあるが。

 若者が不用意な投稿をしてしまうのは、その投稿が「残るもの」という意識が希薄であることも一因としてありそうだ。

 実際、日テレ「ZIP!」の件も、三菱電機住環境システムズの件も、いずれもInstagramのストーリーズに投稿されたものだ。

「全員同じ常識」はもう無理…社員教育がハード化した理由

 上記の3点目については、若者にも限らないし、SNSの問題にも限らない、広範に起きている問題だ。

 終身雇用制が崩壊し、雇用の流動化が進んでおり、1つのオフィスに多様な人材が集まるようになっている。加えて、コロナ禍以降は在宅勤務、オフィス外での勤務も常態化している。近年は外国人を採用する企業も増えているが、情報管理やSNS利用に対する意識は国や文化で異なっていることも多い。

 そうした中で、スタッフ全員に共通のルールや行動規範を浸透させることが難しくなっている。

 日テレ「ZIP!」の情報漏えいは制作会社から派遣されたスタッフが行ったもののようだが、正社員ではない、駐在職員や派遣社員、アルバイトスタッフなどが情報漏えいをしてしまうケースも少なくない。

 ちなみに、2024年にNHKのラジオ国際放送の中国語ニュースで原稿にない「尖閣諸島は中国の領土」、「南京大虐殺、慰安婦を忘れるな」といった発言が行われた事件があったが、中国籍の外部スタッフによって行われたものだ。

 ひと口に「情報管理」と言っても、業界や企業によって求められるレベルが異なるし、気をつけるべき点も異なる。

 社員や取引先の個人情報を漏えいしてはならないのはどこの業界でも同じだが、企業内の情報をどこまで公開して良いのか? というのは企業や業界によって異なる。

 筆者が勤務していた老舗の総合広告会社では、取引先の情報はもちろん、業務に関する情報の流出に対してはかなり厳しかった。広告主やメディアの秘匿情報を流出させて出入り禁止にされると、数億円レベルでの損失を招きかねない。社内の情報も、下手に漏らすと競合企業を利するようなことになりかねない。

 一方で、同じ広告会社でも、ネット系のスタートアップ企業の多くは経営者や社員が比較的自由にSNSで情報発信をしていた。成長途上の企業は、取引先の開拓や社員の確保のために、自社を積極的にアピールすることが必要であるから、SNS活用に積極的なのもうなずける。

 重要なのは企業や組織の方針にのっとり、関係するスタッフに共通した教育・啓発を行うことなのだが、それが難しくなっているというのが現状なのだ。

炎上企業が最後にたどり着く“3ルール”

 SNSの情報漏えいや炎上は「継続的に起こり続けている」と書いたが、起き方にはトレンドがある。

 たとえば、飲食関連では、バイトテロが沈静化した代わりに、2023年ごろから客による迷惑行為が拡散するという問題が起きている。

 一度大きな問題が起きると、企業側も対策を強化するし、SNSユーザー側も投稿を控えるようになる。SNSの仕様が変わったり、新たなサービスが浸透したりすると、別の形で問題が浮上するようになる。

 現在起きている問題は、若者層のSNS利用の実態が、ビジネスの世界で適応しきれていないところから出てきている。企業におけるSNS利用の適正化をはかる上で重要なのは、昔も今も変わらず、下記の3点である。

  1. ガイドラインの整備
  2. ケーススタディーの充実
  3. (上記2点の)普及・啓発

 要するに、SNS利用のルールを時代に合わせて整備し、実際に起きている事例と合わせて学習し、同様の失敗をしないように改善策を講じるということだ。

 上記の3点を行うことは、容易ではないかもしれないが、特別難しいことでもない。

 ただ、「(個人の)表現の自由」、「企業の広報や宣伝」と、「(SNSが生む)リスクの回避」は相反するものであり、その間でどのようにバランスを取っていくのか? というのは、課題として残り続けるだろう。

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