- 2026/06/04 掲載
「法的にOK」でもなぜ炎上? AIで作っただけなのに… “合法だけどモヤる”問題の正体
大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書は『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社:共著)など。
法的にOKなのに大炎上…企業を襲う“AI時代の新リスク”
最近、AIが関わる表現や発信をめぐる、物議を醸す事態がいくつか起きた。まず、老舗スキンケアブランド「ウテナモイスチャー」の、全編にAIを活用して制作されたアニメ動画『潤い戦士 モイスチャー』がSNSで批判を浴び、取り下げられた。なお、これとあわせて掲出された交通広告も撤去された。本アニメが問題視されたのは、『美少女戦士セーラームーン』に類似しているという点である。ウテナ側によると、外部専門家のリーガルチェックも経た上で公開していたと言う。つまり、法的には問題がないと判断されていたことになる。
もう1つは、陸上自衛隊第1師団第1普通科連隊がAIで制作したロゴマークを公式Xで公開したところ、「好戦的だ」といった批判を浴び、公開から3日で取り下げたという事案だ。
本ロゴマークのデザインは、迷彩服を着たゾウが小銃を抱えているイラストだったが、類似のロゴがほかにあったことから著作権侵害の可能性も指摘されている。
また、生成AIが使用されたかどうかは不明な事案ではあるが、名作絵本『スイミー』の絵と文章を模倣・改編した、参政党を応援する画像がSNSで拡散し問題化した事例もあった。
なお、本件においては、絵本の出版元である好学社が「著作者人格権(同一性保持権)」の侵害に当たるとして抗議を行っている。
さらに、AIをめぐる議論は、企業が自ら作った広告やロゴ、キャンペーン画像だけに限らない。韓国では、スターバックスコリアのマーケティング施策「タンクデー」が歴史的文脈への配慮を欠くとして批判を浴びた後、生成AIで作られた嘲笑的な画像や動画がSNS上で拡散した。AIは制作の道具であると同時に、炎上を拡散・増幅する装置にもなりつつある。
また、創作物ではないが、プロ野球・巨人の阿部慎之助監督の辞任をめぐる騒動でも、娘がChatGPTに相談したことが事態を動かす一因になったと報じられ、AIとの向き合い方が注目された。ここでも問われたのは、AIの出力を人間がどのような文脈で受け止め、現実の判断にどうつなげるのかという問題である。
創作物は人々に受容され、愛されてこそ意味がある。著作権をはじめとする法的な問題をクリアすることはもちろん重要だが、それ以上に人々の反発を浴びてしまっては逆効果だ。
では、なぜAIによる創作物は人々の批判を浴びやすいのだろうか。 【次ページ】なぜAI創作は「なんか嫌」? 野田秀樹氏も東大入学式で指摘した“ズレ”
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