• 2026/05/25 掲載

なぜ日本発IPは日本で稼げないのか?NARUTOはフランス、ドラゴンボールはサウジに開園

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2026年4月、フランスのテーマパークに『NARUTO』の大型エリアが誕生した。さらにサウジアラビアでは、『ドラゴンボール』の巨大パーク計画も進んでいる。どちらも世界的人気を誇る日本IPだが、その「稼ぎ場」は次々と海外に奪われつつある。なぜ、日本はアニメ・マンガ大国でありながら、自国の人気IPを巨大ビジネスへ変えきれないのか。背景には、日本コンテンツ産業が長年抱えてきた“構造的欠陥”がある。本稿では、日本が取り逃がしてきた莫大な利益の実態を読み解いていく。
執筆:都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家 谷頭 和希

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家 谷頭 和希

1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。テーマパークやチェーンストア、都市についての原稿を主に執筆。著書に『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)がある。

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NARUTOはフランス、ドラゴンボールはサウジへ──日本発IPが「コンテンツ大国・日本」で稼げないのには構造的欠陥があった…

なぜ「NARUTO」パークは日本ではなくフランスに作られた?

 「NARUTO 木ノ葉ランド」は、南フランス・モントゥーのテーマパーク「パルク・スピルー・プロヴァンス」内に開業した『NARUTO-ナルト-』の常設テーマエリアである。約1.5ヘクタールの面積で同作の舞台「木ノ葉隠れの里」を再現している。

 また、全長1キロメートル超、最高時速75キロメートルの大型コースター「九尾アンチェインド」や「螺旋丸チャクラ・ローテーション」などのアトラクションに加え、火影屋敷、火影岩、木ノ葉の門、ナルトとサスケのフォトスポットなどを備える。NARUTOを「読む」だけでなく、「体験する」空間へ転換したといえるだろう。

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【画像付き記事全文はこちら】なぜ日本初IPが海外に?日本の「構造的欠陥」に迫る
左:作中に登場するキャラクターである九尾をモチーフにしたジェットコースター 右:作中に登場する火影岩や火影屋敷、木ノ葉隠れの里をリアルに再現したスポットが多くある

 もちろん、「パルク・スピルー」にNARUTOのエリアが誕生するのは偶然ではない。そもそも同園自体が、フランス独自のコミック文化である「バンドデシネ」をテーマにしたパークなのだ。

 「バンドデシネ」とは、フランスやベルギーなどを中心とした地域のコミックの総称である。現地においてコミックは「第9の芸術」として高く評価されており、世代を問わず日常的に親しむ文化として深く定着している。

 そうした下地があったからこそ、海を越えてやってきた日本の「マンガ」も広く受け入れられてきたのだ。その点で、NARUTOエリアが誕生するのは、まったく違和感がない。

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【画像付き記事全文はこちら】
ナルトと一緒に記念撮影ができる

 現在、フランスのコミック市場において、日本のマンガは圧倒的な存在感を放っている。出版ニュースサイト『ActuaLitte』によれば、フランスのコミック(バンドデシネなどを含む)市場全体の中で、日本の「マンガ」単体が占める割合は実に27.3%にのぼり、書籍全体でも5%に達するという。

 日本のマンガが広くフランスで受容されていることがわかるだろう。同記事では、2021年のマンガ販売数の上位タイトルとして、『鬼滅の刃』や『ONE PIECE』とならび、『NARUTO』が挙げられている。

 単に売れているだけではなく、フランスで日本のマンガを広げた存在として、NARUTOは特別なポジションを持っている。輸入された当初からオンラインコミュニティなどを通じて熱心なファンが存在し、社会現象とまでいわれているのだ。

 フランスで『NARUTO -ナルト-』のマンガ・アニメを出版・配信してきたMedia-Participationsグループは今回のNARUTOエリア建設にあたり、次のようなコメントを出している。

 20年以上前、『NARUTO -ナルト-』は私たちの人生に飛び込み、フランスの文化を大きく変えました。

 そして今、『NARUTO - 木ノ葉ランド』という没入型エリアを通じて、この名作との特別な絆が形となります。

 こうした流れから、バンドデシネのテーマパークであるパルク・スピルーにNARUTOエリアができることは、まったく偶然ではないのである。

ジャンプの大型パークが「日本に存在しない」残酷な現実

 このような必然性があるとはいえ、やはり「ジャンプ作品」をはじめとする日本生まれの強力なIPのテーマパークが、なぜ国内に誕生しないのかと思わなくもない。

 実際、日本でも屈指の人気を誇るジャンプ作品をメインテーマにした大型パークは現在、日本国内にはほとんど存在しないのだ。

 かつては池袋のサンシャインシティの中にジャンプをテーマとした「J-WORLD TOKYO」というパークがあった。しかし、それも2019年に閉園し、現在はわずかに日本各地のテーマパークの中に、アトラクション単位やエリア単位でのコラボレーションがあるだけだ。

 たとえば、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のXRライド(VRゴーグルを装着したジェットコースター)は、『SPY×FAMILY』や『進撃の巨人』などとコラボレーションしている。

 また、NARUTOでいえば、淡路島にある「ニジゲンノモリ」にNARUTO・BORUTOをテーマにしたエリアがある。ただし、同施設はアスレチックや謎解きを中心とした「体験型(フィールドワーク系)」のパークである。多くの人がテーマパークや遊園地と聞いて想像するような、ジェットコースターなどの大型の乗り物(ライド系アトラクション)は設置されていない。

 規模や設備の面を見ても、ニジゲンノモリの「忍里」が約8000平方メートル規模であるのに対し、前述したフランスの「木ノ葉ランド」は約1.5ヘクタール(1万5000平方メートル)を誇り、時速75kmの大型コースターまでも備えている。両者を比較すると、IPを活用した「テーマパーク」としてのスケール感や投資規模に、明確な差があるのが現状だ。 【次ページ】ドラゴンボールはサウジに…日本が海外に「先を越される」根本原因
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