- 2026/08/13 06:10 掲載
なぜ日本企業は「指示待ち部下」が生まれる?AI時代に露呈する“組織構造の欠陥”とは(2/2)
なぜ日本は「指示待ち部下」ばかり? 組織に潜む致命的な罠
──著書にある「指示待ち部下」という言葉について、なぜ日本企業で生まれやすいと思われますか?ピョートル氏:日本の戦後の歴史を見ると、早いスピードでインフラを整え、上からの指示がカスケードされて大手企業が回っていくというのは当然正しいやり方でした。一方で、それが“今正しいのか”を疑ったほうがいいです。インフラ企業であれば指示を待つことも正しいですが、ほとんどのホワイトカラーがその状況に陥ってしまうと主体的に仕事ができません。
そうした背景を踏まえ、私は、日本企業で「チーム」と呼ばれている組織の多くが、本当の意味でのチームになっていないと考えています。
本来、チームとは、共通の成果から逆算して、必要な役割や能力を持つ人を集めた集団です。しかし日本企業では、人事管理上の所属として人が配置され、何を一緒に達成するためのチームなのかが曖昧なままになっていることがあります。
──「本当の意味でチームチームになっていない」とは具体的にどういうことでしょうか?
ピョートル氏:本来、「チーム」というのは、明確なゴールから逆算して作られる団体のことを指します。たとえばサッカーで試合に勝つという目的に向かってメンバーを集め、トレーニングします。しかし日本企業は毎年の人事異動で新しい人が入り、ゴールを達成するための人たちではなく、ジェネラリストとして集まってしまいます。そうするとゴールを理解できないまま指示待ちになってしまいます。
──メンバーの構成自体が、ゴール逆算型になっていないということですね。
ピョートル氏:そのとおりです。人事異動によって「なんとなくその課に新しい人が入り、なんとなく残るメンバーもいる」という状態の集団になってしまいます。メンバー自身が「自分たちの仕事のゴールは何か」を本質的に理解できないまま配置されるため、結果として自分で動けず、上司からの指示を待つしかなくなってしまうのです。
人事異動自体が問題なのではありません。問題は、異動のたびに、チームの目的、期待される成果、本人の役割、判断基準が十分に再定義されていないことです。
会社とは、何らかの社会的な価値を生み出す組織であり、そこには独自のバリューチェーンが存在します。企業の存在意義や、社会にもたらす価値を逆算で理解した上で個人が動くこと。そして、ハイコンテキスト文化に頼って個人が自分なりの解釈で仕事の意味付けをするのではなく、明確な目的を持ち、当事者意識を持って行動していくこと。これらが言語化・具現化されて初めて、組織の本当の強みにつながるのです。
マネージャーの罠、世界の一流が“タスクより先に教えること”
──「指示待ち部下」が生まれる要因として、管理職側の役割についてはどのように影響しているのでしょうか?ピョートル氏:もう1つは管理職の役割です。ゴールを決めてメンバーを集めるコーチのような役割ではなく、マネージャー自身が定義されないまま、プレイングマネージャーになって自分で手を動かしてしまいます。
マネージャーがやってくれるなら自分はやらなくていい、あるいは「やってみなさい」と言われいざやってみたら「やらなくていい」と言われるパラドックスの状態で、その結果、部下は「自分で判断するよりも、上司の指示を待つほうが安全だ」と学習してしまいます。
「自分で考えて」と言われて動けば、「なぜ勝手に決めた」と言われる。確認すれば、「それくらい自分で考えろ」と言われる。これを繰り返せば、指示を待つことは、本人にとって合理的な行動になります。
──では、世界一流のリーダーは、メンバーを成長させる上でどこまで教えて、どこから経験させるべきなのでしょうか?
ピョートル氏:世界一流の人は最大の成果を前提として仕事をしています。タスクをやりこなすことを教えるより、本格的にこの仕事の意義や前提、判断軸になるものをまず教えなければなりません。
レンガ職人の話のように、ただ壁を作っているのか、家族を養うために稼いでいるのか、はたまた大聖堂を作っているのか、目的や目標設定の仕方、仕事の判断の自由と責任領域をしっかり定義して理解してもらいます。ただ、それをひたすら体験させないとダメで、教えていくことと自分で解釈して軸を作っていく経験の両立がとても大事です。
AI時代、「自律性」はどう育つ? 日常会話の“強力な武器”
ピョートル氏:AI時代は情報の価値が暴落しています。自分の仕事をはっきり定義でき、仕事の役割(会社のビジョンや部門の戦略など)を理解した上で、自律的な判断ができる人がAIを使い倒せます。あらかじめ決められた作業をこなすだけの仕事は、AIによって仕事が奪われるかもしれません。
──自律的な判断はメンバーができると良いですが、リーダーと必ずしも一致するとはかぎりません。それを近づけていくコツはありますか?
ピョートル氏:チームの存在意義をゼロベースで考えていただく必要があります。一緒に仕事をするにあたって、自分たちの仕事が社会にどういう影響を与えているか、自分にどういう意味があるかを意味付けしなければなりません。
それをするためには対話が必要です。「この仕事とは」「判断基準とは」というのを日常の業務上の会話にしないかぎり、ズレが起こりやすいです。1on1やコーチングを通じて、定期的に俯瞰する会話が必要です。対話が足りていれば誤解やズレが減るはずです。
──BtoBなど間接的な価値を届けている会社や、そこまで意識高く働いていない方が多い環境では、どう伝えていくべきでしょうか?
ピョートル氏:ひたすら考えさせるというのがポイントです。「我々の仕事の意味とは」「社会の価値とは」というのを毎日どこかの会話の中でポロッと聞いていく。対話には問いがあり、問いを投げかけて考えさせ、持ち帰ってもらう。
たとえばITサービスの営業であれば、ただシステムを売るだけでなく、それを通じてクライアントの会社に何を提供しているのか(セキュリティ、働きやすさ、社員のウェルビーイングなど)を会話にします。数字のターゲットの会話だけでなく、抽象度を上げて仕事が人にどういう影響を与えるのかが会話になれば、エンゲージメントが高く働きがいのある仕事につながります。
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