- 2026/09/24 07:10 掲載
AIで「37%時短」でも頭は鈍る?「どんどんバカ」になる人・ならない人の違いとは
1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長。現在、イトモス研究所所長。著書に『週刊誌がなくなる日』など。
AIで「頭が良くなる人・悪くなる人」の決定的な違い
AIに企画書の案を作らせる場面を考えてほしい。Aさんは、返ってきた文章を軽く直して提出する。Bさんは、数字の出どころを調べ、別の見方がないか考え、最後に自分の言葉で書き直す。2人とも、AIのおかげで仕事は早く終わる。違うのは、仕事が終わった後に残るものだ。Aさんの手元には企画書が残る。Bさんには企画書だけでなく、数字を確かめ、考えを比べ、自分で決めた経験も残る。
次の仕事で、AさんはまたAIの答えを待つ。Bさんは前より良い質問を作り、AIの間違いにも気付く。
この文章でいう「頭が良くなる」とは、AIから答えをたくさん得ることではない。AIを閉じた後も、自分で理由を説明し、学んだことを別の問題に使えるようになることだ。見栄えの良い成果を出せても、AIなしで考えを進められないなら、本人の力は伸びていない。
AIで「37%時短」でも…残らない“ある能力”
AIが仕事を速くする効果は、すでに数字で確認されている。科学誌『サイエンス』に掲載された「生成AIが生産性に与える影響の実験的証拠」(2023年)は、文章を使う仕事に就く444人を調べた。参加者は報告書やメールなど、仕事に近い文章を作成した。ChatGPTを使った人は、作業時間が平均で約37%短くなり、文章の評価も上がった。速さと質の両方で、AIを使った人が上回った。
この数字を見て、私が知りたくなったことがある。AIで速く書けた人は、次の日に1人でも同じ水準の文章を書けるのか。
研究はそこまで追っていない。分かったのは、AIと一緒に作れば、短い時間で良い文章ができるということだ。使った人の文章力そのものまで伸びたとは、この実験では確認されていない。
仕事の現場では、この成果だけでも十分に大きい。書く時間が減れば、調査や相談に時間を回せる。問題は、空いた時間まで次の作業で埋めてしまうことだ。速くなった分を考える時間に戻さなければ、効率だけが上がり、学びは増えない。
カーナビを考えると分かりやすい。知らない町でも、案内に従えば目的地へ着ける。便利になったのは移動であって、道を覚える力ではない。
周りの景色を見て、自分でも道順を考えた人には土地勘が残る。画面だけを見ていた人は、次も案内を待つ。AIで仕事をするときにも、これと同じ差が生まれる。 【次ページ】コンサルで起きた「正答率低下」の原因
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