• 2026/07/17 05:10 掲載

AWS障害でPayPayやニコニコなど停止…なぜ大規模な障害となったのか?企業の対応策は(2/2)

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クラウド固有機能は便利なほど移れなくなる

 AWSの代わりにAzureやGoogle Cloudも契約すれば、障害問題は解決するのか。答えは、それほど単純ではない。3社はいずれも複数のゾーンやリージョンを使う機能を提供しているが、どの機能を選び、どのように組み合わせるかは利用企業に委ねられている。

 マイクロソフトも、Azureが可用性ゾーンや複数リージョンなどの機能を提供する一方、要件に合う機能を評価して構成するのは利用者の責任だと説明している。

 Google Cloudも、自然災害やケーブル切断など予測できない障害によって、サービスが停止する可能性があると明記する。その上で、RTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)を定め、障害を前提にアプリケーションを設計するよう求めている。

 むしろ難題は、各クラウドの固有機能が便利であるほど、別のクラウドへ移りにくくなる点だ。データベース、認証、メッセージ配信、監視、生成AIなどをマネージドサービスへ深く組み込めば、開発速度や運用効率は上がる。その一方、別サービスとの仕様差が広がり、プログラムや運用手順の作り直しが必要になる。

 マルチクラウドは、AWSとAzureの契約書を2枚持つことではない。データを同期し、代替環境を起動し、利用者の通信を切り替え、担当者が復旧作業を実行できて初めて意味を持つ。技術だけでなく、運用担当者の習熟も必要になる。

 すべてを異なるクラウドへ移植可能にすれば、今度は開発速度とコストを犠牲にする。重要なのは、移しやすさと固有機能の利便性を一律に判断せず、止まった際の事業影響に応じて使い分けることだ。

止まらない企業が使い分ける3つの待機方式

 止まらないシステムを作る際、企業が選べる代表的な方式は「ホット」「ウォーム」「コールド」の3つである。

 ホットスタンバイは、複数の環境を常時稼働させ、障害時にほぼ即座に切り替える方式だ。停止時間とデータ損失を最小化しやすい一方、平常時から二重の処理能力を維持するため、費用と運用負荷が大きい。

 ウォームスタンバイは、代替環境を小規模で稼働させておき、障害時に処理能力を拡大する。復旧まで一定の時間はかかるが、費用と回復力のバランスを取りやすい。コールドスタンバイは、データや設定をバックアップし、障害後に環境を再構築する方式。費用は抑えられるものの、復旧には長い時間がかかる。AWSも、バックアップから複数リージョンの常時稼働まで、費用と複雑さが異なる複数のDR方式を示している。

 全機能をホットスタンバイにする必要はない。決済、ログイン、注文受付など売上に直結する機能はホットまたはウォームとし、閲覧履歴や社内管理画面はコールドにするなど、機能ごとに変えるべきだ。

 PayPayのオフライン支払いモードも示唆的である。通信が不安定でも一定条件下でバーコード決済を行えるが、1回5万円、過去24時間で5回までなどの上限がある。完全な通常運転ではなく、重要な機能だけを残す「縮退運転」の発想だ。

 企業が最初に決めるべきなのは、どのクラウドを追加契約するかではない。障害時にも絶対に残したい顧客体験は何か。そのために許容できる停止時間とデータ損失はどれくらいか。そこから待機方式を選び、実際に切り替える訓練を行う。AWS障害が突き付けたのは、クラウドの信頼性よりも、企業側の覚悟と設計力なのである。

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