- 2026/08/12 06:10 掲載
グーグルやアマゾンと「立場逆転」現実味…NTT「IOWN」が秘める「逆転シナリオ」全貌(3/3)
処理能力じゃない…この先の動きを左右する「あの問題」
同社は2025年6月、福岡と大阪を結ぶ約600キロの区間で、太陽光や風力による発電量に合わせてコンピューターの処理をする場所を30分ごとに切り替える実験を行い、再生可能エネルギーを使う割合を最大31%も高めることに成功した。また、NTTのグループ会社では、全国7300カ所のNTTのビルと大量の蓄電池を束ね、大きな火力発電所1つ分(60万kW規模)に相当する電力の調整力を確保しようとする動きもあった。
一方のグーグルは、資本の力で勝負する。米国の原子力スタートアップ企業Kairos Powerと連携し、2030年以降、次世代の小型な原子炉から最大50万kWの電力供給を受ける契約を結んだ。2025年には、将来稼動する設備を含め、1200万kW(12GW)を超える新しいクリーンエネルギーの契約も結んでいる。ただ、グーグルの電力使用量は、2025年は前年より37%も増えて過去最大の伸びを記録しており、AIのための設備を作る速さに、電力を脱炭素にする速さが追いついていないと環境報告書で自ら認めざるを得ない状況にある。
アルファベットは2026年第2四半期末時点で、現金・現金同等物と短期市場性有価証券を計2425億ドル保有し、2026年の設備投資計画を1950億~2050億ドルへ引き上げた。一方、NTTの2025年度連結売上高は14兆4091億円である。指標が異なるため単純比較はできないものの、グーグル側の投資余力が極めて大きいことは確かだ。IOWN関連の研究開発費は2023年度で年間約1000億円ほどである。
だが、お金の多さだけでインフラの覇権が決まるわけではない。
NTTは、青森県にある2つの病院をIOWN回線で結び、遠隔で手術を支援する実験を行ったところ、情報が届くまでの時間は片道わずか0.28ミリ秒、その揺らぎは平均0.00マイクロ秒、最大でも0.02マイクロ秒以下に抑え込まれたと公表している。また同社は、三重県で本来3人がかりで動かす重機3台を、たった1人が1つの操作台から動かす実証にも成功している。
人手が足りない日本にとって、これは単なる技術のお披露目ではない。離れた場所から低遅延環境で作業に関わり続けることができるのは、大きな意味を持つだろう。また、人間が判断や操作を担い続ける仕組みは、AIによる自動化に力を入れるグーグルの動きとは違う、もう1つの未来を指し示しているとも言えそうだ。
次世代覇権をかけた「日韓台タッグ」の全貌
すでに2024年8月には、台湾の中華電信データセンターと東京のNTT研究拠点をこの光の回線で結ぶ世界初の国際的な接続が実現しており、約3000キロを約17ミリ秒という短い遅れでつなぐことに成功している。
参加や出資に興味を示す企業は世界で20社を超え、サムスン電子やSKハイニックス、富士通、NECといった名前が並ぶ。海外メディアからはこの基金について、巨大IT企業が世界標準を確立してしまう前に、IOWNをNTT単独の賭けではなく、地域標準に格上げして競争に対抗するための資本投入だとの分析もある。日本だけでは、とうていグーグルに太刀打ちできない。しかし日本と韓国、台湾が力を合わせ、光と電気を組み合わせた次の主戦場に狙いを定めれば、勝算は変わってくる。
無論、課題は隠しようがない。NTTが開発している光と電気を組み合わせた次世代の部品は、市場投入時期においてブロードコムが既に量産している製品に対して1年超の遅れを抱えている。なお、この「遅れ」は市場投入タイミングの差であり、技術成熟度や用途・提携関係まで含めた総合劣後を意味するものではない。
また、原子力のように24時間安定して電力を供給できる電源の確保でも、グーグルに1日の長があるほか、IOWNは国際機関と連携しながら標準化を進めているが、世界共通の規格として定まり、広く使われる段階にはまだ至っていない。さらに、スイッチICなどではブロードコムを含む外部企業と協業しており、IOWNの中核製品も完全な自社完結ではなく、国際的な供給網との連携が必要だ。
それでも、この国が長らく失っていた攻めの1手が、ここにようやく姿を現したことだけは間違いない。瀕死の日本を救うのは、グーグルに真正面から勝つことではない。グーグルを、自分たちが作った光の土俵の上で働かせることだ。
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