- 2026/09/18 06:10 掲載
オリンパスはなぜ10年以上も損失を隠せた? 約960億円を“飛ばし”た驚きのカラクリ(3/3)
医療に集中、再生への道…どん底から過去最高益へ
この事件には、前向きな後日談があります。ここで時計を事件直後に戻し、その後の再生を追いましょう。再生の過程で、オリンパスは外部の資本や社外の人材を積極的に取り込みました。2012年9月、ソニーとの資本業務提携(出資を受け入れつつ、事業でも協力する関係)を決め、500億円の出資を受け入れます。2019年には、株主である米投資ファンド・バリューアクト・キャピタルからの社外取締役受け入れを発表しました。
物言う株主を遠ざけるのではなく、取締役会に迎え入れる。疑念を口にした社長を解任した、事件当時の取締役会とは対照的な選択です。
事業も大胆に絞り込みました。2021年にカメラなどの映像事業を売却し、世界シェア約7割を持つ消化器内視鏡を中核とする医療機器メーカーへと軸足を移します。2023年3月期には、調整後営業利益ベースで過去最高益を記録しました。調整後営業利益とは、連結損益計算書上の営業利益に会社所定の調整を加えて示す、オリンパス独自の利益指標です。その直後の2023年4月には顕微鏡などの科学事業も売却し、絞り込みをさらに進めました。
なお、連結損益計算書上の営業利益は、2024年3月期に米食品医薬品局(FDA)への対応費用などで大きく減少しており、課題が消えたわけではありません。それでも、事件から10年あまりで、この会社は医療の分野を軸に業績を立て直したのです。
ここで思い出したいのは、あの厳しい第三者委員会報告書の結びです。報告書は「しかしながら、オリンパスはもともと真面目な従業員と高い技術力を有する健全な企業であったのであり、企業ぐるみの不祥事が行われたわけではない。オリンパスは、この際旧経営陣を中心とする病巣を剔抉し、文字通り人心を一新して再生を目指すべきである。」と結ばれていました。「剔抉(てっけつ)」とは、えぐり出すことです。
腐っていたのは経営の中枢であって、現場の技術と誠実さではない。ここまで見てきた外部資本・社外人材の受け入れから医療分野への集中までの歩みは、まさにこの2011年の提言に沿ったものだったといえるでしょう。
資産は「額」ではなく「根拠」で読む
本件のように不透明な取引を重ねると含み損は外から見えにくくなります。のれんはそもそも中身をつかみにくい勘定です。だからこそ、資産は「いくらあるか」ではなく「その値段に理由があるか」で読む必要があるのです。
一度は監理銘柄にまで指定された会社が、10年あまり後の2023年3月期に、調整後営業利益ベースで過去最高益を記録した。どん底からここまで戻れる。その距離の長さこそ、失敗から学ぶことの価値を、私たちに教えてくれます。
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