- 2026/09/20 07:10 掲載
ローソン297円弁当が凄すぎる…コンビニが高くなりすぎた日本の「残酷な現実」とは(2/2)
給料は増えたのに使えない?「家計3.6%減」の残酷な現実
総務省の家計調査によると、2026年7月の二人以上世帯の消費支出は1世帯当たり30万1,245円となり、物価変動の影響を除いた実質では前年同月比3.6%減った。
ローソンも今回の商品投入の背景として、二人以上世帯の実質消費支出が8カ月連続で前年を下回り、食料支出も実質1.3%減ったことを挙げている。企業自身が、家計の節約志向を新商品の背景として明示しているわけだ。
一方、賃金だけを見ると景色は違う。
厚生労働省の毎月勤労統計では、7月の現金給与総額は前年同月比4.7%増。持ち家の帰属家賃を除く消費者物価指数で実質化した実質賃金も2.4%増となった。
「給料が物価以上に増えたのなら、なぜ消費は減るのか」。ここに、今回の297円弁当を単なる“安い商品ニュース”で終わらせられない理由がある。
もっとも、毎月勤労統計と家計調査は調査対象も算出方法も異なり、数字を単純に差し引くことはできない。また、家計調査では勤労者世帯の実収入そのものが7月に実質3.8%減っており、すべての家庭が「給料が増えて余裕が出た」わけではない。
したがって、「日本人が一斉に貧しくなった」と結論づけるのは乱暴だろう。
ただ、もっと厄介なのは、賃金に改善の兆しが出ても、家計がすぐには財布のひもを緩めていないことである。
日本銀行も2026年5月、さくらレポート別冊で、消費関連企業が消費者の節約志向や「メリハリ消費」に対応する様々な工夫を凝らしていると報告した。数年にわたる食品や日用品の値上げを経験すれば、「給料が少し増えたから、また以前のように使おう」と簡単には戻らない。
297円という数字が強烈に響く背景には、所得額だけでは測れない変化がある。商品棚の前で「本当にこれを買う必要があるか」と考える。以前なら気軽に買っていた数百円の商品まで選別する。そんな価格への厳しい視線が、日本人の日常に定着しつつある可能性だ。
297円と797円を同時投入、「メリハリ消費」の正体
ただ、「日本人は安い物しか買えなくなった」と考えてしまうと、今回のローソンの商品戦略を見誤る。なぜなら同社は、297円の商品と同時に797円の商品まで売り出すからだ。「贅沢すぎ!」では、えび、イカ、あさりを使った「海鮮づくしペスカトーレ」が税込797円。肉をふんだんに使ったラーメンも797円、熊本県産と茨城県産の和栗を使った「お重モンブラン」は786円だ。一方、「一点突破すぎ!」は297円から。安い物だけに寄せるのではなく、両端を狙っている。
同社によれば、高価格帯の酒類やスイーツは好調で、「ご褒美消費」の傾向も見られるという。ここに、現在の日本人の消費を読み解くヒントがある。
もちろん、297円の商品を買う人と797円の商品を買う人が同じだとは、今回の発表だけでは断定できない。ただ、日常の昼食では数百円を節約する一方、「今日は少しぜいたくしたい」という場面では800円近く払う。そうした使い分けが広がれば、企業側の商品戦略も大きく変わる。
かつてのコンビニは、多少高くても「近くて便利」「何でもそろう」という価値で成長してきた。しかし、商品価格が上がり、消費者が1品ごとの値段を見るようになれば、中途半端な価格では選ばれにくくなる。
そこで必要になるのが、「ここまで安いなら買う」「この商品なら高くても払う」という、明確な理由だ。
ローソンの297円弁当は、日本人が「安い物しか買えなくなった」ことを示す商品ではない。むしろ、物価高によって日常の支出にはシビアになりながら、価値を感じた物には金を使うという、消費の選別が以前より極端になった時代を象徴する商品と言えそうだ。
だからこそ、297円弁当は面白い。そして同時に、少し笑えない。
安さそのものを楽しさに変えた「一点突破すぎ!」と、797円でも“食べたい理由”を作る「贅沢すぎ!」。その両極端な商品を同時に投入するローソンの戦略から浮かび上がるのは、「日本人が貧しくなった」という単純な話ではない。
給料が少し増えても、何に金を使い、何を削るのかを厳しく選ばざるを得ない。コンビニの297円弁当が魅力的に映ること自体が、物価高を経た日本人の財布に残った「残酷な現実」なのである。
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