- 2026/09/02 07:10 掲載
【全53社のデータ徹底比較】“今"サイゼリヤが「外食最強」と言えるほど強い理由
【連載】流通戦国時代を読み解く
nakaja lab 代表取締役。みずほ銀行の中小企業融資担当を経て、同行産業調査部にてアナリストとして産業動向分析に長年従事。分野は食品、流通業界。執筆、講演活動中で、TV等マスコミで情報発信中、連載記事は月6本以上。主な著作物に「図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書」(技術評論社)、「小売ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)などがある。
右肩上がりは53社中“4社だけ”? サイゼリヤの実力
長らくほとんど値上げせずに頑張っていたサイゼリヤが、ついに値上げを検討するというニュースが報じられると、同社の株価は一気に急騰、5,000円台後半だった株価は、2026年7月末ごろには年初来高値8,420円をつけたらしい。物価高騰の中、最後まで値上げせず頑張っていたサイゼリヤは、若干の値上げ実施では客足も落ちないだろうとみられており、収益改善に直結するとして多くの投資家の注目を集めたのだという。
たしかに、今、都会で1,000円を切るランチを探すことをほぼ諦めざるを得ない中、パスタランチで500円、ハンバーグランチでも600円で十分おいしいサイゼリヤは、チェーンレストランとして圧倒的なコスパを実現している。
チェーンの客足の動きを見る既存店客数増減率(対前年同月比)を見てもサイゼリヤは、常に業界トップクラスである(下図)。
この図表は最近のデータを比較したものだが、驚くべきことに、遡れば2021年11月以降、57カ月ずっと同社は客数プラスを維持しているのだという。
これがどれだけすごいことかというのは、下の表を見てもらえばいいかもしれない。表は上場主要外食企業(53社を任意で抽出)の客数増減率(対前年同月比)を一覧にして、マイナスとなった月を黄色く網掛けしたものである。
一見して黄色のコマがかなり多いことが分かると思うが、ここで黄色のコマがない企業は、サイゼリヤ以外にはモスフード、幸楽苑、大戸屋しかなく、合わせても4社にとどまる。さらに言えば5年弱も連続でプラスを維持している外食企業は、ほかには存在しない。
サイゼリヤのコスパはコロナ前でも十分にトップクラスだったが、他社が価格転嫁のため値上げに踏み切る中でも価格を据え置いたサイゼリヤは、圧倒的な存在となったのである。
物価上昇でキツイ中で…客数が減った業態は?
なぜ、こんなに客数マイナスの企業が増えたのかと言えば、物価上昇が賃上げを上回る、いわゆる実質賃金マイナスの状況が3年以上も続いたことが関係している。毎日食べる食品の支出は懐具合が厳しくても減らすことは難しいのだが、選択的支出である外食に関しては削減の対象となる。2025年以降、政府主導で大企業における賃上げはかなり進んだため、2026年1月以降、統計上の実質賃金はプラスに転じ、最近6カ月間はプラスを維持している。しかし、これはあくまでも平均値の話であって、中小企業勤務者、年金生活者などでは、いまだに実質賃金は目減りし続けており、3年間累積したマイナスで実質賃金は二極化が進んでいると思われる。
実際、少し前に家計調査のデータを使って、所得階層別の外食支出の動向を確認したが、所得が高い層では外食支出は増えていたが、低い層ではかなり外食を減らしていた。
そのほかのデータからも、賃上げは20~30代で進む一方、40~50代では停滞気味という傾向が見える。中小企業勤務者のファミリー層という大きな集団でいまだ賃上げは不十分だということであり、そのため、先ほどの表の中でもファミリー層向けの業態(これまでの人気業態)で黄色のコマが増えた、というのが個人的な印象である。
たとえば、回転すし、焼肉チェーンといった家族で週末に訪れる定番先とされていた業態で、マイナスの企業が増えているように見えるのだが、原材料高騰もあり、家族で訪れた際の合計額もかなり負担感が増しているのであろう。物価上昇が客数に今も影響を及ぼしているということは間違いなさそうなのである。 【次ページ】餃子の王将は苦戦、日高屋は好調…この差はどこから?
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