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  • 2009/10/23 掲載

フリーミアムとは?クリス・アンダーソンの『Free』をめぐる論争【○○はビジネスになるか(3)】

無料化は合理的か?

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デジタルコンテンツ・ビジネスが苦戦する中に登場したクリス・アンダーソン氏の『Free』は、書評などに取り上げられ、大きな反響を呼んだ。ただ、その主張は読む者に衝撃を与えた一方、人気作家でコラムニストのマルコム・グラッドウェル氏らによる多くの反論も呼んだ。今回はこの『Free』をめぐる論争とその結果から何が導き出されたのかについてご紹介しよう。

行宮翔太

行宮翔太

ローカルTV記者、全国紙記者を経て、ITやビジネス分野のライティングを手がける。NTTPCコミュニケーションズ運営時のCNET、(株)ガリレオの「Infostand」などで執筆。四半世紀以上前に数年間住んだインドが“IT先進国”になったことを、どうしても信じられない。

人気作家でコラムニストのマルコム・グラッドウェル氏が反論

 デジタルコンテンツ・ビジネスが苦戦する中に、登場したクリス・アンダーソン氏の『Free』は、書評などに取り上げられ、大きな反響を呼んだ。ただ、その主張がそのまま皆に受け入れられたわけではない。まず、人気作家で、ニューヨーカー誌のコラムニストであるマルコム・グラッドウェル氏が反論ののろしを上げた。

 グラッドウェル氏は「無料化の圧力」に疑問を投げかけた。『Free』を取り上げた6月6日付のニューヨーカーの書評「Priced to Sell」で次のように述べている。「アンダーソンは、デジタル経済では、容赦ない価格の低下圧力が“鉄の法則”になるかのごとく言うが、なんで、それが法則なんだろう。無料は価格のひとつの形にすぎない。価格は、市場の力の総体に合わせ、個々の参加者が決めるものだ。『生き物が増えていくように、水が下へ落ちるように、情報は無料になりたがる』と彼は言うが、情報が何かをしたがるなんてことがありうるものだろうか」

 グラッドウェル氏は2000年発刊のベストセラー『The Tipping Point』(邦題:急に売れ始めるにはワケがある、ソフトバンクメディア刊)の著者として知られる。「ティッピングポイント」とは、「あるアイデアや流行、社会的行動が、敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間」の意味である。同書は、感染的に広がる小さな変化がブレイクするポイントを考察し、地味な商品が突然、大ヒット商品に化けるメカニズムを解き明かしている。ヒットの分析をしたグラッドウェル氏が、ニッチを分析したアンダーソン氏に反論したという点でも興味深い。

YouTubeの損失は5億ドル

 そのグラッドウェル氏の指摘のポイントは、デジタル時代のビジネスモデルの一つとして『Free』が挙げた動画サービス「YouTube」が、これまでのところ、Googleに利益をもたらしていない、ということだ。同氏は金融機関のクレディ・スイスの試算を引用しながら言う。

 YouTubeで2009年1年間に提供されるビデオは750億本にのぼる見込みだといわれる。1本1本のコストは“タダに近く”とも、750億倍すると膨大になる。その結果、同年のYouTubeの回線コストは3億6000万ドルに達する。

 また、利用無料であることの魅力で集まってきたビデオ(海賊コピーや他愛のないネコの投稿ビデオ)には、広告主がかかわりたくないようなものが多い。いきおい、YouTubeが広告でもうけるためには、テレビ番組や映画のような、プロが作ったプログラムを買ってこなくてはならない。そのライセンス料としてYouTubeは2009年に2億6000万ドルを支払い、5億ドル近い損失を出すとみられている――。

 グラッドウェル氏は「YouTubeは、Free技術が最終的にすべてをタダにするわけではないことを示す見事な例」と言う。さらに、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の有料ビジネスを挙げ、引き続きメディアは有料でやっていけると主張した。こうした論調は、現役のメディア関係者に多く、『Free』批判派の一つの傾向でもある。

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