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  • 2009/10/28 掲載

今、中小企業に求められるIT活用の政策支援とは:中堅・中小企業市場の解体新書(6)(2/2)

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中小企業が望むのはIT活用の指南役派遣と社内人材育成

 では中小企業側はどういった施策を望んでいるのであろうか?以下のグラフは年商5億円以上~500億円未満の中堅・中小企業に対して「政策面におけるIT活用支援策として望ましいもの」を尋ねた結果である。


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 グラフを見ればわかるとおり、いずれの年商帯でも「IT関連の新規支出における特別償却や法人税控除といった優遇措置」が高い値を示している。制度適用の条件となる取得価額が70万円まで引き下げられ、2010年3月末まで延長された「産業競争力のための情報基盤強化税制」などの税制面の施策は中堅・中小企業の支持を得られているといえる。

 それに加え、年商50億円未満では「IT活用を目的とした中堅・中小企業を対象とした一律の給付金支給」を望む声が高い。低い年商帯の企業に対しては税制面だけでなく、IT活用の原資を確保するための支援策も必要となってくる。

 こうした財政面の支援策に次いで多いのが、「ITに精通した人材を社内育成するための無償教育プログラムの提供」や「ITの効果的な活用方法をアドバイスするコンサルタントの無償派遣」といった人材面での支援策である。一方で、「ユーザー企業と販社/SIerとのマッチング機会を提供する無償サービス」や「オープンソースなど無償で利用できるプロダクトの官主導による育成」についてはニーズが比較的低い。

 つまり、中小企業はより安い「モノ」やそれを提供する「売り手」よりも、「どうすればITをうまく活用できるか?」を理解して身につけることを望んでいるのである。そのためには単に情報を一方的に提供するのではなく、実際に「ヒト」が出向いて教育や啓蒙を実施することが大切だ。年商5億円未満において「商工会議所や商工会などの身近な機関におけるIT相談窓口の拡充」が望まれていることからも、顔を突き合わせての支援が重要であることがわかる。

 とはいえ、年商5億円未満の中小企業数は400万社超に達しており、その分布も日本全国に散らばっている。単価が高くないことも考えると、大きな市場であることはわかりつつも、手が出しづらい。その結果、中小企業にとっては「ITのことを身近に相談できる相手がいない」という状況になってしまいがちなのである。

身近な窓口を設けるためにはドラスティックな発想も必要

 実は民主党の年金問題への取り組みから、こうした状況を打開するためのヒントを垣間見ることができる。民主党は年金問題を根本から解決する改革案として社会保険庁と国税庁を統合した歳入庁の発足を提示している。

 しかし、管轄省庁が変わり、共通番号の仕組みを導入したとしても、保険料の徴収や管理といった窓口業務が必要であることには変わりない。自営業も含めて所得の正確な捕捉を目指すのであれば、約300個所に留まる現在の社会保険事務所では十分な窓口数とはいえない。

 そこで検討されているのが、郵便局に年金管理窓口の機能を持たせるという構想である。郵便局は国内に約24,000個所存在しており、公的機関としての国民からの信頼度も高い。年金管理の窓口としては非常に適しているといえるだろう。

 このように既存のインフラをうまく活用し、新たな巨額の投資を行わずに必要な窓口を全国に展開するという発想は参考にすべき点が多い。ITに関しても、商工会議書や商工会などの窓口をはじめ、ITコーディネータ/社労士/税理士といった企業のIT活用を支援している人材が多く存在する。これらをうまく統合し、支援を提供する側とされる側双方にメリットのある仕組みを構築すれば、中小企業のIT活用も大きく底上げされるはずである。政権発足後から各方面で次々と改革案を提示している民主党だが、中小企業のIT活用支援においても過去の慣習にとらわれない大胆な施策の提示を期待したい。

日頃の情報収集を通じて、参画意識を高めることが大切

 一方の中小企業側も理想的な政策の実現をただ待つだけでなく、日頃からしかるべき情報収集を行い、必要に応じて意見をフィードバックする姿勢が大切だ。そうした習慣をつけることはIT活用における税制優遇といった諸制度を見過ごさずにきちんと活用することにも役立つ。代表的な情報源としては以下の2つが挙げられる。

経済産業省 IT経営ポータル
中小企業庁 経営サポート「技術革新・IT化支援・省エネ対策」

 上記のWebサイトにはさまざまなIT支援策やITを経営に生かした実践例などの情報が掲載されている。こうした情報源に親しむことで、「国としてのIT活性化への動きに自身も参画する」という意識を持つことが、ITを効果的に活用していく上での第一歩ともいえるだろう。

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