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  • 2010/01/20

【連載】ザ・コンサルティングノウハウ(13):プロセス・クリエーション

社内コンサルタントの育成を目指す企業が増えている。その狙いは、経営に資するIT戦略の策定や、コンサルティング営業による勝率・利益率の向上、グローバルグループ会社に対する本社支援力の強化などさまざまである。しかし多くの企業では、コンサルタントの育成はうまく進んでいない。この理由は、コンサルタントが、分析技法や方法論などの技術修得によって育成されるという誤解にある。コンサルタント育成に重要なのは、技術ではなくノウハウである。この連載では、コンサルティング会社の実態をもとにしたストーリー形式で、コンサルティングノウハウの存在とパワーを示す。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

プロセス・クリエーション

【マネジメント】

アクト・コンサルティング
取締役
経営コンサルタント
野間彰氏


 山口は、B社向けのコンサルティング提案書の作成を開始した。山口は、「今度はA社のように、何をしていいかわからないという状況は避けなければならない。そのためには、岩崎が教えてくれたプロセス・クリエーション、つまりビジョンを仮説し、課題を明確化し、解決策を作り上げることで、コンサルティングの進め方を作り上げるコンサルティングノウハウが、強い味方になってくれる」と考えた。山口は、以下のように検討した。

●提案書には、コンサルティングの進め方が記載されていなければならない。これが、遂行体制やスケジュール、必要な人員、費用の前提となる。プロセス・クリエーションに従えば、進め方とは、クライアントが目指すビジョンつまりコンサルティングの成果と、クライアントの現在とのギャップを埋める方法である。したがって、提案書策定には、第一にコンサルティング終了時の成果を仮説し、この仮説と現状のギャップつまり課題を明確化し、課題解決の方法をコンサルティングの進め方としてまとめるステップが必要だ。

●コンサルティングの成果を仮説するには、今回のコンサルティングで解決すべき「命題」の仮説から始めなければならない。命題は、「経営環境」と「トップの意思」によって決まる。まずB社の重要な経営環境は、親会社である大手企業のシステム開発・運用を一手に引き受けるという強みがありながら、この強みを活かせず、成長率、利益率共に業界平均を下回っていること。B社では、社長も社員も、今の状況に満足していないこと。親会社は、B社に高い成長や利益率は望まず、ただシステム開発・運用をつつがなく行ってほしいと思っていることであると考えられる。

●一方B社社長の意思は、部長の難波が社長の覚悟を確認したことに対し、社長がコンサルティング依頼という返事をしたことから、以下のように考えられる。

「B社は、親会社のシステム開発・運用を問題なく行うのみならず、グループ以外の顧客から仕事を取り、企業として自立したい。そして、自社の企業価値を高め、システム開発・運用のみならず、親会社の企業価値増大に貢献したい。この意思は、すぐには親会社に受け入れられない脅威がある。親会社経営者の中には、下手にグループ外に外販を広げることで、親会社向けサービスが滞ることを心配する者が現れるに違いない。そこでB社社長は、そのような親会社の反対意見にきちんと対応し、自社の新しいビジョンを親会社に納得させる覚悟がある。また、B社を大手コンピュータメーカーへ売却するオプションもある中、あくまでも自分自身が経営トップとしてこの革新を率いていく自信がある」

●上記経営環境とトップの意思から、命題は、現在のB社の強みを最大活用し、自立した企業として、グループの中で意味のある企業価値を達成することである。そのためには、業界平均以上の成長率、利益率、資本効率を達成し、株式の公開を行い、親会社にグループの企業価値増大、株式公開によるキャピタルゲインや配当・ロイヤリティをもたらすことである。また、親会社とB社のシナジーを高め、親会社がB社をグループ会社に持っていることで、親会社の企業価値も向上することである。

●命題の答えは、以下に例示する、「確実に収益が向上するビジネス・モデル」の完成であると仮説できる。

「親会社の先進的なシステムの実績と外販市場の調査から、B社として親会社実績を横展開すべき重点領域を明確化する。本重点領域のシステム開発ノウハウを、親会社人材のB社へのシフトあるいは、B社有能者の親会社システム開発への重点投入と実績修得後の機動的外販事業へのシフトによって獲得する。そして本ノウハウを、親会社以外の顧客に適用し、勝率、利益率を向上させる」

 なお、ここでビジネス・モデルとは、確実に収益を上げられる戦略の基本コンセプトである。山口が行った事例調査から、ビジネス・モデルは、顧客、提供価値、価値提供方法、差異化方法、継続的な成長の方法、利益率向上の方法を、シンプルに規定することで明確化できる。

●上記ビジネス・モデルの完成をビジョンと置くと、ビジョンと現状のギャップである「課題」が見えてくる。第1の課題は、ビジネス・モデルを明確化することである。前述のビジネス・モデル仮説は、現在までに獲得した情報に基づくものである。今後、競争相手や顧客などの調査によって視点を獲得し、ビジネス・モデル仮説のオプションを創造し、これを検証することで、B社企業価値を最大化するビジネス・モデルとはどのようなものかを明らかにしなければならない。

 第2の課題は、社長および社員が、ビジネス・モデル完成への執着心を持つことである。このビジネス・モデル達成には、マーケティング機能の確立、人材の機動的シフトや努力に報いる評価体制の確立、積極的な外販セールス、重点領域に対応した技術開発など、多くの努力が求められる。そこで、必ず達成するという執着心なしには、このような革新は成功できない。何と言っても、人間は現状維持が心地よいのだ。

 第3の課題は、B社のビジネス・モデル確立による企業価値増大が親会社にとって最良の選択であることを、親会社経営者に納得させることである。B社のビジネス・モデル確立のためには、親会社の理解と支援が欠かせない。しかし親会社から見れば、子会社B社には、自社のシステムの開発と運用を問題なく行ってもらう以外の期待はないのかもしれない。あるいは、システム関連投資を削減するために、B社の生産性をドラスティックに向上させようと考えているが、現行経営者にそれは無理だと判断し、コンピュータメーカーなどと共同出資に変えるか売却を考えているかもしれない。そこで、考え得る戦略オプションを出し尽くし、これらを評価し、現行の経営者によるビジネス・モデル確立が最善策であることを、親会社経営者に納得させることが必要である。この課題を解く過程で、B社売却が最善と評価される可能性もある。この課題解決は、B社社長にとっては自らの存在意義を確認する重要なものになる。

●これら課題の解決策として、以下が想定される。まずB社企業価値を最大化するビジネス・モデルの明確化と執着心醸成は、先進企業の事例調査、B社顧客の満足度調査、B社社員意識調査によって達成する。先進企業調査では、大企業のシステム子会社でありながら、高い企業価値を誇り、グループ企業の中で存在感のある企業を対象に調査を行い、現在のポジション達成までの経緯、行ってきた努力、その結果確立したビジネス・モデルを明確化する。これによって、妥当なビジネス・モデルを明確化すると共に、『我々にもできるはずだ』というメッセージを明確化できるだろう。顧客満足度調査では、B社が他のインテグレータに比べて弱い点を明らかにし、ビジネス・モデルの充実と、『競争力の強化が必要だ』というメッセージを明確化する。B社社員意識調査では、現状の親会社依存に満足せず、革新したいという社員の意識を抽出し、『社員も革新を望んでいる』というメッセージを明確化することができるはずだ。

●B社がビジネス・モデルを確立し、企業価値を高めることが、親会社にとっても最善の選択であることを立証するという課題は、先進企業の調査、コンピュータメーカーなどへの子会社売却の先行事例調査、親会社システムの実績調査によって解決できると想定される。先進企業調査では、高い企業価値を達成した情報システム子会社が、親会社やグループに対してどのような貢献を果たしているか、そのために親会社は、どのような支援を行っているかを明らかにでき、『B社は、単なる親会社システムの開発・運用ではなく、最大ポテンシャルを追求すべきだ』というメッセージを明確化できるはずだ。コンピュータメーカーなどへの子会社売却の先行事例調査では、売却によるメリット、デメリットが明確化できる。本調査の結果は、現在の社長中心の革新が本当に妥当かどうかを考える重要情報になるだろう。メッセージは、『安易な子会社売却は、後で問題を引き起こす』となるかもしれないが、『社長、貴方は退いて、システム事業の専門家に任せなさい』となるかもしれない。親会社システムの実績調査では、B社が参画し開発したシステムが、同様なシステムの中でどれだけの先進性や効果を備えたものかを、類似するシステム開発事例との比較によって調査し、『親会社人材の活用を含めた実績横展開を行った場合、B社の競争力や価格交渉力は大きく、高い収益が期待できる』というメッセージを明確化できると考えられる。

●これらの検討結果を、コンサルティングの進め方としてまとめると、以下のようになる。

1)B社キーマンインタビュー

 前述の仮説は、B社公開情報、システム・インテグレータの事前調査およびB社社長インタビューから構築されている。そこでまず、B社内部の現状を深く捉え、仮説を充実させることが必要である。具体的には、B社社長、役員、主だった部門長やプロジェクトリーダー、親会社の経営者、ユーザ部門等のキーマンのインタビューで「バリュー・リスニング」を駆使し、仮説構築のための視点を獲得し、前述の仮説を充実させる。

2)仮説の構築と検証方法の確定

 上記1)で得た視点を基に、仮説オプションを出し尽くし、この時点で把握できる情報を基にオプションを絞り込み、仮説を確定する。ここでの仮説は、命題、ビジネス・モデル、目標、重点領域、重点課題、推進組織、リソース配分、業務革新方法を網羅したものである。 仮説を言い切ることで、不明不安なポイントが見えてくる。仮説を、B社社長や経営幹部にレビューしてもらい、特に意思決定上の不明点を特定し、これを明確化するための調査方法を確定する。ここで「検証」とは、B社社長が仮説を信じ、実行を決定することである。調査結果を意味解釈して得られるメッセージは、前述のとおり「我々にもできるはずだ」「競争力の強化が必要だ」といったものであると想定される。

3)調査

 調査先は、前述のとおり先進企業、顧客、社員意識などである。「メッセージ・ファースト()」で、落とし所のメッセージを仮説し、調査項目を明確化する。

4)仮説の絞り込みと目標の確定

 調査結果に基づき、仮説の絞り込みと確定を行う。また、ビジネス・モデル確立によって得られる期待利益を明確化し、目標を確定する。目標確定においては、「目標確定は意思行為()」ということを念頭に置き、社長の挑戦的な目標決定を支援する。

5)戦略確定

 上記目標達成のために、戦略を確定する。特に、組織、リソース配分、業務革新といった、具体的な実行方法を明確化する。

6)実行計画の確定

 上記戦略実行の実行計画を確定する。

(※):これまでに本連載で示したコンサルティングノウハウ。


「なるほど、できた」

山口は、思わずつぶやいた。山口は、プロセス・クリエーションの絶大なパワーを認識できた。プロセス・クリエーションは、単にビジョンを仮説し、ビジョンと現状のギャップである課題を明確化し、課題解決方法を決めるというシンプルなものだ。しかし、実直にこれを進める中で、なぜコンサルティングが必要か、コンサルティングによって何が達成されるか。コンサルティングをどのように進めるかが、自信を持って確定できたのだ。 山口は、部長の難波に提案書を持っていった。難波は例によって資料には目もくれず、ソリューション・マネジメントで提案書の内容を確認した。

「上出来だ」

最後に難波は、一言そう言った。


※クリックで拡大
図:プロセス・クリエーション



 週末になった。山口は、ブレークスルー塾で、今週得たコンサルティングノウハウを子供達に教えることにした。山口は、ホワイトボードに次のように書いた。

『ソリューション・マネジメント』

「何かを達成しようとする時、人はやり方を考えると、それで安心する癖がある。あるいは、人は目先のことから考えようとする癖がある。達成することが何か、どこまですばらしいことが達成できるか、追及することをしないんだね。折角のいい頭を、それ以上使わなくなるんだ。もったいないよね。

たとえば君たちが、来週近くの公園に行って、皆でカレーを作って食べようとする。この時、野菜や肉を買う人、なべや包丁を用意する人、火を起こす道具を用意する人…と係を決めれば、後は当日作ればいいと安心するんじゃないかな。でも、おいしいカレーを食べたければ、そもそもどんなカレーを作るか考えるべきだろう。すると、もってくる材料も違うよね。あるいは、どんな雰囲気で食べるか、どんな話をするかまで考えると、テーブルを用意してちゃんとした食器で食べるか、歩きながら食べれるようにするか、いろいろ考えられるだろう。ソリューション・マネジメントのソリューションとは『答え』のことだ。最後にどんな答えを出すかを考えてから、今からどうするか決めるのが、ソリューション・マネジメントの1つめのポイントだ。やりかたを考える前に、答えを考えるんだ。わかるかい」


「なんとなく」

和夫が言った。

「ソリューション・マネジメントのマネジメントの方は、どういう意味ですか」

道子が聞いた。

「マネジメントは、管理などと訳されるが、ここでは『方法を考えて安心する人に、まず答えから考えさせるように頑張ってもらうようにすること』としておこう。誰かが、『答えは何』と聞き続けないと、人間考えることは好きじゃないから、怠けてしまうんだ。これが2つ目のポイントだ」

「僕は、考えることはきらいじゃないよ」

啓太は、不服そうに言った。

「そうかい。よし。じゃあ実際にやってみよう」

山口は、ソリューション・マネジメントの演習問題を出した。

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君たちは、売れっ子漫画家です。
新しい連載漫画を描くことになりました。
まず、プロット(あらすじ)を準備します。
皆が、びっくりするような、おもしろい、感動するお話を考えてください。
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