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- 2010/05/13 掲載
【やる気を考える】緊張と希望、不安と夢は、意味深いペア / 神戸大学大学院 金井壽宏教授
神戸大学大学院経営学研究科教授
京都大学教育学部卒業。神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了後、
MIT(マサチューセッツ工科大学)でPh.D.(マネジメント)、神戸大学で博士号(経営学)を取得。研究テーマは、変革型のリーダーシップ、創造性となじむマネジメントなど多岐にわたる。著書には、『会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング』(編著、日本経済新聞社)など多数。
自己調整のサイクルにおける緊張と希望のペア
モチベーションへの働きかけには、緊張に訴える場合と希望に働きかける場合とがある。この緊張と希望のペアには、私が連載当初に思ったよりもはるかに深い意味があることがわかってきた。それは、不安と夢(計画)のペアともおおいに関係がある。さらに、時間軸における人間存在の深いところにもこのペアがかかわっている。そのことをここで記したいと思う。具体的にイメージしよう─まず、モチベーションにおける緊張と希望
さて、読者の皆さんにはまず、ぜひ考えていただきたいシーンがある。一方で心配で仕方がなくて(緊張感がいっぱいで)、他方でそれでも希望をもちたいという場面だ。
例えば、夏休みの宿題。8 月下旬にもなってできていなかったら、えらいことだと思って着手する(心配や緊張が人を動かす)が、好きな数学を解いたり、絵を描いたりしているうちに、ギリギリだけど火事場の馬鹿力で無事仕上げられそうだ、と希望をもつ。初めてデートするとき、入社後初めて大事な会議でプレゼンテーションするとき、がんばるときにはいつも緊張と希望がペアであるのではないか。うまくいかなかったらという不安と、うまくいったらうれしいという希望は裏表だ。
これらはすべて比較的短期なモチベーションの世界の例だが、もう少し長い時間軸でとらえると、キャリアの大きな節目とかかわるシーンを思い浮かべる人もいるのではないだろうか。学生から社会人への節目にさしかかったとき、入社後10 数年経って管理職になり大勢の部下をもつようになるとき、40 代半ばに近づき中年への過渡期をくぐっていると感じたとき、40 年近く勤め上げてとうとう退職するとき。より長い人生を見据えたとき、これらキャリアの節目はそのときのモチベーションに影響を与えるが、その節目をうまく超えられるかという不安と、同時にそこを超えるとどういう世界に入れるのかという時間展望をもとに描き出される夢はペア概念だ。モチベーション論における緊張と希望、生涯発達の節目における不安と夢は、念頭に置く時間幅に長短はあるが、パラレルに併置されるべきものだ。
がんばらなきゃいけないと思うのは一抹の心配があるからで、がんばりたいなと思うのは、同時にどこかに希望があるからだ。これはモチベーションの機微だ。リーダーが、フォロワーに働きかけるときには、「このままだとダメだ」と発破をかけることとあわせて、「こういうことが実現するとうれしいと思わないか」と希望にも訴えることが必要だ。
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