世界人口の72%にあたる40億人は、年間所得3000ドル(約25万円)以下の最低所得階層、いわゆる「BoP(Base of the Economic Pyramid)」に位置する。BoPは1人1人の所得水準は低いものの、所得総額をみれば、5兆ドル(約420兆円)に達する。この“最後の巨大市場”とどう向き合っていくべきか。野村総合研究所公共経営戦略コンサルティング部 PPP・チェンジマネジメントコンサルティング室長の川越慶太氏と同部副主任コンサルタントの平本督太郎氏にお話しを伺った。
生活必需品以外の支出に67兆円、BoP市場のパワー
1人当たり年間所得3,000ドル以下で生活する人は、新興国でも人口の大半を占めている。この階層は従来、数が多くても貧しいため、ビジネスの対象にはならないと考えられていた。
しかし、BoP層でも食料・燃料・住居・薬剤といった生きていくうえでの生活必需品以外の支出、つまり、娯楽、通信などの“裁量支出”を行っており、その総額は年間8,000億ドル(約67兆円)にものぼる。
野村総合研究所の川越氏と平本氏は、その実例としてケニアとインドを挙げる。たとえばケニア政府と英ボーダフォンの合弁会社である「サファリコム」は、ケニアで携帯電話市場の7割のシェアを占め、年率20%近い売上高成長率を実現している。また、インド最大の都市ムンバイに拠点を構える「ヒンドゥスタン・ユニリーバ」は、インド農村部の女性自立を支援しながら、ユニリーバの生活用品を販売している。
ほかにも、P&Gやセメックス、マーズ、住友化学など多くの企業が既に成功を収めており、BoP市場には大きな可能性があることを示している。さらに世界中でBoP層から中間層への移行が進んでおり、今後は世帯収入の拡大に伴って、消費支出も増大することが予測されている。
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