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  • 2010/12/03

インターネットで加速するリーク社会──匿名リークを収集/公開するウィキリークス

ウィキリークス論考:塚越健司氏

インターネットを通じてのさまざまな情報流出が話題になる中、匿名性を保持したリーク専門サイト「ウィキリークス(Wikileaks)」への関心が高まっている。直近でもアメリカの外交関係の文書がウィキリークスで公開され、その件について現在も世界で議論が巻き起こっている。早くからリークの問題に注目していた塚越健司氏に、ウィキリークスを中心としてリークと社会の関わりについて論じていただいた。

ウィキリークスのもたらしたインパクト

 2010年10月末、警視庁公安部が作成した国際テロ捜査に関する内部情報が、Winnyを経由して流出していたことが発覚した。次いで同年11月4日、尖閣諸島における中国漁船衝突ビデオが、インターネット動画サイト「YouTube」にアップされた。テロ捜査情報に関しては、誤って情報が流出した可能性もないとは断言できない。しかし尖閣ビデオ問題は、現役の海上保安庁の職員が、自らの意志をもって情報を流したことがすでに判明している。Winnyなどのインターネットを介した情報流出問題は以前から存在したが、尖閣ビデオ問題は、個人の意志による内部告発、すなわち「リーク」の問題を世間に知らしめたと言えるだろう。リークは今や社会問題化しているとも言える。本稿では、世界中で大きな注目を浴びているリーク専門サイト「ウィキリークス(Wikileaks)」を中心に、この問題について考えたい。

 ウィキリークスは2006年、オーストラリア出身のジャーナリストで元ハッカーのジュリアン・アサンジ氏が中心となって設立された、匿名の投稿者による内部告発を収集/公開しているWebサイトである。機密情報の募集は2007年から実施。その後、募集から1年あまりで120万件以上のリーク情報が寄せられている。その中から精査され、選ばれたリーク情報のみがウィキリークスに掲載されるが、著者が調べた限り、2010年7月の時点でその数はすでに1万7,000件を超えている。

 ウィキリークスはアサンジ氏をはじめとするごく少数のメンバーによって運営されている。運営メンバー以外にも800~1,200人といわれる登録されたボランティアが、暗号化の作業や提供情報の検証などを行う。資金に関しては、政府や特定企業の援助などは一切受けず、ジャーナリストや一般人からの寄付で賄っている。

 ウィキリークスが世界に配信する情報は過激である。日本においてウィキリークスを一躍有名にしたリークは主に3つある。

(1) 2010年4月にウィキリークスは、2007年7月のイラクにおいて、アメリカ軍が軍用ヘリコプター「アパッチ」から市街地爆撃を実施した映像を公開した。映像は、明らかに民間人とわかる人々や、ロイター通信の記者を意図的に誤射していると解釈できるものであった。この動画はYou Tubeにて700万回以上再生されている。
(2) 2010年7月25日、アフガニスタン紛争における米軍に関する7万7,000点近くの資料が公開された。
(3) 次いで2010年10月22日には、イラク戦争の米軍に関する40万件に及ぶ資料がこれまた公開された。どちらの資料も、戦争による民間人死者数が、米政府が発表した数を大きく上回る事実を証明するなど、大きな波紋を呼んだ。

 他にも、スイスのジュリアス・ベアー銀行の汚職に関する文章や、宗教団体サイエントロジーやモルモン教の内部資料の公開など、多様な事例がある。そして、これらの事件が欧米で大きな話題となり、日本のニュースでも徐々にウィキリークスが取り上げられるようになってきた。実際、2010年11月4日放送の、NHK『クローズアップ現代』ではウィキリークスが特集されている。番組ではNHKによるアサンジ氏へのインタビューや、ウィキリークスがメディアに及ぼす影響力について議論がなされた。また、本稿執筆中の11月29日現在、ウィキリークスはアメリカの外交に関する文書の公開を開始した。機密文書を含む25万点のうち、現段階の公開は一部だが、随時文書は追加されるという。文書は日本を含む世界各国に関わるものであり、今後さらに議論を呼ぶだろう。

 ウィキリークスの新しさは、情報のリークが気軽かつ手軽にできることにある。文章や映像データを、ウィキリークスのサイトにあるリーク投稿欄に送信する、それだけでいいのだ。さらに、リーク情報提供者のプライバシーは守られる。ウィキリークスは、提供者の情報に関してログを取らない、強固なセキュリティを持ったスウェーデン企業PRQ(PeRiQuito AB)のホスティングサービスを使用。また軍レベルとも言われる暗号化技術が情報の漏えいを防いでいる。従って、提供情報は提供者の匿名性を保ったまま、ウィキリークスのスタッフによって内容が審査され、おそらくそれなりの時間はかかるだろうが適正と判断されれば公表される。

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