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  • 2011/10/06 掲載

【インド攻略】中国市場とまったく異なるインド、攻略のカギは新興都市と地方都市

1年で売上を数百倍に伸ばしたECサイトも

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実質GDP成長率は年率7%、今や世界第4位の経済大国となったインドを重視する経営者は少なくない。だが、「インド市場に参入したものの、なかなかうまくいかない」という悩みを抱える日本企業が増えているようだ。野村総合研究所 岩垂好彦氏はこうした企業が「成長の壁に直面している可能性がある」と指摘する。BRICsの一角を担うインドだが、日本企業になじみの深い中国や東南アジア市場とは文化も商習慣も異なるため、同じような戦略では成功は望めないという。インド消費者の実態を通じて、日本企業がインドで成功するためのヒントを探る。

中国市場とはまったく異なるインド

 EPAの発効など、日本でも12億人を抱えるインド市場に参入する企業が増えてきた。しかし、現地では「代理店を通じて販売のてこ入れをしているが、それに見合った売上を実現できていない(産業機械メーカー)」「代理店に当社製品だけを扱う営業部隊を置いて販路開拓にあたっているのだが、売上が思うように伸びていない(日用品・食品メーカー)」といった悲鳴があがっている。

 野村総合研究所 岩垂好彦氏によれば、売上が伸び悩む企業は次の3つのタイプに分けられるという。1つはインド7大都市を中心として、面的な広がりがなく、落下傘的に事業展開を実施している企業。これらの大都市では、競合企業が数十年前から事業展開を行っており、「今や消耗戦の様相」を呈しているという。

 次が代理店を通じて販路開拓を行っている企業。代理店を通じた販路開拓では、州を超えた販売力に限界があるという。

 最後が日本企業に多いプレミアムセグメントに後発参入している企業だ。現地では名前も聞いたこともないのに値段ばかりが高いと思われるブランドが出ているという。

 これらの企業に共通するのが「先入観」だ。「インドはアジアの一部と考え、中国や東南アジアと同じように考える経営者が少なくないが、これらの市場とは大きく異なる」(岩垂氏)。

 中国やアジアでは、経済や富が大都市に集中する一方、インドでは大都市の富裕層市場は「底が浅い」という。また、中国は地方・農村は所得も低いのに対して、インドでは国の富の6割は地方・農村に点在している。

 さらに中国、東南アジアでは日本のブランドがプレミアム・ブレンドとして受け入れられている土壌があるが、インドでは現地および欧米企業が既に展開しており、品質・ブランド・価格とのバランスとの厳しい競争がある。

 インドの富裕層は、世帯年収が50万ルピー~100万ルピー以上(日本円で60~150万円以上)の層で3.4%に過ぎない。余談だが、2005年頃は1ルピー2.5円~3円程度だったものが、今や1ルピーは1.5~1.6円、ここでも円高が進んでいる。

photo
インドの所得別世帯分布
(出典:野村総合研究所,2011)

 富裕層が3.4%に過ぎないといっても、インドの人口は12億人。上位3%で3500万人にのぼるわけだが、7大都市だけでこの3%はカバーしきれず、全国に散らばっているのが特徴だ。そのため、インドでは主要7大都市だけの展開では成果は望むべくもなく、20州への全面展開が基本戦略になる。

 ここでも先行するのは韓国企業だ。LG電子インドは東西南北2か所の全8か所にリージョナルオフィスを構え、全国に47か所に主要支店を、140か所に窓口を用意している。「いかに全国に販売網を築くかによって、勝負の半分くらいが決まる」(LG電子インド担当者)状況だからだ。

 また、都市部の富裕層は、意外と伝統的な生活を重んじている。デリーは特に傾向が強いが、スーパーに買い物に行かず、バニヤと呼ばれるよろず屋が日に1、2回、食品などを配達してもらう。このバニヤは家族構成やその時々の状況に応じた非常にきめ細かいサービスを手がけており、こうしたサービスに慣れた家庭には「画一的なサービスを持っていってもなかなか受け入れられないのではないか」という。

 さらに、インドでは東西南北それぞれの地域でまったく異なる様相を呈する。米国のように州の権限が強く、言語も異なる。公用語のヒンディー語は南部では通用しない。バニヤの世界は地縁、カースト縁の世界のため、1つの大手代理店が深くリーチできる範囲は限られている状況だ。「100km離れたら違う国」、こうしたインド特有の文化や都市部の激戦状況を知らずにインド進出を果たすと、思った以上に売上が伸びないのは道理と言えよう。

画像
東西南北ごとの地域特性
(出典:野村総合研究所,2011)

【次ページ】インド市場攻略の2つのポイント

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