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  • 2011/12/12 掲載

ウォルト・ディズニーも活用するビッグデータ、その4つの適用パターン--野村総合研究所 城田真琴氏

3つのV”で示されるビッグデータの特性

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現在のIT分野で新たなキーワードとなっている「ビッグデータ」。野村総合研究所 城田真琴氏は“既存の技術では管理できないほどにボリュームが増え、複雑化したデータ”と定義し、企業システムから収集したトランザクションデータだけでなく、Webサイトなどから取得した非構造化データも含まれるとする。企業がこうしたビッグデータに目を向けるのは、その中に新たなビジネスチャンスが眠っている可能性があるからだ。ビッグデータを活用するために、企業は何から始めればいいのだろうか。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

“3つのV”で示されるビッグデータの特性

photo
野村総合研究所
情報技術本部
イノベーション開発部
上級研究員
城田真琴氏
 ビッグデータというテーマに早くから目を付け、“既存の技術では管理できないほどにボリュームが増え、複雑化したデータ”と定義するのは、野村総合研究所(以下、NRI) 情報技術本部 イノベーション開発部 上級研究員の城田真琴氏だ。同氏はビッグデータを「たとえばDBMSにクエリを投げて、その応答時間が許容範囲を超えるなどの特徴を持つもの」だと説明する。

 城田氏はこうしたビッグデータの特性を“3つのV”で表わされるとする。

 1つめがデータ量を表わす“Volume”、2つめがデータの種類を指す“Variety”、そして3つめがデータの発生速度あるいは発生頻度を示す“Velocity”だ。

 まずどれぐらいのデータ量をビッグデータと呼ぶのかという点については、「絶対値で表わすことは難しいが、現段階では、数十TB(テラバイト)から数PB(ペタバイト)程度を指すことが多い」(城田氏)という。

 データの種類については、従来から扱ってきた数値データのような構造化データに加えて、最近ではRDBMSに格納できない非構造化データが非常に増えてきており、またデータの速度については、センサーやWebのクリックストリームデータなど、時々刻々と発生するデータが増加してきているという。

「これら3つの特徴が揃えば典型的なビッグデータだといえるが、どれか1つでもビッグデータに相当すると我々は考えている」(城田氏)

トランザクションデータの分析からインタラクションデータの分析へ

 それではなぜ、今ビッグデータに大きな注目が集まっているのか。

 城田氏は「トランザクションデータだけでなく、インタラクションデータを分析することで、今まで見えていなかったものが見えてくる可能性があるからだ」と指摘し、「この点に着目した企業が今、非常に業績を伸ばしている」と強調する。

 インタラクションを直訳すれば“相互作用”という意味になるが、城田氏のいうインタラクションデータとは、顧客や消費者の自発的な行動によって企業側にもたらされるデータに加えて、企業がITなどを利用した仕組みによって自動収集するさまざまな切り口のデータも含んだもの、と考えれば分かりやすいだろう。

 その1つが、Webのクリックストリームデータだ。

 たとえばAmazonでは、単に“どの本が売れたか”というトランザクションデータだけでなく、“ユーザが過去にどういう本を買ったのか”、あるいは“今回どういう本をチェックして最終的な購買に至ったのか”というインタラクションデータを全て蓄積、保存、分析することで、なぜその本が売れたのかを分かるようにした。

「リアル店舗でも無線のICタグなどを使って、来店者の店舗内での動線を分析するような動きは確かにある。しかし現状の技術ではかなり難しいしコストもかかる。それに比べてWebサイト上での動線分析はずっと容易だ。ネット企業が強いのは、そうしたWebのクリックストリームデータを非常に収集しやすいからだ」(城田氏)

 もう1つ、インタラクションデータの発生源という点で注目すべきなのはソーシャルメディアだ。

 たとえば会員制サービスを提供している企業が、自社サービスの解約理由を知りたいと思った場合、従来は会議室の一角にユーザーを集めてグループインタビューの形で質問を投げかけ、会員の行動背景を想像する、というようなことを行うしかなかった。それが最近では、Twitter上のつぶやきを分析すれば、消費者の生の声を拾うことができる。

「さらにいえば、会議室で話を聞くよりも、フィルタのかかっていない“本音”を集めることが可能だ」(城田氏)

 このように企業活動に多大なメリットもたらすビッグデータの活用だが、「日本企業はまだまだ初歩的。米国企業からは2~3歩、遅れを取っている感じ」(城田氏)だという。

 それを示すものが今年8~9月にNRIが行ったアンケート調査で、この中でBIツールを入れてどれだけ効果が出たかを聞いたところ、米国企業では“期待以上”“ほぼ期待どおり”と回答した企業が全体の74%であったのに対し、日本企業は“どちらともいえない”“やや期待外れ”“期待外れ”と回答した企業が約70%だったという。

 この結果から見えてくるのは、BIツールを導入する時点で、日本企業は目的を明確化できていないのではないか、ということだ。

「少し襟を正していかなければ、BIを採用しても効果がなかった、だからデータ分析もやらない、という負の連鎖に陥ってしまう恐れがある」(城田氏)

 またどういうデータを分析対象にしているかについては、日本企業が販売データや財務データといった構造化データにほぼ終始しているのに対し、米国企業や中国企業は、あらゆる非構造化データの分析にも着手しているという。

「今後、こうしたデータ活用の遅れが、グローバルな競争において日本企業の致命傷になるのではないかということを非常に危惧している」(城田氏)

【次ページ】ウォルト・ディズニーのビッグデータ活用

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