- 会員限定
- 2012/02/07 掲載
シェルを石油メジャーに躍進させた「シナリオ・プランニング」とBCP
【連載】変わるBCP、危機管理の最新動向
A氏:EAP(従業員支援プログラム)の世界で経験豊富なコンサルタント
森田:筆者
マルチハザードの議論が乏しいBCP
A氏:ところで森田さん。このところ、災害、経済・市場環境のリスクとその影響範囲は多様化していますね。リスクマネジメントの世界ではこれをどのように考えていますか?筆者:確かにどの領域も「マルチハザード化(国や社会をとりまく危機的要因が複合化・多様化している状況のこと)」の様相を見せてきていますね。多元的な危機状態に対しては、とおりいっぺんの対策では不十分だと思います。
A氏:コンプライアンス、CSR、ITガバナンスの世界でも盛んに議論されてきたことですが、なぜBCPの分野ではこうした議論が乏しいのでしょうね。
筆者:おっしゃるとおりです。本来、BCPやリスクマネジメントは、事前の準備、事後の回復だけにエネルギーを費やしたり、一元的な対策でよしとしているわけではありません。コンプライアンス、CSR、ITガバナンス、人事システムの改革などでもそうですが、「コンセンサスを得たり、フィードバックを戻していくための組織的かつ継続的な対話」が基礎とされていなければなりません。
ただ、BCPでやっかいなのは、自然災害や経済危機などどのようなリスクであっても、「社会的な脈絡」、「社会的責任」と無関係ではいられないという点にありますね。その意味で、すでにお話ししたとおり、リスクコミュニケーションが重要な意味を持つはずです。
次世代BCPで重要となる3つのキーワード
A氏:私自身、人事・人材のコンサルティングをやっていて、成果主義、コンピテンシー、業績評価のいずれをとっても、定量的なデータだけに頼った評価や分析では弊害ばかりが目について、あまりうまく機能しないことが問題となっていると感じています。BCPやリスクマネジメントでは、定量的なデータに頼った評価をどう考えていますか?筆者:ようやく突っ込んできましたね(笑)。これは私の見解ですが、BCPの世界では、災害などの危機的状況に取り組みには、過去に発生した事象を対象に、定量的なデータだけに頼った分析やとそれによる計画立案ではダメというのが、かねてからの持論なんです。
A氏:定量依存、データ依存、計画依存だらけに潜む大きな落とし穴があるということですね。
筆者:そうです。それではどうしたら良いのかといえば、これからの次世代BCPでは3つのキーワードが重要と考えています。キーワードといっても言葉だけのことではなくて、しっかりと基底となるべきコンセプトといっても差し支えありません。それは「シナリオ・プランニング」、「失敗学」そして「災害エスノグラフィー」という3つのキーワードです。
A氏:聞き慣れない言葉も含まれていますね。それぞれどういう意味でしょうか?
【次ページ】シェルを石油メジャーに躍進させた「シナリオ・プランニング」
関連コンテンツ
PR
PR
PR