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  • 2013/09/04

アベノミクスの三本の矢の一つ=財政政策による「国土強靭化」の本質を探る

【連載】変わるBCP、危機管理の最新動向

ここ数回の連載で、国家レベルでの危機管理・継続性、今後のインフラのあるべきモデルについて抜本的な見直しを図る「レジリエンス(=回復力)・マネジメント」をその題材に取り上げて解説した。そして今回から数回にわたって、安倍政権の誕生直後に打ち出されたインフラ重視政策である「国土強靭化」の構想、そして国土強靭化をより汎用的で国際的なセンスで表現した「ナショナル・レジリエンス」の動向と、その背景について探ることとしたい。

ストラテジック・リサーチ 森田 進

ストラテジック・リサーチ 森田 進

ストラテジック・リサーチ代表取締役。各種先端・先進技術、次世代産業、IT活用経営、産学官連携に関するリサーチ&コンサルティング活動に取り組む。クラウド、仮想化プラットフォーム、エンタープライズ・リスクマネジメント/BCP、モバイル・プラットフォーム、情報化投資の各分野において研究およびエヴァンジェリズム活動を展開し、実績を積む。
URL:http://www.x-sophia.com/

「国土強靭化」と「ナショナル・レジリエンス」の関係

 「レジリエンス・マネジメント」とは、インフラ活動の持続能力の確保に向けた包括的なマネジメント・フレームワークである。そのため、BCP/ICT-BCPという枠を越えて、「ナショナル・エコシステム」、「ビジネス・エコシステム」といった国家・産業界のレベルでの防災・業務継続性・インフラ維持・回復可能性へと連なるダイナミックな視点を提起するものである。

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 したがってその対象範囲は広く、公共インフラと脈絡を持つ都市防災や国家的減災政策、行政機能の危機管理、地域経済の中長期的発展と密接な関係を持っている。さらにこれらの相乗効果により、新産業の創出、新たな雇用創出とも密接な関係を持ちうる新たな政策課題として認識されつつある。

 本連載の第19回第20回第21回では、欧米諸国ではすでに危機管理を国家的な重要施策に据え、今後のインフラのあるべきモデルについて抜本的な見直しを急いでいることについて触れた。“災害大国”、“公共事業大国”である日本こそ、率先してこの問題に当たるべきといえよう。

 周知のごとく、現在の安倍政権は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という3つの政策の柱(いわゆる三本の矢)を打ち出している。そして、2番目に挙げた財政政策では、公共事業による財政出動、公共事業投資の拡大を着々と進めることを是としている。そしてその公共事業投資の拡大政策の象徴が「国土強靭化」である。

 そして、「国土強靭化」とは、より汎用的な表現、国際的なキーワードで表現すれば、すなわち「ナショナル・レジリエンス」のことである。防災・減災を強化した国土構想を政策の柱として定め、社会インフラのレジリエンス性強化を中心に据えることで持続可能な国家と社会の再構築を目指す政策と言える。

「国土強靭化」「ナショナル・レジリエンス」が抱える問題点

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 しかし、「国土強靭化」、「ナショナル・レジリエンス」のコンセプトは単純明快であるにしても、その背景にあるもの、政策レベルでの論議、取り組み課題はかなり重層的で複雑な問題点を抱えている。

 まず安倍政権が推し進めようとしている「国土強靭化」では、防災・減災を強化した国土構想を政策の柱として定め、インフラの強化を中心に据えることで持続可能な国家機能と社会の構築を目指している。

 2012年末に安倍政権が誕生したばかりの政権交代直後の時期は、経済対策としての効果、財政規律などデフレ経済からの脱却・復調が優先課題として論議され、国民的関心も高かったことから、当時から掲げられた国土強靭化の政策については、バラマキ懸念の払しょく、費用対効果分析などが課題となっていた。

 一方で、安倍政権が誕生した2012年7月、大阪・堺市で40年以上前に敷設された水道管が破裂し、3万世帯以上が断水に陥った。おなじく同年12月に中央自動車道の笹子トンネル天井板の落下事故が発生した。その意味で、2012年は、デフレ経済からの脱却・復調と国家的な防災、そして老朽化したインフラの補修・整備が同時に緊急テーマとして浮上した年であったといえよう。

 よく考えてみれば、これら、象徴的なインフラ事故発生と、安倍政権誕生直後に打ち出されたインフラ重視政策(国土強靭化)の姿勢打ち出しとが奇しくもシンクロしたことは、決して偶然ではないように思える。高度成長期以降の歴史とその潮流を俯瞰してみれば、長い間、放置され続けてきたナショナル・レジリエンスの問題が現在、顕在化したことと、国をあげての危機管理が社会共通の課題として認識されつつあることとは、同じコインの表と裏といえよう。

【次ページ】「国土強靭化」、「ナショナル・レジリエンス」が抱える問題点

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