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- 2013/01/23 掲載
スマートシティと医療クラウドの関係、エネルギー管理も巻き込んだBCPの進展
【連載】変わるBCP、危機管理の最新動向
BEMSはクラウド化し、BCP的な運用改善とも合流していく
そこで一つ質問があります。最近、国際的にスマートグリッドやスマートシティの動きが活発になっており、日本でも同様の動きが見られます。しかし、ご存じのように医療分野でのBCPは人命に直結する事柄が多く、制度上のコンプライアンス面での対応、クリティカルなシステム構成といった多くの課題を抱えています。そのため、オフィスや店舗といった個別の停電対策、節電対策といった単なるBCPの次元では済まされないように思います。
O氏:おっしゃる通りです。医療は、24時間365日体制でクリティカルな問題と向き合っています。その中では、一言では片づけられないさまざまな課題もあると思います。たとえば医療システム全体とのスマートな結合、病院やクリニックでのエネルギーコストの削減や見える化、空調温度や照明の省エネと自動最適調整のバランスなど、複雑で高度な課題ばかりです。
そうした流れでいえば、病院やクリニック設備は、ビル配電設備、空調設備、照明設備、換気設備、電力モニターの高度化と結合し、より開かれたエネルギー監理システム、すなわちBEMS(注記参照)とも合流していくでしょうね。
BEMSには使用電力量デマンドを監視し、ピークカット制御をするデマンド応答(デマンドレスポンス)、電力使用量を可視化の機能を装備しスマートビルディングの一部として連動して省エネ性や利便性の向上を実現するもので、スマートグリッドやスマートシティの一部を構成するコンポーネントとして重要なポジションに位置付けられています。
今後、BEMSはクラウド化し、病院などの公共施設の電力効率化に関する設備改善に加えて、BCPのような運用改善とも結合していくのではないかと私は期待しています。
【次ページ】スマートシティや医療クラウドとBEMSの関係
【注記】 BEMS(ベムス)とは
BEMSとは、Building Energy Management Systemの略語で、ビル・エネルギー管理システムこと。BEMSはその基幹システムを通信情報プラットフォームに依存しているため、クラウド・コンピューティングや仮想化プラットフォームの進展と無縁ではない。
大手企業は自社ビルなどの社屋に、空調設備、電気設備、給排水衛生設備、防災・防犯設備、機械設備を総合的に管理するビルオートメーションを導入しているケースが多い。この場合、これら設備において、系統別に電力使用量を計測したり、設備の自動制御を実施している。そのため、改めてBEMSを導入するインセンティブがそれほど高くはない。
一方、中堅・中小企業では、ビル、オフィス、店舗への設備投資がネックとなり、まだ体系だったビルオートメーション・システムとして確立できていないケースが多い。そのため、設備の自動制御はもちろん、行き届いた電力消費量監視に手が付けられていない。
また、ここ数年、中堅・中小企業では間接業務のコストを削減する目的で、カスタマイズが比較的容易なクラウド・サービスを導入する気運が高まっているが、同様に、最近では中堅・中小企業をターゲットとした比較的安価な価格のクラウドサービス型BEMSが登場し、順調な滑り出しを見せている。
クラウドサービス型BEMSでは、基本的な計測器を設置するだけで迅速にBEMSを導入でき、ビル、オフィス、店舗の電力消費に関するデータ収集と管理が行える。クラウドサービス型BEMSでは、インターネット経由でビル内に稼働する電力計測装置をはじめとする各種電気系統の諸情報を自動収集し、他の電気関連情報とともにデータセンターに設置されたサーバで一括管理・リアルタイム分析の処理にかけられるため、カスタマイズの整合性が確保されている限り、大手企業が自社の専用システムで管理するビルオートメーションに比してもほとんど遜色のない機能水準となりつつある。
現在、経済産業省では、中小規模ビルにおけるBEMS導入の促進のために助成金制度を設け、BEMSの導入を推進している。また、同省では、中小ビル等にシステムを設置し省エネを管理・支援する事業者をBEMSアグリゲータ(ベムスアグリゲータ)として認定している。
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