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  • 2014/05/30 掲載

企業活動と知的財産権──「特許」や「商標」はなぜ重要なのか

法律がわかる起業物語:第4話

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「会社」は、法律によるさまざまな規律が張り巡らされた、複雑な、そして極めて人工的な存在だ。この連載では、飲食業やサービス業、ITベンチャーなどの起業者から、同族会社などの経営者まで、いわゆる「大企業」とは少し違う、小さいけど小回りが利く、そんな会社の経営を考えている人や、現に経営を行っている人向けに、「会社」を巡るさまざまな法律問題を、小説形式で解説する。第4回は、特許権や商標権などの「知的財産権」と企業活動の関わりや、会社がそれらの権利を取得する方法について。
連載バックナンバー

■登場人物紹介
●神田友信
大手電機会社勤務の32歳独身。理系の大学を出て勤続10年、営業マン一筋でやってきたが、世界を変えるような商品を世の中に送り出したいと起業を決意。法律のことはよく分からないが、うまく会社を経営できるだろうか?
●新堂由起子
友信と同期入社な同僚で法務部の叩き上げ。31歳。好きな食べ物はザッハトルテ。友信とは入社の頃から細く長く友人関係を続けており、起業の相談にも乗ってくれる。不思議と高い店によく行っているようだが…?
■前回のあらすじ
かつて発明家を夢見ていた営業マンの友信は、電車の中で見かけた女子中学生が持っていた自作の栞に衝撃を受け、その栞を製品化して世に送り出したい!──と、本気で起業を考え始めた。「株式会社」の設立の仕組みも、同期入社で法務部員の友人、由起子の助けで少しずつ分かってきた。後は、女子中学生にもう一度会って、栞の発明を会社で利用させて貰えないか頼むだけだ。

企業活動と知的財産権

 土曜日の昼、友信は図書館に行った帰り、本を詰め込んだバッグを抱えて電車に揺られていた。

 あの女子中学生に会うには、また偶然に頼るしかない。見慣れない制服のあの女子中学生は、今週末も同じような時間帯に電車に乗ってくるだろうか。

 あの日と同じ路線。あの日はがらんとしていた車内だったが、今日は、なにかの試合帰りなのだろうか、大きなスポーツバックを抱えた少年たちの姿があって、少しがやがやとしている。まあ、じっくり行くさ、と内心で呟きつつ、友信は、「知的財産」「特許」といった文字が並ぶ本を広げた。それにしてもついこの間まで、こんな本を読むことがあるとは思ってもいなかった。あの日、彼女を見かけるまでは。

起業家や小規模企業にとっての知的財産権

 人間の知的活動の成果についての権利を「知的財産権」と総称する。画家やミュージシャンの得る「著作権」や発明家が得る「特許権」などが典型だ。しかし「知的財産権」は、芸術家のみならず、企業活動にとっても非常に重要なものなのである。

 たとえば、いま友信が履いているナイキのスニーカーにはスウッシュロゴがついている。ポケットに入っているiPhoneにはさまざまな技術が詰まっている。窓の向こうに通り過ぎるコカ・コーラのポスター、あの瓶の形状を見れば誰でも「あ、コカ・コーラ」と分かる。

 法律は、ブランドネームやロゴマーク、製品に使われている発明や形状(意匠)などに対して、一定の保護を与える。「それらを他社には勝手に使わせない(自社が独占する)」という権利を認めるのだ。

 こうした保護は、友信のような起業家にとっても非常に心強い。たとえば、友信の会社「シオリヤ」が画期的な栞を最初に発売しても、大手文房具メーカーによる「パクリ」が無制限に許されてしまうと、「シオリヤ」はどうしたって苦戦を強いられる。シオリヤが懸命に「我が社が元祖!」と言っても、大手文房具メーカーが規模を活かして価格を下げ、人気タレントなどを使って宣伝を打ちまくれば、多くの消費者は大手文房具メーカーの方を選ぶだろう。

知的財産権の区別や概要

 知的財産権には、「著作権」「特許権」……などさまざまなものがあって分かりにくい。これらは、保護対象によって区別されている。簡単に言えば

著作権絵や文章や音楽などの「表現」
特許権「発明」
実用新案権「発明」未満の「考案」
商標権ブランドネームや商品名などの「商標」
意匠権製品形状などの「意匠」

という感じだ。

知的財産権は誰に対して主張できる権利なのか

 これらの「知的財産権」は、「誰に対して主張できる権利か」という面で、大きく商標権とそれ以外に分けられる。

 著作権や特許権などの場合は、他の全企業に対して「それを使うな」と言うことができる。たとえば、友信の会社が栞の特許権を手に入れれば、レコード会社がアイドルCDのオマケに栞を付ける場合にも、「うちの発明をパクるな」と言うことができる。

 これに対し、商標権は、基本的には「同種の他企業に対してのみ禁止できる権利」だ。

(そういえば……)

 と、友信は思い出した。大学の同期に「詩織」という女の子がいた。彼女が、たとえばカフェ経営をする場合、ひょっとしたら店名を「シオリヤ」にするかもしれない。友信が先に「シオリヤ」商標を取ったからといって、詩織にカフェ「シオリヤ」を諦めさせることは、基本的にできない。「同種」でないからだ。

 友信が詩織に対して「『シオリヤ』を諦めろ」と言えてしまうと、ちょっと「強すぎ」だ。少なくとも、今の法律はそう考えているのだろう。

【次ページ】 ドメインは商標と異なり世界で1社しか持てない

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