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- 2015/04/27 掲載
アフリカの経済成長に何が必要? アクセンチュア出身の起業家 伊藤 淳氏が語る
レバテックフリーランス 「世界のフリーランス」: 起業家・伊藤 淳氏
コンサルタントから起業家に転身

――学生時代はエンジニアを目指されていたとお聞きしました。
伊藤 淳氏(以下、伊藤氏)学生の頃は将来はエンジニアになろうと思っていました。学生がフォーミュラカーを制作して、レースを行うF-SAEという活動に加わっていたんです。我々のチームが初の日本大会で優勝したこともありました。
――そんなすごい体験をされたのに、エンジニアにならなかったのは何故なのでしょうか??
伊藤氏:むしろ、その活動の中で、自分はエンジニアには向いていないということに気付いたんです。それで大学院へ進むのもやめました。だからと言って、何をしたいということがあったわけではなかったのですが、就職活動を通して、コンサルティング業界に強い興味を持ちました。そして、外資系大手のコンサルティングファームであるアクセンチュアに入社しました。2005年8月のことです。
入社後4年たった頃、大怪我をしてしまって、2、3カ月仕事から抜けることになってしまったんです。悔しい思いをしましたが、その期間に友人や職場の方、家族から手助けしてもらって、「もっと社会に貢献したい」という思いが強まりました。それと、ただ与えられた仕事の中で働くのではなく、“自分のやりたい事を追求する人生を送りたい”と本気で思い始めたんです。
そして、復職してから社内のCSRプログラムの一つである、VBP(VSO Business Partnership)に応募しました。社会貢献するにも、できれば「グローバルに働きたい」という思いがあったんです。VBPというのは、発展途上国のNGOや政府機関、国際機関などソーシャルセクターに社員を派遣して、人材の育成を行い、社会貢献を果たすという活動で、アクセンチュアのグローバルでは1999年から取り入れていました。当時、世界では計140名近くが参加していたVBPですが、日本からは僕が3人目でした。
――日本で3人目とは、すごいですね。その行き先がアフリカだったんですね。
伊藤氏:そうです。日本オフィスではまだまだ知られていないプログラムでした。僕の場合、2010年にアフリカに行くまでは、社会貢献も国際開発もアフリカも全く関心がありませんでした。まったく国際開発のバックグラウンドがなく、ビジネス畑だった私が、いきなりケニアの草の根NGOの活動に関わってみて、色々な意味でショックを受けましたね。
アフリカって経済的にも社会的な動き、コミュニティ、持続可能性、政治的な動きなど、本当におもしろいんですよ。

9カ月間、VSOボランティアとして、ケニアの田舎町(Bimana)で活動する地元の小さなNGO(I&S Kenya)に配属されました。I&S Kenyaは、大きな団体ではないですが、学校を建設したり、その運営もサポートしています。他にも診療所を建設・運営したり、伝統工芸を観光業にさせたり、現地の人にコンピューターを教えたり、ビジネス立ち上げの支援も行なっていますし、農業や植林などの指導、自然環境や野生動物の保護など、人口の1%程度というマイノリティであるマサイ族が持続可能な社会を築くための支援をしています。
そんな中で私の役割は、I&Sの経営戦略の立案から、会計業務や人事業務の構築・運営・引継ぎなど、団体内の統括運営から、実際のフィールドワークまで多岐にわたりました。また、こうしたプログラムは、運営管理、モニタリング、評価の仕組み作りなどの継続的な管理が必要なため、その仕組みも構築しました。自分ができることを発揮して、貢献できる、ということが何よりやりがいを感じられました。
ケニアでの経験がコンサルタントとしての成長にもつながった
2010年11月に帰国。アクセンチュアで本業のコンサルティング業務に戻りましたが、ケニアでの経験は、これまで自分が培ってきた価値観にさまざまな変化を起こしました。まず、今までは欧米を想定して、「グローバルで働きたい」と考えていましたが、「アジア・アフリカの発展途上で働きたい」という思いが強まっていったということ。それから、このコーポレートボランティアという活動が「もっと日本でも広まってほしい」という思いが強まったこと。いわゆる社会貢献だけでなく、コンサルタントとして短期間で急成長できた活動でした。2011年夏、『アクセンチュア×SVP東京』のイベントに参加しました。SVPは、コンサルタントを始め、商社、弁護士、会計士、ITエンジニア、経営者などなど様々な専門家が、成長を感じる社会起業家に2年間の経営支援と社会的投資を行なう団体です。
その後、自身もSVPのメンバーになりました。ここでの活動を通して、様々な分野で活躍する同世代の起業家を目の当たりにして、大変刺激を受けました。
――ここで、「アフリカ」と「起業」という二つの興味が揃ったんですね。
伊藤氏:そうですね。でも、アフリカで働きたいと思いつつも、中々一歩を踏み出せず、2年ほどは何かいい方法がないかとずっと足踏みしていました。自分でアフリカビジネスセミナーを行なったり、アフリカビジネス勉強会を開くなどして、アフリカビジネスへの関心、ネットワークを強めていった時期でした。
その中で、アクセンチュアのコンサルティング業務の一環で、ADP(Accenture Development Partnership)としてアフリカに行ける可能性がある事を知ったんです。これは国際NGO、国際機関、途上国のNGOなどに安価なフィーでコンサルティングサービスを提供するものです。これも僕が日本で3人目となりました。僕は3ヶ月間、2013年6月から8月まで、東アフリカの医薬品サプライチェーンの展開を行う米系NGOの拡大戦略策定のプロジェクトのプロジェクトマネジャーとして従事しました。
そして、その経験を経て、長年勤めたアクセンチュアを辞め、自分自身でアフリカで事業をしよう!と腹をくくる事ができました。
【次ページ】アフリカの経済成長、カギになるのは農業・製造業
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