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  • 2016/01/28

なぜ有能なプロジェクトマネージャーは「プロセスの前にやり方だ」と常々言うのか

事例に学ぶプロジェクト立ち上げ7つの勘所(第5回)

複雑な業務やブラックボックス化した業務では、プロジェクトが目指す姿である業務プロセスやデータ構造を明確にすることが困難な事態に陥ることがある。業務プロセスやデータ構造より上位に存在する“詰めるべき”ことを確実に見つけて詰めることで、このような事態を回避し、妥当な業務を決めることができる。これを産業用機械メーカーのPMの実践事例と併せて解説する。さらにこの勘所の実行に必要な行動規範・スキル・知識として、躊躇しない行動規範、詰めるための技術とその運用スキル、管理技術・改善技術の知識が必要であることを解説する。この勘所修得には、理解と繰返しの実践が必要になる。

データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

システムコンサルティング会社を経て現職。製造・建設・サービス・情報サービスの業界を対象に,ITを伴う業務革新プロジェクトのシステム化計画,プロジェクト管理支援を行っている。また,企画提案方法論の教育・導入支援を得意分野とし,情報システム部門,情報システム子会社及びITベンダ向けには,企画提案力強化やPM力強化のための支援を行っている。
情報処理技術者試験委員。
株式会社データ総研
webサイト:http://www.drinet.co.jp/

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今回の勘所 詰めるべきを詰める

「プロセスの前にやり方だ」と言った有能PM

 企業の業務には、ときとして非常に複雑な業務がある。また、システム化されているが故にブラックボックス化し、業務の中身が分からなくなっている業務もある。プロジェクトの対象業務がそのような業務だった場合に、プロジェクト立上げはどのようにしたらよいだろうか。

 多くのPMは、開発ベンダーに見積りをとり、併せて社内の上位者や先輩にアドバイスをもらうなどするが、最終的には開発ベンダーからとった見積りに、さらにコンティンジェンシを厚く設定し、納期にも余裕をもたせるのではないだろうか。コンティンジェンシなどと呼んでも妥当な根拠がなければ単なる予算の積み増しで、それは経営者から見れば投資対効果を棄損する行為だ。

 いくら複雑な業務やブラックボックス化した業務でも、見通しを立てずにプロジェクトを始めるということは、遂行中にどのような要件が出たとしても、妥当性の判断基準をもたず、場当たり的に進めることになる。それは第1回に示したプロジェクト失敗の要因のすべてに陥る可能性が高いということだ。中には場当たり的に進んでも、“強引な幕引き”をする手腕があり、潤沢な余裕も手伝って予算の範囲内で収めることのできるPMもいるが、それが正しいとは言い難い。

 多くのPMが見通しを立てることができずに場当たり的にプロジェクトを進める一方、ある産業用機械メーカーで、開発設計業務を業務革新するプロジェクトを任され、非常に複雑な業務の見切れていない部分を積極的に探し出しては、徹底してそれを明らかにさせる運営で、業務革新の狙いすべてを達成したPMがいる。

 このPMは、「プロセスの前にやり方だ」と常々言い、少しでも不明瞭なニュアンスが漂うと、「そのやり方は?」とメンバーに問い、すっきりとした答えが返ってこないと、これを徹底的に詰めさせた。このPMによると、“やり方”とは、手法や技法と呼ばれる一般的な技術だけでなく、この産業用機械メーカーの現場で共有されている仕事の進め方などを指していて、どのような業務プロセスやデータ構造が妥当か、それを決める上位に存在する概念だそうだ。このPMがプロジェクトメンバーに対してやり方の重要性を説明した言葉は次のとおりだ。

・「当社は、生産や調達、物流の業務にジャストインタイム(JIT)を取り入れているので、製品の後補充生産の連携や組立てラインの資材補充には、かんばん方式を用いているよね」

・「この業務を分析しようとして、仮にかんばん方式をまったく知らない技術者が分析したらいったいどうなると思う?」

・「いくつもの部門や委託先の業務が絡んでいるので、個別にインタビューしたり、記録のされ方を調査したりすると思うけど、かんばんの動きは意外と複雑だし、インタビュー相手の実務者が基本のかんばん運用と大口対応の臨時かんばんの運用をうまく切り分けて説明してくれることを期待するのは難しいよね。おまけに実務者は、自分の仕事の説明はできても前後の業務は知らないので、それを適当に説明することもあるし」

・「やり方を認識せず、業務プロセスからいきなり分析しようとすると、まるで地べたのレベルに目線を置いたまま、コンパスもなしにひたすら歩き回って地図を起こすみたいだろ。こんなやり方で分析できるのは簡単な業務しかないよね」

・「でも、やり方として“かんばん方式”があることを認識して進めるともっとうまくできるはずさ。基本のかんばん方式を教科書でちゃんと勉強して、その上で当社の実務上のアレンジを聞き出していけば、正確な分析ができる」

・「だからいつも『プロセスの前にやり方だ』と言っているのさ。分かったかい」


 つまりこのPMは、業務プロセスやデータ構造より上位に、業務やデータを決定づける概念があることを知っていて、それが先に“詰めるべき”ものであり、それを“詰める”ことを優先させるプロジェクト運営を行ったのだ。

【次ページ】 詰めるべきことを構造化する

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