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  • 2015/10/29

大手化学メーカーのPMの実践事例に学ぶ:経理の人員半減プロジェクトが成功した要因

事例に学ぶプロジェクト立ち上げ7つの勘所(第2回)

業務改革策(イノベーションロジック:IL)を明確にして、これを意思決定者と握ることで、プロジェクト推進に対して、意思決定者の積極的な関与を引き出すことができ、さまざまな関係者との合意形成課題を意思決定者のリーダーシップによって解決することができる。これを大手化学メーカーのPMの実践事例と併せて解説する。さらにこの勘所の実行に必要なスキル・知識・行動規範として、美辞麗句に惑わされない行動規範、意味解釈のスキル、ILについての事例の知識が必要であることを解説する。この勘所はパワフルであるが、修得にはたゆまぬ努力も必要になる。

データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

システムコンサルティング会社を経て現職。製造・建設・サービス・情報サービスの業界を対象に,ITを伴う業務革新プロジェクトのシステム化計画,プロジェクト管理支援を行っている。また,企画提案方法論の教育・導入支援を得意分野とし,情報システム部門,情報システム子会社及びITベンダ向けには,企画提案力強化やPM力強化のための支援を行っている。
情報処理技術者試験委員。
株式会社データ総研
webサイト:http://www.drinet.co.jp/

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今回の勘所 業務改革策を握る

「経営の視点でさばく」と教えてくれた有能PM

 システム化とは一体何か、さまざまな答えがあると思うが、1つには「IT投資を伴った業務改革」と言える。少なくとも意思決定を下す経営トップはそう認識している。ある成功プロジェクトでは、業務改革の骨格となる業務改革策を明確化し、これを意思決定者である経営トップと握ることで、意思決定者のリーダーシップを伴ったプロジェクトへの関与を引き出し、プロジェクト遂行上さまざまな調整を要する難題を解決し、プロジェクトを成功に導いた。

 ある大手化学メーカーで、本社経理部門の人員を半減させることに成功したPMがいる。この企業の当時の経営戦略では、目指すポジションとして多角化とグローバル化を一気に進めようとしていた。重点領域はアジアと欧州である。この時CFOが重点課題として悩んでいたのが、「いかにして原価管理や現地の税務、迅速な月次決算など困難な経理業務を立ち上げるか」であった。

 これに対してこのPMはCFOと議論を繰り返し、重点課題の達成方法として、本社の経理業務を徹底して標準化して人員を半減させ、そこで生まれた余力の人員をM&A先に送り込むことを提案した。ただし、国内事業は厳しい競争を背景として、大手顧客の個別要望に応える特殊性・多様性に満ちており、その影響で経理業務も複雑になっていたので、それは変え難いものと考えられていた。このPMが提案した業務改革策は次の論理だ。

 業務改革策 : 経理業務の標準化による経理人財の余力創出
従来どのようにしていたかそれによるロスは何か
国内の大手顧客の個別要望に応える特殊性・多様性を前提とした業務の複雑さは与件であり、経理業務も例外ではないと考えている。それを前提として経理システムはパッケージを適用せず、業務の複雑さにキメ細かく対応すべきものと思い込んでいる。現状の業務にかかる工数が当たり前と考えられているので、経理業務の生産性を上げて余剰人員をねん出することはできない。 経理システムが現状業務にキメ細かく対応するものであることが逆に標準化を阻む環境要因となり、経理業務の標準化を進められない。
従ってM&A対応は新規人員を補充して対応しなければならない。
これをどのように変えるかそれによって得られるリターンは何か
営業や生産・物流など現場の業務の複雑さを経理業務まで影響させず、断固として標準化を進めることを経営トップの確固たる方針として維持し、この方針の下、ERPパッケージを前提として一気に業務標準化を推進する。業務標準化による省力化によって本社経理人財の余力を創出することができ、M&A対応を本社経理部からの余力で賄うことができ、人員増を防止できる。

 このPMは、人払いしたうえでCFOとひざ詰めで議論し、一般企業に比べて同社の経理部門の人員が過剰である実態と業務標準化による人財余力の創出余地を、いくつかの他業種のファクトとともに示した。そしてこの業務改革を進めようとすると、社内からどのような抵抗にあうか、その抵抗をどのように退けるべきか、そのためにCFO自らが果たすべき役割を説明し、CFOからリーダーシップの発揮に関する確約を得たのだ。

 このPMがわざわざ人払いまでしてひざ詰めで議論したのは、そうすることでCFOが同席した部下にその場で丸投げすることを防止し、リーダーシップの発揮をCFO自らの言葉で確約してもらうことができるからだ。

【次ページ】 握りの維持と課題のコントロール

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