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  • 2016/03/22

なぜ社長が「承認できない」と言ったのか──大手素材メーカーの有能プロマネの解決法

事例に学ぶプロジェクト立ち上げ7つの勘所(第7回)

意思決定者が抱く、投資の意思決定上の悩ましい問題である意思決定課題を洞察し、それを解決する提案を行うことで、承認獲得の可能性が高まり、提案者の価値を高めることができる。これを大手素材メーカーのPM(プロジェクトマネージャー)の実践事例と併せて紹介する。さらにこの勘所の実行に必要なスキル・行動規範・知識として、説得の設計スキル、落とし所に落とす行動規範、意思決定者の視点についての知識が必要であることを解説する。この勘所はパワフルであるが、修得にはたゆまぬ努力も必要になる。

データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

システムコンサルティング会社を経て現職。製造・建設・サービス・情報サービスの業界を対象に,ITを伴う業務革新プロジェクトのシステム化計画,プロジェクト管理支援を行っている。また,企画提案方法論の教育・導入支援を得意分野とし,情報システム部門,情報システム子会社及びITベンダ向けには,企画提案力強化やPM力強化のための支援を行っている。
情報処理技術者試験委員。
株式会社データ総研
webサイト:http://www.drinet.co.jp/

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今回の勘所 意思決定課題を解く

「視点が違えば見える絵も違う」と言った有能PM

 情報システム部門から見て、対峙する利用部門の実務担当者とその上層部が、実はシステム化についてまったく違う思いでいることは珍しくない。

 実務担当者は、たとえば自分たちの仕事で使っているシステムがとても使いにくく、それが業務上のさまざまな問題を引き起こしていようものなら、当然の思いとして然るべきタイミングで新たなシステムに更新してもらえると考える。しかし上層部は、たとえばその仕事そのものをなくすことができないか考えていることすらある。思いの違いは視点の高さの違いによるものだが、視点の低い側は、相手の高さの視点があることに気付いていない。

 ある大手素材メーカーに、給与計算などのグループ人事業務を受け持つシェアードサービス会社があった。このシェアードサービス会社の基幹システムは、元の本社のシステムを引き継いだもので、グループ各社を対象にした業務に向かない作りになっており、老朽化もしていたので、グループ本体のIT中期計画に再構築がテーマアップされていた。シェアードサービス会社の実務担当者は、対象の会社ごとに個別入力を強いられる現行システムは当然再構築されると考えており、IT中期計画にテーマとして入っている以上、再構築は約束されていると思っていた。

 この大手素材メーカーでは、中期計画に入っている投資テーマも、個々のテーマを始めるには改めて実行承認が必要で、このテーマについても、シェアードサービス会社の実務担当者とグループ本体のシステム企画担当者が協力して企画資料を作成し、審査に臨んだ。企画した側とすれば、背景から考えてシャンシャンと承認されるつもりでいたのだが、投資は認められないと発言し、企画差し戻しにしたのはこのシェアードサービス会社の社長だった。

 なぜ身内である自社の社長からNGを食らったのか。この社長は、元々グループの合理化策の一環として、人事関連の業務を統合してシェアードサービス化する本社の推進役だった人で、シェアードサービス会社設立と同時に社長に就任していた。実務担当者はこのテーマの企画前から社長に対して萎縮した状態で、本テーマに関する社長の意向は確認してこなかったのだ。

 それでも生産性向上の方向で企画を進め、本社が立案したIT中期計画のテーマでもあるので、当然承認されると考えていた。企画した実務担当者とシステム企画担当者は、まさに背後から銃で撃たれた思いだったわけだが、正式な会議での決定なので、企画を練り直すことになった。

 この企業では、プロジェクトの企画までは本体システム企画部門で行い、プロジェクトの実行からはグループのシステム子会社が引き継ぐように機能を分担していた。本来は企画のやり直しなので、このテーマは引き続きグループ本体のシステム企画担当者が企画をしなければならないはずだが、このシステム企画担当者は次の企画があることを理由に、企画のやり直しからシステム子会社のPMに押し付けてしまった。この本体システム企画部門とグループのシステム子会社の役割分担は、既に5年以上続いているが、システム企画担当者によっては、自分でプロジェクトの起承転結に責任を負わないことに起因して、甘い企画でお茶を濁すことが増えていた。

 押し付けられた側のシステム子会社のPMは、日ごろからこのような現状に問題意識を持っていたので、この機にしっかりとした企画をやるつもりで、シェアードサービス会社の社長へのインタビューからやり直した。そのインタビューでPMが社長から聞いたのは、次のように厳しい認識だった。

自社の社長が示した厳しい認識
・グループ各社の人事の事務要員の寄せ集めのまま、道具だけ変えてもダメだ。
・しかしグループ各社の人事部門の幹部から切り離されて、事務要員だけになっているので、本気になって業務を標準化し、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)しようとは考えないだろう。
・業務が変わらないまま、投資だけを承認することはできない。
・どうしても変わることができなければ、BPOをサービスしてくれる外部ベンダーにこの事業は売却となる。

【次ページ】 意思決定課題を洞察し、それを解くための行動をとる

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