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  • 2015/11/27 掲載

大手金融機関のPMの実践事例に学ぶ:「システムの業界はPMBOKを誤解していると思う」

事例に学ぶプロジェクト立ち上げ7つの勘所(第3回)

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業務改革策(IL)に基づいて業務とITの目指す姿(システムビジョン)を精緻に描くことで、目指すところと現状の差、すなわち達成課題や発生し得るリスクを検知することができる。これを基に、どのように解決すればよいのか、誰が解決すべきか、いつまでに解決するのかを先読みすることができる。これらプロジェクト立上げに際して考えるべき要素をプロジェクト要件という。プロジェクト要件について仮説構築し、ファクトファインディングズを繰り返して仮説を拡充するサイクルによって過不足ない遂行とリーダーシップを得る方法を、大手金融機関のPMの実践事例と併せて解説する。

データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

データ総研 シニアコンサルタントマネージャ 大上 建

システムコンサルティング会社を経て現職。製造・建設・サービス・情報サービスの業界を対象に,ITを伴う業務革新プロジェクトのシステム化計画,プロジェクト管理支援を行っている。また,企画提案方法論の教育・導入支援を得意分野とし,情報システム部門,情報システム子会社及びITベンダ向けには,企画提案力強化やPM力強化のための支援を行っている。
情報処理技術者試験委員。
株式会社データ総研
webサイト:http://www.drinet.co.jp/

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今回の勘所 プロジェクト要件定義による過不足ない遂行とリーダーシップ

「目指すところを決めずに動き始められる訳ないよね」と教えてくれた有能PM

 世の中のほとんどのPMは、プロジェクトの目指すところを明らかにすることなく動き方を決めて走り出す。こう言うと「そんなことはない」、「自分はそうではない」という反論が押し寄せてきそうだが、それを実践しているPMの具体的な行動からその差を認識すると納得してもらえると思う。

 ある有能PMは、プロジェクトの目指す業務とITの姿を、プロジェクト開始前に見通し、目指すところに到達するまでに起き得る課題やリスクを突き詰めて検討し、これを解決する方策を組み込んだ動き方、すなわちプロジェクトの計画を立てて遂行し、プロジェクトを成功に導いた。

 ある大手金融機関で、基幹システムのシステムアーキテクチャを一新し、ITコストを大幅に削減させることに成功したPMがいる。当時この大手金融機関は、大幅なコスト削減と生産性向上、規制緩和への対応に備えるために、基幹システムのシステムアーキテクチャを一新し、コスト削減と柔軟性・拡張性確保に対応できるようにすることが求められていた。

 これに対してこのPMは、さまざまな立場の知見者を集め、3か月の間に何度か合宿を繰り返して、成功確率の極めて高いプロジェクトの計画を立てた。集めた立場の知見者は、ユーザーの協力者、腹心の部下、信頼のおける協力会社の技術者、コンピューターメーカーや主要プロダクトのエンジニアである。合宿での論点は、次の項目である。

・北米や欧州の金融業界の動向から、今後どのような制度やサービスが出現する可能性があるか
・当社が属する企業グループには、今後どのような再編があり得るか
・ユーザーのシステムに対する役割は、今後どのように変わり得るか
・次期システムを構築する頃に旬を迎えるITはいったい何か
・既存システムの何をどのように残すべきか
・既存システムの問題は何だったのか

 合宿を繰り返して導いた成果は、基本のアーキテクチャや具備すべき機能要件・非機能要件など目指すシステムの姿、この目指す姿を達成する上で起き得る課題やリスク、そしてそれら課題やリスクをどのように解くか、それらを明らかにすることでどのように関係者の合意を得るか、意思決定者の承認を得るかである。

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図1■目指すところを決めて動き方を決めたPMの行動

【次ページ】 知見を集められなければ目指す姿を描くことはできない

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