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  • 2016/05/17 掲載

星野リゾート星野 佳路氏が民泊に賛成する理由 「旅館やホテル業こそ参入すべき」

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2020年に向けて、政府や民間企業はさまざまな分野から日本の観光業活性化に取り組んでいる。こうした中で課題とされるのが、ホテルや旅館といった宿泊施設の不足である。民泊は、これを解決する手段となり得るのか。新経済サミット 2016に登壇した星野リゾート星野 佳路氏、ネクスト 井上 高志氏、ウォール・ストリート・ジャーナル ピーター・ランダース氏、楽天 山本 考伸氏が民泊のメリットと課題について議論した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。


「宿泊施設の不足」は、民泊を増やす理由にならない

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ベンチャーリパブリック
代表取締役社長 兼 CEO
柴田 啓氏
 モデレーターを務めたベンチャーリパブリックの柴田氏は、いま深刻な問題になりつつある宿泊施設の需給バランスについて「日本ではホテルが圧倒的に足りないと言われている。しかし、そもそもホテルは本当に足りないのか、ならば民泊はどうなのか?」と、星野氏と山本氏に質問をぶつけた。

「インバウンドの需要にともない、『出張難民』が出ているように、東京・大阪・福岡などは、確かにホテルが足りない。しかし、本当にホテルが足りない地域は限られており、地方旅館の平日には空室がたくさんある。一概に宿泊施設を増やすのではなく、都市か地方か、あるいはビジネスかレジャーかというように、セグメントを分けて需要を喚起すべき」(山本氏)

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星野リゾート代表
星野 佳路氏
 この点については、星野氏も同じ意見だ。「世界を見ると、約10年単位でホテルの需要と供給が過多を繰り返している。ホテルは作ろうと思ってもすぐにできない。いま足りなくても、後で供給過多になる恐れがある。日本の大都市でホテルが足りないのは事実だが、それを民泊を増やす理由にしてはいけない。また中東が平和になり、旅行に行けるようになった途端に観光客を奪われる。ホテルが足りないから民泊ではなく、民泊は民泊としてちゃんと評価したほうがよいと思う」(星野氏)

既存プレーヤーこそ民泊に参入すべき

 民泊について反対している団体もあるが、星野氏は賛成の立場だという。その理由について次のように説明した。

「民泊には誰かの家に泊まるものと、都市型の空室に泊まる2通りがある。(後者の)空室に泊まる(という選択肢)を排除してはいけない。民泊が普及するとホテルが困ると言うが、ホテルはサービスが、空家を借りられる民泊は場所が『売り』になる。民泊を規制緩和して導入するのは大いに賛成だが、同時にホテルのサービスも規制緩和してほしい」と要望した。

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ネクスト
代表取締役社長
井上 高志氏
 民泊について多角的に研究する井上氏は「民泊は、モノではなくコトを体験する点で世界共通のユーザーエクスペリエンスだ。否定的な意見も出るが、新経済連盟では規制改革会議や内閣府に対して、民泊をやるべきだと提言している。1日あるいは1週間単位でのスムーズな受け入れができるため、1日で100万人を超えるようなイベントがあっても弾力的に運用ができる。もし周辺住民に迷惑をかけるような場合には、それをプラットフォームでヘッジしていく形で、健全に発展させられるスキームをつくる方向だ」と説明する。

 もう1つ大事な点は、大家がオーナーの場合に食事を一緒にする体験を売りに、人のつながりができることだ。

「(日本人から親切にしてもらうような)体験をすると、外国人がリピーターになってくれる。日本のお母さんに、もう一回会いに行きたいと思って帰っていただく。民泊は旅館やホテルとは違う体験が得られる点で非常に重要だと思う」(井上氏)

 星野氏は、既存プレーヤーこそ参入すべきであると指摘する。すでに顧客を有しているだけでなく、食事やサービスをデリバリーできるメリットがあるからだ。ただし、そのためには従来の古いオペレーションやレギュレーションを見直す必要もあるとした。

【次ページ】世界から引き離される日本の観光業界に必要なテクノロジー

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