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- 2017/12/08 掲載
シビックテックとは何か? 5分野別の事例に見る、社会問題のITによる解決方法
社会の“困った”をITで解決
「シビックテック」という言葉を聞いたことがある人は少ないだろう。シビックテックとは「市民の課題を解決する/生活をより便利にするために、ITを中心としたテクノロジーを活用するアクション全般を指すキーワード」である。シビックテックを代表する存在となった非営利組織Code for Americaが米国で活動を開始したのは2009年。日本国内では、2013年5月にCode for Kanazawaが石川県金沢市で立ち上がったのを最初に、さまざまな活動が広がっている。
「市民を対象としたテクノロジー活用」と言っても、そのアプローチはさまざまな形態がある。テクノロジーは既存の社会の仕組みに対し中立的で、その革新性に期待を込められやすい。たとえば、地方創生や働き方改革、介護問題など、どのような場面でもテクノロジーは活用されている。
ベンチャー・ファンドのアンドリーセンホロウィッツ創業者、マーク・アンドリーセン氏は、「ソフトウェアはすべての世界を飲み込む」とウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿し、議論を巻き起こした。市民社会に向けたソフトウェアテクノロジーの活用は、まさに既存のシステムを飲み込みながら変革を促すパワーを秘めている。
米国の行政学者でありメリーランド大学公共政策学部長のドナルド・F.ケトル教授は2008年、「自動販売機型政府」という概念を提唱した。これは、市民が行政サービスを自動販売機から商品を購入するように、安易かつ当たり前のように受けられると考える習性を指したものだ。
実際、現代社会において市民生活の多くは教育や公共交通、セーフティネットなど行政サービスによってサポートをされ、今日までその安心と安全が担保されてきた。
しかし、近年は「人口減少と高齢化」「都市圏への人口流入と偏り」「貧富の差の拡大」といった課題が深刻化し、行政サービスだけではこれらを解決することが困難になりつつある。
そこで注目されているのが「シビックテック」である。テクノロジーという中立的な立場から、既存の社会の仕組みのボーダーレス化を促し、市民の生活をより便利に豊かにする。では、どのようなことが可能になるのだろうか。
シビックテック活躍の5分野とは
はじめにシビックテックの範囲を明らかにしておきたい。設立当初よりCode for Americaへの資金拠出を続けている、米国ナイト財団の2013年の資料では、シビックテックの範囲を以下の5分野に大別している。
・GovernmentData(オープンデータの利活用)
・Collaborative Consumption(P2Pシェア)
・CrowdFunding(クラウドファンディング)
・SocialNetWorks(ローカルSNS)
・CommunityOrganizing(コミュニティエンゲージメント)
また、自治体向けサービスを提供する米アクセラが、IDCに委託して行った2015年に行った調査によると、2015年におけるシビックテック分野の市場規模は64億ドルになるという。
まだ歴史が浅いシビックテックという言葉は、その様相を固定化されず流動的に扱われることが多い。なお本稿ではシビックテックを「市民の課題を解決する/生活をより便利にする」領域のすべてに適用するものと捉え、上図の通りに5つの領域に分け定義している。
【次ページ】シビックテック5領域、9の事例
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