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- 2017/12/06 掲載
IoTビジネス成功の条件とは? ウフル・ARM・ソラコム・ウイングアーク・PTCが議論
IoTの全体像を理解できる一冊
今回、刊行された『IoTの基本・仕組み・重要事項が全部わかる教科書』(SBクリエイティブ刊)は、クラウド、およびIoTコンサルティングサービス/インテグレーションを手掛ける「ウフル IoTイノベーションセンター」のメンバーが共同で執筆した本である。執筆の中心的な役割を担った同社専務執行役員IoTイノベーションセンター所長の八子知礼氏は、「これから激増していくIoTシステムの構築/活用に必須となる知識と活用方法を網羅した」と胸を張る。同書は、エンジニアだけでなく、ビジネス部門も読者対象としているのが特徴だ。IoTを構成する要素をレイヤー別にわかりやすく紹介している。本書の構成を決めるにあたり八子氏は、以下の点を留意したと説明した。
「これまで分断されてきたさまざまな技術領域を統合的に扱い、センサーなどのデバイスからIoTプラットフォームまでを網羅的に取り上げた。IoTシステム構築の基礎的な考え方や要素技術に関する解説はもちろん、IoTを利用したビジネス視点のアプローチや、その事例も紹介している。IoT(活用)で目指す姿を、全体的に理解しやすいように努めた」(同氏)
イベント前半では同書の中で取り上げたトピックスの中から、八子氏が特に重点的に読んでほしいという部分を取り上げ、その内容を詳説した。
IoT成功のカギは「デジタルツイン」
冒頭、八子氏は「IoTが目指すのは『デジタルツイン』だ」と強調した。デジタルツインとは、IoTで取得したデータを分析することで、物理世界の製品やシステムで発生していることをサイバー空間(デジタル)上で再現する仕組みを指す。つまり、アナログとデジタルを融合させ、「ツイン(双子)」として同一に扱えるという考え方だ。これにより、リアルなモノや設備などの環境/稼働状況をデジタル上で再現できると同時に、さまざまなデータに基づくシミュレーション結果をフィードバックできる。八子氏は、デジタルツインがもたらすメリットは、以下の3点が挙げられると説明する。
- 原因分析や要因分析が、過去に遡って実施できる
- 時系列の分析を基本に、将来の事象予測ができる
- 事象予測に対し、複数シナリオに基づいた意思決定ができる
一方、デジタルツインで課題となるのが、データの扱いだ。さまざまなタイプのデータを並列に扱うためには、データノイズや欠損などを除去し、クレンジングする必要がある。実は、データクレンジングには工数も労力も要する。さらに、気象データや位置情報データなどのオープンデータや、他社が保有しているデータまでを分析の対象とするためには、トータルでデータクレンジングする必要がある。
八子氏は、「デジタルツインを成功させるためには、自社が蓄積するデータだけでなく、IoT環境を取り巻くすべてのデータの収集/分析が必要になる。オープンかつセキュアにデータを連携することで、(自社の)IoT活用精度も向上する」と指摘した。
IoTセキュリティに必要な視点とは
次に八子氏が指摘したのは、セキュリティ対策の重要性だ。従来のITシステムとIoTシステムはセキュリティ対策のポイントが異なるという。「機密性」「完全性」「可用性」といったITシステムの基本的なセキュリティ要素に加え、IoTシステムではセキュリティ基準の異なるデバイスが相互接続されることを加味した「機能安全」と「データプライバシー」も考慮しなければならない。特に「機能安全」は、自社だけでは対策できない課題を抱えている。相互接続されるIoTデバイスは規格や管理者が統一されていない。また、通信/接続手段も異なり、ネットワークセキュリティのレベルもバラバラだ。
何より問題なのが管理対象の増加である。屋外や遠隔地にばらまかれる大量のセンサーデバイスやスマートフォンなどのモバイルデバイス、さらに車載システムに搭載される組み込みデバイスなども存在する。
デバイス数の増加は、攻撃者にとって攻撃窓口が増加したことを意味する。IoTシステムは端末どうしがプラットフォームを介して相互接続されているため、自己増殖型のウイルスに感染すれば、すぐに被害は拡大する。また、障害発生時のインシデントの切り分けも、その対策が遅れるという危険もはらんでいる。
八子氏は「IoTシステムではデータを収集する端末(エンドポイント)からトラフィックを担うネットワーク、さらにデータ分析を実行するクラウド環境まで、トータルなセキュリティ対策が必要になる」と、その重要性を強調した。
【次ページ】「モノ売り」から「価値の提供」へ
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