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  • 2017/12/06 掲載

IoTビジネス成功の条件とは? ウフル・ARM・ソラコム・ウイングアーク・PTCが議論(2/2)

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「モノ売り」から「価値の提供」へ

 もう1つ、八子氏が指摘したのは「IoT活用によるビジネスモデルの転換」だ。IoTから生み出されるデータを活用すれば、これまでの「モノを製造して販売する」といったビジネスモデルから「製品が生み出す価値をサービスとして提供する」という新たなビジネスモデルを構築できる。

 特にIoTデバイスは、“モノ”が能動的にデータを産み出す。これらを複合的に活用すれば、新たなビジネスの創出につながるというわけだ。すでに製造業などではオンライン監視のIoTシステムで機器やサービスを稼働保証し、SLA(サービスレベル保証)に役立てたり、IoTによって蓄積されたデータ分析結果を「情報知見(インテリジェンス)」として販売したりする動きが登場しているという。

 IoT活用によるビジネスモデルの転換で重要なのは、「サービスのためのエコシステムの拡大」だと八子氏は説く。多くのIoTシステムは、インフラ部分を共通基盤とし、その基盤上に第三者/パートナーのアプリケーションを構築することで、エコシステムを構築している。具体的には米GEの「Predix」や米PTCの「ThingWorx」などのプラットフォーム上で、自社サービスと連携するサービスを提供することで、顧客の裾野を拡げるという戦略だ。

 ただし、気を付けたいのは「コスト」である。ビジネスの成長と比例し、コストがかさむようでは意味がない。八子氏は「IoT活用では、(双方がビジネスとして成功できる)エコシステムを確立することが大切だ」と指摘した。

「何かをしたい」ではなく「何をしたい」に

 イベント後半ではARM、ウイングアーク1st、ソラコム、PTCジャパンといった、現在のIoTを支える技術/サービスを提供する企業のIoT担当者が登壇し、「IoTでスピーディにビジネスを推進するコツ」などについて、パネルディスカッションを行った。

画像
パネルディスカッション登壇者(左から)
アーム IoTビジネスユニット Director IoT sales 春田 篤志 氏
ウイングアーク1st 営業・ソリューション本部 副部長 森脇 匡紀 氏
ソラコム テクノロジ・エバンジェリスト 事業開発マネージャー 松下 享平 氏
PTCジャパン プラットフォーム事業部 事業本部長 山口 達也 氏

 ARMのIoTビジネスユニットでダイレクトIoTセールスを手掛ける春田篤志氏は、「IoTビジネスをスピーディに構築するためには、人を有機的に結合させること」だと指摘する。IoTビジネス市場は立ち上がったばかりであり、単独(企業)ですべてのレイヤーの 製品/サービスを提供するのは困難だ。「IoT戦略は、言うなれば『餅は餅屋戦略』だ。それぞれのベンダーが得意な分野の要素技術を組み合わせ、ベストなサービスを提供する。それをコーディネートするのは『人』。人を上手に介在させることが大切だ」と述べた。

 一方、BIソリューションを提供するウイングアーク1st営業・ソリューション本部で副部長をつとめる森脇匡紀氏は、「IoTを導入する企業の目的意識」が重要だと語る。IoTがバズワードになっている現在、「IoTで“何か”をしたい」という企業が増えている。しかし、森脇氏は「IoTで“何を”したいのか、その目的を明確にすることが重要だ」と指摘する。

 製造業では、ビジネスモデルを「物売り」から「サービス売り」にシフトさせている企業も増加している。また製造ラインにIoTを組み込んでデータを収集/分析し、生産計画の最適化や可視化サービスを提供する企業も登場している。「IoT活用は単に既存業務の改善ではなく、自社のビジネスモデルを根底から変革する意識で取り組まないとダメだ」というのが、森脇氏の主張だ。

IoTビジネスを阻害するのは「組織のサイロ化」

 技術者の視点からIoTの可能性に言及したのが、ソラコムでテクノロジ・エバンジェリスト事業開発マネージャーを努める松下享平氏だ。「IoTビジネスは正解がない。1つの目的に対して複数のアプローチ方法がある。そうした状況では『どの技術を用いたアプローチが有効なのか』という『技術の目利き』が重要になる」との見方を示した。

 またPTCジャパン プラットフォーム事業部事業本部長の山口達也氏は、大規模企業を顧客に擁するプラットフォーマーの立場から、IoTビジネスがスピーディに“実現できない”要因を指摘した。


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 山口氏によると、「社内組織がサイロ化している」「(IoT活用を推進する)旗振り役がいない」「予算が確保できない」企業ではIoTビジネスの成功は難しいという。山口氏は「IoTはこれまでの組織編成では実現できない。それを回避するには、(組織を)横串で通し、企業全体にとってどのようなビジネスバリューがあるのかを可視化する必要がある」と述べた。

 同氏は、現在のIoTに対する取り組みは「25年前のERP(Enterprise Resource Planning)導入と似ている」と指摘する。そのうえで、自社だけで取り組むのに限界があると感じたら、外部コンサルの意見を取り入れるのも1つの手段であるとの見解を示した。

 最後にモデレータをつとめた八子氏は、「IoTビジネスを始めるのは難しくない。あとは実行に移すか否かだけだ。IoTを通じて日本を元気にしたいというのが我々の願いであり、それが実現されると願っている」と語り、パネルディスカッションを締めくくった。

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