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  • 2018/06/13

HRテックとは何か? 人事・採用・人材育成はどう変わる? 注目の3分野16製品を解説 (2/2)

3.労務・給与管理クラウド

 スタートアップ企業を含め、バックオフィス業務の自動化ニーズで急浮上しているのが、労務・給与管理のクラウドサービスです。国内では、中堅・中小企業向けクラウドサービス「人事労務 freee」や、「SmartHR」などが挙げられます。

 2015年にサービス提供を開始した「SmartHR」は、企業が行う社会保険・雇用保険手続きの自動化を目指すクラウド型の人事労務ソフトを提供です。従業員情報を入力するだけで必要書類を自動作成したり、総務省が提供するAPIと連携し、Web上から役所へ申請できる点が特徴です。

 海外で注目されるのは「Zenefits」です。Zenefitsは、中小企業に特化し、給与支払や勤怠管理、健康保険の管理などのクラウドサービスで、管理部門のオペレーション効率化・自動化をけん引しています。ピーク時には45億ドルの評価額で5億ドルを調達しており、シリコンバレーを代表するユニコーンといわれてきました。

HRテック導入の手順とポイント

 今注目される、HRテックサービスの多くはクラウド型で提供されているため、ITシステムの知識があまりなくても、初期設定から運用、API連携までを行うことが可能です。また、最新のデバイスへの対応やUI/UXに注力しているため、これまの業務ソフトウェアで感じていた使いづらさを解消しているため、IT部門の力を借りることなく業務部門主導で導入が行われることも少なくありません。

 採用管理サービスATSの場合、設定が完了すればその日から活用することができますが、分析ツールを使いこなすためには、過去の候補者データの移管や、各採用チャネルの経路情報のタグ付けなど、将来的な分析を見据えた一元化を進めていくことが重要となります。

アメリカのHRテック動向、世界最大規模のイベントで語られた未来

 盛り上がりを見せるHRテック市場ですが、今後の展望として、世界ではどのようなことが語られているのでしょうか。

 2017年10月10日から13日まで、米国のラスベガスで開催された、世界最大級のHRテックをテーマとしたイベント「HR Technology Conference 2017」では60以上のセミナーと300以上のブースが設置され、AI、チャットボット、SaaS、クラウド、ソーシャル、モバイル、アナリティクス、ビデオ、ゲーミフィケーションなどの最新のHR領域のトレンドが一堂に会しました。

 最終日は世界的に著名な人事コンサルタント、ジョシュ・バーシン(Josh Bersin)氏による「Digital HR : The New Architecture for Technology」というクロージング講演で、HRテックのこれからの進化に関して以下のようなことを語りました。

●注目を集める、採用領域のHRテック

 スタートアップ企業への投資家達から、とりわけ大きな注目を集めているのは採用、タレントアクイジション(タレント人材獲得)関連のスタートアップです。

 低い失業率に後押しされる形で、企業間の採用競争は激化しており、データによる採用力の強化と、よりよい従業員エクスペリエンスの提供が盛んになっています。

 たとえば、ビデオ面接などのテクノロジーは、表情の変化や声の調子といった候補者達が見せるほんの僅かな動き(Micro-Expression)もデータによって分析することを可能にし、彼らが自分たちの回答についてどの程度まで自信を持っているのかを検証し、採用企業側のトップ・パフォーマーと比較してどの程度の活躍が期待できるのか予測するといったアプローチを可能にしています。

●パフォーマンス・マネジメントがよりリアルタイムへ

 パフォーマンス・マネジメントも、大きな変革が起きつつあります。従来型の年次評価が「継続的なアセスメント」、つまり、よりリアルタイムなパフォーマンス・マネジメントに置き換えられつつあります。多くのベンダーが「継続的アセスメント」のためのツールを提供し始めており、企業にとって最適なものを選ぶことが大きなチャレンジとなっています。

●今後、HRテックは生産性のシステムへ

 従来のタレント・マネジメントから、ピープル・アナリティクスなど、データの多様化などを包含する、新たなHRテックのアーキテクチャーが必要になります。

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HRテックのアーキテクチャーは、2020年代には「生産性のシステム(SoP:System of Productivity)」になると予測されたという。
(写真:筆者撮影)

 1980年代がクライアントサーバー型の「記録のシステム(SoR:System of Record)」であったのに対して、2000年代のクラウド型の「エンゲージメントのシステム(SoE:System of Engagement)」、そして2020年代は「生産性のシステム(SoP:System of Productivity)」と予測しています。

HRテックが求められる背景としての「戦略人事」

 激化するグローバル競争やAI、ビッグデータといった技術革新、労働力人口の減少など現在、企業経営をとりまく環境は大きく、急速に変化しています。いかに重要な経営資源である人材を活躍させ、激化する人材獲得競争に打ち勝つべきかーー。これからの人事部門は経営が取り巻く環境の変化に適応し、戦略的な組織へと変革していく必要があります。

 こうした背景から、経営戦略を深く理解し、経営者のパートナーとして、事業計画を達成するために必要な打ち手を人と組織の側面から立案・実行する「戦略人事」が注目されています。戦略人事とは、1990年代からデイブ・ウルリッチ氏などによって提唱されてきた考え方です。

 オペレーションを中心とした従来の人事のあり方に対し、経営に関する目標と長期的ビジョンの実現を担う戦略パートナーとしての機能を有します。

 ウルリッチ氏は、戦略人事の機能として、事業戦略を十分理解し、人と組織の面から戦略を立案・実行するプロフェッショナルである「HRビジネスパートナー(HRBP)」や、採用や人材開発など人事の専門機能、そしてオペレーション部門などが相互に関連し支えあうことが重要であるとしています。

 また、戦略人事の各機能を統括するのが最高人事責任者(CHRO)です。日本ではまだなじみが薄いですが、CHROはCEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)と三位一体となりながら、採用と組織の面で経営者や部門責任者を支援します。経営戦略の具現化のために必要とされる人材戦略・人材マネジメントを担うことが理想であるといわれています。

今後の展望(まとめ)

 今後、HRテックの進化は、企業の組織や採用におけるあり方を大きく変えていくと考えられます。

 また、HRテックの広がりは、人事部門だけのツールではなく従業員一人ひとりが活用するツールとなり、リアルタイムに反映されたデータを洞察し、AIによる意思決定のサポートを通じて、新たな知見を活かした取り組みが注目されていくでしょう。

 テクノロジーによる業務の効率化の先には、企業が本質的に求める人材の戦略的な採用活動に加えて、人にしかできない役割――たとえば、従業員との対話や共感、関係性の改善など、イノベーションを創造するために必要なことに時間を割けるようになると予測されています。

 これからは、戦略人事として経営視点を持ち、「どのような組織ならば、企業戦略を実現できるのか?」といったことを経営者とともに考え、推進していくことがさらに重要となるでしょう。

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