- 2026/07/05 掲載
反対意見は「攻撃」…会議でキレていた経営者が変えた、意外なきっかけ
コーチビジネス研究所代表取締役
JEA認定シニアエグゼクティブコーチ
国際コーチング連盟(ICF)認定マスターコーチ(MCC)
新潟県出身。公的な中小企業支援機関での実務経験を経て、2003年より中小企業診断士およびエグゼクティブコーチとして活動を開始。コーチング実績5000人、セッション実績は1万時間を超えるエキスパート。経営者・リーダーの意思決定と人間的成熟に深く関わる実践を重ね、現場経験を通じて得た「問い」と知見を、研究・教育として社会に開くため、2014年にコーチビジネス研究所(CBL)を設立。日本エグゼクティブコーチ協会の会長を務め、現在は名誉会長。主な著書に『コーチング思考』(マネジメント社)、『コーチング・ビジネスのすすめ』(合同フォレスト)、執筆に「社長の想いを軸にするパートナー型コンサルティング」「伴走支援とコーチング」(『企業診断』同友館)など。
前編はこちら(※この記事は中編です)
「反対意見=攻撃」と怒る経営者を変えた、たった1つの問い
IT企業を経営するSさんは、会議で否定的な意見を言われるたびに、強い怒りを感じていたそうです。「なぜ分かってくれないんだ」「どうしていつも水を差すんだ」
彼にとって、反対意見は「攻撃」でした。だから会議の後には、ぐったりと疲れ、頭の中で何度もやり取りを反芻してしまいました。
そんな彼が、ある時期から、同じような場面で以前ほど腹が立たなくなっていることに気づきます。きっかけは、コーチとの対話で出た、たった1つの問いでした。「あなたは、なぜ“分かってもらうこと”に必死になっているのですか?」
その問いに、すぐ答えは出ませんでした。ただ、その問いを抱えたまま、次の会議に臨んだとき、不思議なことが起きます。
そこでもまた、反対意見が出ました。内容も、言い方も、以前とほとんど同じです。ところが、胸の奥に走る感覚が違いました。怒りより先に、こんな言葉が浮かんだのです。「この人は、この企画を壊したいのではなく、守りたいのかもしれない」
そう思えた瞬間、場の空気が変わりました。
後から振り返ると、出来事そのものは何1つ変わっていません。変わったのは、彼の内側にあった価値観でした。「反対される=否定されている」「分かってもらえない=自分の価値が下がる」という前提が、静かに揺らいでいたのです。
別の人は、こう振り返っています。
「前は、同僚が成果を出すたびに焦りや劣等感を感じていました。でも今は、“ああ、この人は今ここなんだな”と思えるようになったんです」
比較がなくなったわけではありません。ただ、比較に支配されなくなった。
それだけで、日常のストレスは驚くほど減りました。
また、こんな声もあります。
「同じ仕事をしているのに、ある日突然、面白さを感じる瞬間が増えました。仕事が変わったわけじゃない。自分が何を大切にしているかに気づいただけでした」
やりがいが生まれたのではなく、意味の置き場所が変わったのです。
なぜ、こんな変化が起きるのか。
価値観が書き換わるとき、世界が変わるわけではありません。人は同じ、出来事も同じ、状況も同じ、それでも、解釈のレンズだけが、静かに入れ替わる。その結果、怒りは「情報」に変わり、不安は「問い」に変わり、比較は「距離」に変わり、感情の質が変わります。
もし今、「前より怒らなくなった」「以前ほど焦らなくなった」そんな変化が少しでもあるなら、それは、あなたの価値観が、すでに書き換わり始めているサインです。
劇的な変化がなくても、世界の見え方が少し違う。
それこそが、問いがあなたの内側で働いている証なのです。
最近、「以前と同じなのに、少し違って見える出来事」はありませんか?
同じ出来事でも「前より怒らなくなった」人に起きた変化
ステージ3は、問いが「考える対象」から、「自分を導く力」へと変わっていく段階です。このステージの核心は、価値観の再構成です。外側の答えを求める段階のステージ1で身につけた価値観は、「外側の基準」でつくられたものが多いです。しかしステージ3では、問いによって、その基準が再評価されます。「成功とは何か?」こうした問いは、単なる思考作業ではなく、人生のOSを更新するプロセスです。
「自分にとって豊かさとは?」
「幸せとはどんな状態か?」
同じ出来事でも、別の解釈が生まれ、怒りや不安といった感情の質も変わります。
コーチングの現場では、しばしば次のような言葉が生まれます。
「前は腹が立って仕方なかったのに、今は別の意味に見える」これは、価値観が書き換わった証です。
「同じ仕事なのに、急に面白くなってきた」
「人との比較がどうでもよくなりました」
【次ページ】怒りや不安は、押し込むより「データ」として見る
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