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  • 2018/02/22 掲載

都会と地方で売り上げ2極化、明暗分ける百貨店業界のゆくえ

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全国の百貨店売上高が2017年、既存店ベースで3年ぶりに前年を上回ったことが、日本百貨店協会のまとめで分かった。大阪が訪日外国人観光客の急増などに支えられ、対前年比6.6%増の売上高を記録したのをはじめ、札幌、東京、福岡など大都市中心部の百貨店に明るさが戻りつつある。これに対し、大都市圏の郊外や地方は売り上げの落ち込みが続き、閉店ラッシュが止まらない。流通経済大流通情報学部の矢野裕児教授(物流論)は「郊外や地方の百貨店は明るい材料が見えず、今後も厳しい状況が続くのではないか」とみている。都心と郊外、地方で売り上げが2極化する百貨店業界は、大きな岐路に立たされている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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外国人観光客と富裕層の需要が好調な大阪市北区の阪急うめだ本店。百貨店業界の売上は大阪市中心部が突出して伸びている
(写真:筆者撮影)

大阪市中心部の百貨店、商都復活を印象づけるにぎわい

 大阪市北区の阪急うめだ本店。買い物客で混雑した化粧品売り場では、あちこちで中国語や韓国語の会話が聞こえる。次から次へと商品を買い求めるかつての爆買いと異なり、商品をじっくり選ぶ姿も目についた。

 外国人観光客の爆買いは2016年春から一時低迷していたが、2016年末から盛り返している。リピーターが増えたためか、お目当ての品は宝飾品や家電製品から化粧品など日用品に変わった。2017年10~12月の免税売上高は前年の1.8倍。混雑緩和のため、免税カウンターを増設している。

 阪急うめだ本店は「売り上げ増は国内需要の伸びもあるが、免税売り上げは好調」とにっこり。外の厳冬とは裏腹に、店内は商都復活を印象づけるにぎわいだ。

 大阪観光局の推計では、2017年に大阪府を訪れた外国人観光客は過去最多の1,111万人。訪日外国人観光客の3人に1人が大阪を訪ねた計算になる。府内の年間観光消費額は1兆1,731億円に上り、3年前の4倍に増えた。

 外国人観光客の波は、阿倍野区のあべのハルカス近鉄本店にも押し寄せている。2017年の免税売上高は前年の5倍の大幅増を示した。あべのハルカス近鉄本店は「来店客数は年が明けても好調を維持している」と喜んでいる。

 しかし、好調なのは大都市圏の中心部だけ。郊外や地方に目を向けると、インターネット通販の攻勢や人口減少で存続を危ぶまれる店舗が相次いでいる。

売り上げ増は大都市中心部だけ、郊外や地方は苦戦

 日本百貨店協会によると、2017年の全国百貨店売上高は5兆9,532億円。既存店ベースで前年を0.1%上回り、3年ぶりにプラスに転じた。地区別にみると、地方が北海道6.0%、東北4.1%など軒並み減少したのに対し、大都市部は大阪の6.6%増を筆頭に札幌3.5%、福岡2.5%、仙台0.6%、東京0.5%、横浜0.4%と伸びている。

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2017年全国百貨店売上高

 だが、既存店ベースの数字に閉店した店舗の売り上げは考慮されない。2017年の全国売上高を全店ベースで前年と比較すると、0.4%の減少となる。既存店売り上げが伸びた仙台地区は5.4%の大幅減少で、東京、横浜、大阪以外では札幌、福岡しか全店ベースで売り上げが伸びていない。

 日本百貨店協会の統計を基に全国百貨店の売り場面積を算出すると、2018年6月末は555万平方メートルになる見込みで、2008年末の680万平方メートルに比べ、2割も減少する。売り場の縮小は2009年から10年連続だ。

 全国売上高は1991年の10兆円弱をピークに急降下を続けている。富裕層が多く、外国人観光客の需要を見込める大都市中心部を除けば、閉店ラッシュが繰り返されてきた。

最近閉店、近く閉店予定の主な百貨店
閉店
西武筑波店茨城県つくば市2017年2月
西武八尾店大阪府八尾市2017年2月
さくら野百貨店仙台店仙台市2017年2月
三越多摩センター店東京都多摩市2017年3月
三越千葉店千葉市2017年3月
堺北花田阪急堺市2017年7月
大丸浦和パルコ店さいたま市2017年7月
中合福島店二番館福島県福島市2017年8月
十字屋山形店山形県山形市2018年1月
閉店予定
ヤマトヤシキ姫路店兵庫県姫路市2018年2月
西武船橋店千葉県船橋市2018年2月
西武小田原店神奈川県小田原市2018年2月
伊勢丹松戸店千葉県松戸市2018年3月
丸栄名古屋市2018年6月
出典:各社ニュースリリースから筆者作成

 2017年は千葉市の三越千葉店、福島県福島市の中合福島店二番館など計8店が閉鎖された。2018年は1月に山形県山形市の十字屋山形店が閉店したほか、名古屋市の丸栄など5店が閉店計画を明らかにしている。2017年に続き、2018年も新規出店の予定はない。

【次ページ】姫路市や山形市で中心市街地の核店舗が消失

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