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  • 2018/06/01

中国で台頭する「新小売(ニューリテール)」、無人化技術やAIフル活用で何が変わるか

野村総合研究所 郷裕氏が解説

今、中国では従来の小売業態とは異なる「新小売(ニューリテール)」が模索され始めている。これは、たとえば、キャッシュレス、顔認証技術など、最新のテクノロジーを活用する小売業態のこと。消費体験、業態やビジネスモデルなど、さまざまな点でターニングポイントが訪れている中国小売業界の最新動向について、野村総合研究所(以下、NRI) ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 上級コンサルタントの郷 裕氏が解説した。

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中国の無人コンビニ「繽果盒子(Bingo Box)」
(出典:Bingo Box報道発表資料)

「新小売(ニューリテール)」が台頭、中国は新たな小売業の在り方を模索

 中国の小売市場は相変わらず、2桁成長を維持している。このうち、EC市場が占める割合は年々伸びているが、リアル小売業は横ばいとなっており、相対的には厳しい状況だ。

 郷氏は、過去3年間の中国動向を「2015年から格安スマートフォンが普及し、消費者起点の新しいサービスが始まった。2016年にオンライン事業者大手のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)がサービス業のM&Aを進め、小売業を超えたオムニチャネル経済圏を構築した。2017年には、既存業態から脱却し、業界や国内外の壁を超えたマルチ・ボーダレスの時代へ突入した」と振り返った。

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(出典:野村総合研究所)

 さらに2017年からは、従来の業態とは異なる「新小売」モデルが登場し、新たな小売業の在り方が模索されるようになったという。アリババのジャック・マーCEOの言葉を借りれば「スーパーや百貨店などの伝統的な小売業でも、伝統的なECでもない新小売モデル」ということになる。アリババやテンセントは、実店舗の小売業との資本提携を進め、新しいビジネスモデルにトライする土壌が整備されつつある。

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(出典:野村総合研究所)

 こうした中、2018年の中国流通市場はどうさらなる進化を遂げるのか。郷氏は、日本の小売業協会にあたる中国商業連合会が毎年発表している「中国商業十大ホットイシュー」(2018年中国商業十大熱点展望評述報告)をベースに今後の流通市場の動向を占った。

2018年の中国十大ホットイシュー

 中国の最新十大ホットイシューは以下の通り。

【1】中共「十九大」精神は流通業を「大」から「強」へ導き、革新で国民の美好生活を実現

 マクロ消費をみると、流通については「大」から「強」へと動いている。従来までのスピード重視の拡大路線ではなく、生活サービスやITなど、ひとつずつのビジネスを強化し、品質と効率を高めて、国際競争力を強める動きだ。

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(出典:野村総合研究所)

【2】経済成長に対する消費の貢献がより高まり、引き続き経済成長の原動力になる

 国内消費については、2桁成長を維持し続けるとの見方だ。最近の傾向は、EC市場の伸びと、リアル小売業が回復基調に転じたこと。農村部の消費市場が成長し、スポーツ・レジャー用品、化粧品などのプレミアムカテゴリーが伸びているという。

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(出典:野村総合研究所)

【3】商業革新ブームが到来し、「新小売」の模索が相次ぐ

 無人化技術、IoT、RFIDなどの新技術により、「新小売」モデルが登場。クラウド、ネット、端末によるオンラインとオフラインの融合が始まった。たとえばビッグデータを利用し、オンラインの人気商品を実店舗に導入したり、新しい顧客接点を開拓して「物販+飲食」の複合業態や、「アプリ販売+実店舗販売」のO2Oなど、新ビジネスが登場。さらに流通のスピーディな回転や、受注生産を進めた在庫ゼロモデルへの取り組みが見られる。

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(出典:野村総合研究所)

【4】AIが新しい小売業態の誕生を促し、「スマートコマース」がブルーオーシャン化

 この1年間で、AIが小売業をドライブしている。すでに30余りの無人店舗企業が現れ、入店の認証や決済にAIが応用されている。実証実験では、米国よりも先行している状況だ。ケンタッキー・フライド・チキン中国は、顔認証によるアリペイ決済も始めた。またAIを活用し、無人倉庫による在庫管理の効率化も進んでいる。

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(出典:野村総合研究所)

【5】コンビニ業態は高速成長段階に入るとともに、スマート化による統合が始まる

 コンビニに関しては2012年ごろから注目され、この3年間でリアル小売事業者から、オンライン事業者まで参入、現在はさらにプレイヤーが多様化している。前出のように、ネット企業による無人コンビニや、ローソンを中心とした日系企業によるエリアフランチャイズ化が進み、活況を呈している。

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(出典:野村総合研究所)

【6】商業主導のサプライチェーン統合が進み、供給側改革を後押し

 商業が主導し、サプライチェーンが短縮化されたり、PBブランの開発も進んでいる。たとえば、北京スーパーの「超市発」は、農家と直契約し、生鮮の70%を現地調達している。また無印良品を真似た「網易厳選」が、ビッグデータによって企画開発したPBモデルがヒット。消費者起点でバリューチェーンを変えていく動きが見られる。

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(出典:野村総合研究所)

【7】ECによる貧困扶助の成果が現れ、農村部がEC成長のホワイトスペースとなる

 農村部がECのホワイトスペースとしてターゲットになっている。2017年上期の農村部ネットユーザーは約2億人。中国政府がインフラに投資し、都市部と農村部を仲介するプラットフォームが整備されつつある。都市部の人々が農村部へ旅行したり、レストランで飲食するなど、単純物流からサービスへと展開し、金融面でも大きな変化が現れている。

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(出典:野村総合研究所)

【8】生活サービス業の需要・供給双方から活発化し、物販を上回る成長率に達する

 生活サービス業も活性化しいる。特にシェアリングエコノミーが急成長し、すでに1兆円を超える市場になった(編集注:単純比較はできないが総務省の調査では日本は400億円規模)。サービスのレベルや利便性も向上し、何でも15分以内に調達できる生活圏を計画中だ。さらに、これまで富裕層が対象だったサービスが大衆化しつつある。その典型がオーダーメイド旅行だ。

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(出典:野村総合研究所)

【9】リアル小売業は回復の兆しを見せる一方、革新・ビジネスモデル転換への険しい道のり

 リアル小売業の業績は、重点小売企業100社の動向などをみるマクロデータでは回復基調に転じている。ただし、企業別でみると回復したのは一部の企業だけであり、まだ課題は多く、ビジネス転換への道のりは厳しい。

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(出典:野村総合研究所)

【10】情報化が農産品卸市場の転換を促し、電子決済が効率化・トレーサビリティを実現

 B2CのEC生鮮市場は競争が激化しているが、まだB2Bはブルーオーシャンだ。農産品卸しに関しても市場が中心となる。ただし、近代化への動きも見られ、情報化・電子決済化も進行中。農産品卸市場向けのB2B調達システム「大白菜+」のようなプラットフォームや、RFIDを活用した電子決済も増えている。

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(出典:野村総合研究所)

【次ページ】テクノロジー起点でビジネスモデルを再構築、X2CからC2Xへ

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