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  • 2018/07/02

ぼくがモザンビークの「無電化村」でフィンテックを始めた理由

日本植物燃料 代表取締役社長 合田 真 氏

アジアを主なフィールドに、植物燃料を製造・販売する事業を手掛ける企業として2000年に設立された日本植物燃料。その後、同社はアフリカのモザンビークに拠点を拡大し、同国の無電化村で、地産地消型の再生可能エネルギーおよび食糧生産を支援するとともに、農村で使えるフィンテックやアグリテックに取り組む。なぜ電気も通っていない村でフィンテックに取り組もうとしたのか、代表取締役社長 合田真氏が語る。

日本植物燃料 代表取締役社長 合田 真

日本植物燃料 代表取締役社長 合田 真

日本植物燃料株式会社 代表取締役社長。1975年長崎生まれ。京都大学法学部中退。2000年に日本植物燃料株式会社を設立。 アジアを主なフィールドに、植物燃料を製造・販売する事業を展開する。その後アフリカのモザンビークに拠点を拡大し、2012年に現地法人ADMを設立。同国の無電化村で、地産地消型の再生可能エネルギーおよび食糧生産を支援するとともに、農村で使えるフィンテックやアグリテック事業にも取り組んでいる。

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筆者が事業を展開しているモザンビークの農村にて

巡り巡ってたどり着いた小さな村で、世界を覆う不条理を解消する

 仕事をする。事業を興す。

 その理由は千差万別、人それぞれだと思います。生活のため、好きなことをやるため、家族にいい思いをさせるため。人生のライフサイクルによっても変わるでしょうし、言葉にするのはなかなか難しいことかもしれません。

 私自身、社会に出て起業するまで、働く意味なんて真剣に考えたことがありませんでした。それでもいろいろとやり続けていると、何となく大事にしていたさまざまな思いが一つにつながる瞬間がありました。はっきりと、「これをやる価値がある」と感じた瞬間です。

 先日上梓した『20億人の未来銀行』では、言葉で表現するために論理的な書き方をしていますが、実際には、人に惚れることのように論理ではないものが根幹にあるのだと思います。

 私の場合、それは日本から1万2000キロ以上離れたアフリカの地で起こりました。巡り巡ってたどり着いた小さな村で、世界を覆う不条理を解消するかもしれない「新しい経済の仕組み」を作る。期せずしてそんな事業に惚れることになったのです。

世界で最も貧しい国モザンビークでビジネスを行う

 みなさんはモザンビークという国をご存知でしょうか。モザンビーク共和国は、インド洋沿いに約2500キロの長い海岸線を持つ、アフリカ大陸南東部に位置する共和制国家です。

 人口は2967万人(2017年、世界銀行)。1975年に独立するまではポルトガルに統治されていたため、公用語はポルトガル語です。近年は天然ガスの開発や農業生産などの投資対象として注目が集まっています。

 はじめまして。日本植物燃料という会社で代表を務めている、合田真と申します。私たちは今、このモザンビークという国でビジネスをしています。

 モザンビークは、世界で最も貧しい国の一つです。国連開発計画(United Nations Development Programme=UNDP)が調査・発刊している『人間開発報告書2016』によると、保健、教育、所得という3つの側面から各国の開発度合いを示す人間開発指数(Human Development Index=HDI)において、モザンビークは調査対象の188カ国中181位(ちなみに日本は17位)。国民の70%が、生活に必要なモノを購入する最低限の収入を示す指標である貧困ラインより下に位置しています。

 米国国際開発庁(United States Agency for International Development=USAID)が示す国内の電化率も、2013年時点で39%、農村部に至っては26%にとどまっています。

 私たちがビジネスの舞台にしているのは、そんなモザンビークの北東端にある、カーボ・デルガド州のいくつかの農村です。

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モザンビークのカーボ・デルガド州にある農村の風景

 国土の南端にある首都のマプトからは2000キロ以上離れており、モザンビーク人からも「なぜそんな辺境にいるのか?」と尋ねられるほどの場所です。

 村に電気は通っておらず、ほぼ自給自足の生活をしている農民たちには、私たち日本人からすれば本当に微々たる現金収入しかありません。先ほど、モザンビークを「世界で最も貧しい国の一つ」と紹介しましたが、その中でも一、二を争う「お金の回らないエリア」で、私たちはビジネスをしているのです。

 読者のみなさんはおそらく、こう思ったことでしょう。そんなおよそビジネスに向いていなさそうな地域で、一体どんな商売をしているのか、と。他ならぬ私自身も、まさかアフリカで起業することになろうとは思ってもみないことでした。

電気の通らない村で、電子マネーを使った銀行を作る

 そんな私がなぜ、モザンビークの農村でビジネスをすることになったのか。まずは、私たちが今取り組んでいるビジネスがどういったものなのかを簡単に説明していきます。

 と言いつつも、実はこの問いへの答えは、私にとって非常に説明のしづらいものだったりします。現在私たちが取り組んでいる事業は、非常に多岐に及んでいるからです。それでもどうにか日本植物燃料という会社を定義付けするならば、今は「途上国の、インフラも整っていない、電気も通っていない村で、村づくりに参加している会社」ということになるでしょうか。

 日本植物燃料はもともと、社名にあるように「植物燃料の製造・販売」をする日本の会社として、2000年にスタートしました。しかし、どういうわけかモザンビークの農村にたどり着き、今は日本人メンバーが5名程度、モザンビーク人スタッフも含めると30名程度で村づくりに参加しています。

 「村づくりへの参加」というのは、植物燃料による電力の供給もあれば、農作物の買い取り、栽培の指導、日用品を売るキオスクの経営、学校建設の支援など、本当にいろいろです。

 さらに、現在私たちは、無電化の村に電子マネーを使った「新しい仕組みの銀行」を作ろうと奮闘しています。

「無電化の村で電子マネー?」
「世界でも最もお金の回らないエリアで銀行?」

 そんな声が聞こえてきそうです。またいろいろと混乱させてしまったかもしれません。しかし、だからこそ、なのです。無電化の、世界で最もお金の回らないエリアだからこそ、そこに「新しい仕組みの銀行」を作る必要があると、私は考えています。

 私たちがいる無電化の村には、当然ですが、これまで銀行がありませんでした。銀行口座を持たない村民は、主に農作物を売って手にした現金を、自宅の地面に埋めるなどして保管していました。

 また、彼らがお金を送金したいと思ったら、半日かけて銀行がある街まで移動するか、そこに行く知り合いにお願いするか、乗り合いバスの運転手に預けるかしか選択肢がありませんでした。

 そこには常に、盗難や紛失のリスクが付きまといます。電子マネーを使えば、こうした人たちも、自分の村にいながらにして安全に、簡単に貯蓄や送金をすることができます。

 けれども、私が「新しい仕組みの銀行」を作ると言っているのは、単に電子マネーというテクノロジーを使うことを指しているわけではありません。突然大きな話になるのですが、私には、現在の世界標準となっている金融システムのままでは、いずれ世界が破綻してしまうという危機感があります。

 そして、私たちが日々接しているモザンビークの農民が貧しい生活を強いられていることの一因も、「現実」に合っていない、そうした既存の金融の仕組みにあるのではないかと考えているのです。

【次ページ】時代の「変わり目」が来ている今、私が伝えたいこと

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