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- 2018/08/14 掲載
マッキャンCMOが断言、「グローバルマーケティング」の時代は終わった
そもそも「グローバルブランド」とは何か?
デイビー氏はコカ・コーラやユニリーバ、ハイネケン、フィリップス、モンデリーズ・インターナショナル、マースなど、世界に名だたるグローバルブランドのマーケティング戦略に携わってきた。オーストラリア出身のデイビー氏は、これまでオーストラリア、上海、香港、シンガポール、ロンドンで活動し、いまはシンガポールにて、新規ビジネスおよびクライアント開発に携わっている。デイビー氏が問いかけるのは、「今、ブランドにとって何が必要なのか」、そして「グローバルブランドであることの意味」だ。
そもそもグローバルブランドとは何か。
強いブランドが象徴するものは国や地域、市場の変化を受けて変わるものではない。ブランドイメージのオリジナリティ、ブランドがもたらすもの、つまりブランドが消費者や社会に与える価値は約束されたものだ。ブランドには、その価値(イメージ)を維持する責任がある。まず、それが大前提だ。
そのブランド価値をグローバルに展開し、維持し続けるのがグローバルブランドであり、このグローバリズムの動きは1990年頃から活発化し、2000年代になると、社会はグローバルブランドであふれた。
グローバルマーケティング戦略が機能しなくなった理由
マッキャン・ワールドグループが2015年に発表した「Truth About Global Brands」(グローバルブランドに関する統計データおよびその分析)は、グローバルマーケティングの動向が、世界を水平にとらえた単純なグローバリゼーションでは立ちいかなくなっていることを指摘している。まず、この資料にはグローバルがローカルに与える影響をポジティブにとらえるデータがある(29地域の3万人の回答によって作成されたデータとされる)。
・グローバルブランドは世界をより良くする力を持っていると考えている:85%
・グローバルブランドのおかげで世界はより良い場所になっていると信じる:78%
・グローバリゼーションがチャンスを広げると考えている:87%
・自分たちのコミュニティに参加する企業が好きだと同意する:83%
世界の85%の人々が、グローバルブランドが世界をより良いものにすると信じている。しかし、調査データが提示するのはポジティブな数字だけではない。オリジナルの文化がグローバルブランドによって失われてしまうと危惧する人々が、68%いることも示している。
つまり、グローバルブランドの影響力がなくなったわけではないのだが、自国、自地域の文化やコミュニティを維持しようというナショナリズムも起き、グローバルとローカル、相反する2者がパワーバランスのゲームを始めたのだ。この状況の変化が、従来のグローバリゼーション、グローバルマーケティング戦略が機能しなくなった原因だとする。
「グローバリティ」とは何か?
理由はいろいろ考えられる。思ったより世界は複雑だったといってしまえばそれまでだが、実際には、人々を取り巻く環境の変化が大きいだろう。今の時代、グローバルなのはグローバルブランドだけではない。小規模なビジネスもグローバルな取引を増やしているし、通信や流通のテクノロジーの進化は、人やものの移動範囲を拡大した。現在の「一瞬で世界中とつながる」状況では、従来のグローバルマーケティングのように一方的にメッセージを発信しているだけでは届かないということだ。
今、グローバルブランドにとって必要なことは、ローカルなコミュニティをいかにリスペクトしながらブランディングをしていくか、どうローカルマーケットにブランドを伝えていくかということになる。
それが「グローバリティ」という概念だ、とデイビー氏は語る。
たとえば、「公立性」「社会的正義」は従来、ブランドが発信するメッセージとして効果的だとされてきた。しかし、より効果的なのは、「世界平和」や「イルカの保護」をメッセージとして伝えるのではなく、「私たちはよい製品を作っています」というようなブランドの価値を理解してもらうこと。そして、それをローカルの文化にどうつなげていくかだ。
ここから、グローバルブランドのキャンペーンを通して、グローバリティを主軸としたマーケティングの実例を見ていこう。
【次ページ】「グローバリティ」とは何か?
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