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- 2018/08/28 掲載
富士通とNECの「苦悩」 携帯電話から撤退も、無視できないNTTとの関係
旧電電ファミリー企業だったかつての姿に回帰?
富士通は、子会社である富士通パーソナルズの携帯電話販売事業を売却する。すでに複数の企業と交渉を進めており、近く最終的な売却先が決まるという。同社は、NTTドコモのサービス店舗であるドコモショップを全国各地で運営しており1000億円以上の売上高があった。携帯電話の製造事業については、今年1月に投資ファンドへの売却が決まっており、富士通は今回の販売子会社売却によって携帯電話に関するほぼすべての事業から撤退することになる。
かつて日本には10社以上の携帯電話メーカーがあったが、業績不振から事業の統合や撤退が相次いでおり、今回、富士通が撤退すれば、携帯電話のメーカーは京セラ、ソニー、シャープの3社だけになる。
富士通は富士電機の通信部門が分離独立した企業で、旧電電公社(現在のNTT)に交換機を納入する、いわゆる旧電電ファミリーの1社として成長してきた。全盛期には業務用の通信機器に加え、PCなどコンシューマ事業にも積極的に進出し、一般での知名度を高めてきた。
ところがNTT向けの交換機ビジネスは、通信プロトコルが従来型からIPにシフトしたことで価格破壊が発生、大幅な縮小を余儀なくされた。PC製造の主力が台湾や中国など海外にシフトしたことによってPC事業も低迷するなど八方塞がりの状況となった。
携帯電話の製造で少し活況を取り戻したが、やはり海外メーカーの価格攻勢には太刀打ちできず、今回、完全撤退を決断した。PC事業については、中国のレノボグループと資本提携することで何とか事業を継続している状態だ。
現在、同社の主力事業は政府機関などを中心とする情報システムの構築・運用となっている。政府系の情報システムはNTTのグループ会社であるNTTデータが元請けとして政府と契約し、各パートナー企業に実際の開発を依託するケースが少なくない。
NTTを頂点とした重層的な下請け構造が批判され、最近ではだいぶ雰囲気が変わってきたものの、政府系システムの受注におけるNTTグループの影響力は今でも絶大である。富士通は、交換機から情報システムへとシフトしたが、結局は旧電電ファミリー型のビジネスモデルに回帰したことになる。
情報システム事業はあまり儲からない
富士通の最大のライバルであり、同じく旧電電ファミリー企業だったNECも同じような道筋をたどっている。交換機や通信機器のメーカーとして成長し、その後、PC分野に進出。同社のPC-9800シリーズは、圧倒的な国内シェアを誇っていた。だが、日本独自仕様のPCは競争力を失い、PC-9800シリーズのシェアは急低下。最終的には富士通と同様、レノボグループの支援を得る形で事業を継続している。
ガラケー時代には、携帯電話の製造ビジネスにおいても富士通と争っていたが、日立、カシオと事業を統合。その後、2013年にはスマホの製造を取りやめるなど、事実上、携帯電話事業から撤退した状態にある。
現在の主力事業は、富士通と同様、情報システムの構築や運用といったITビジネスである。両社はいつも似たようなビジネスを展開し、常にライバル関係にあったが、事業の縮小や再構築という点でも非常に似通っている。NECが携帯電話から事実上撤退したという状況から考えると、富士通の携帯事業からの撤退も時間の問題だったということになる。
両社とも事業の縮小に伴って、業績は伸び悩んでいる。
表1 富士通とNECの業績比較 | ||
(百万円) | ||
富士通 | NEC | |
売上高 | 4,098,379 | 2,844,447 |
営業利益 | 182,489 | 63,850 |
従業員数 | 14万365人 | 10万9390人 |
生産性(1人あたり売上高) | 2,920万円 | 2,600万円 |
富士通の売上収益(一般企業における売上高)は、国際会計基準で遡れる5年前から連続してマイナスとなっている。営業利益は行ったり来たりという状況なので利益率は上がっているが、直近の2018年3月期における営業利益率は4.5%なので高収益とは言い難い。
主力のシステム開発事業を含むテクノロジーソリューション部門の売上高は、全体の75%を占めており、同部門の営業利益率は6.2%と全体平均より高い。PC事業を含むユビキタスソリューション事業の利益率は1.7%、デバイスソリューション部門の利益率は2.4%となっており、情報システム以外の部門が利益の足を引っ張る構図が明白である。
【次ページ】選択と集中が十分に行われないのは、1つは雇用の問題、もう1つは「NTTとの関係」
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