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- 2018/11/05 掲載
スタディサプリ誕生秘話、山口文洋はカリスマ講師たちをどうやって口説き落としたのか
「スタディサプリ」のアイデアはいかにして生まれたのか
(スタディサプリ講師 伊藤賀一)――そもそもどういう経緯でスタディサプリを立ち上げることになったのか、改めてお聞きできますか?山口文洋氏(以下、山口氏):僕は25歳まで公認会計士の勉強をやっていたのですが、そこからあるベンチャーに拾われて、リクルートに中途入社したのが28歳ごろの話です。
そこで進路選択やキャリア支援教育の部署に配属されたのですが、その事業が、僕が入社して3、4年後、新しいビジネスをしなければならない、というフェーズでした。僕もそのころには30を越えて主体性持って考えなければという使命感がありました。
そこでふと立ち止まって、進路選択やキャリア構築のためにはそもそも勉強しなければいけないけれど、その支援をすることは考えたこともなかったことに気づいたのです。
保護者や生徒に会って話を聞くと、塾のない地域に住んでいたり経済事情のために行きたくても行けない生徒たちが想像以上に多かった。そして、その気持ちに答えられるサービスを出せば、後発ながら僕らにもチャンスがあるかもしれないと思ったのです。
僕自身も公認会計士の学校に通っていたときの話ですが、カリスマ講師の映像授業とそれ以外の先生の生授業か選べるようなときは、いつも映像授業を選んでいたことを思い出しました。やっぱり“カリスマ”と呼ばれるような先生だと、バーチャルでも引き込まれ方が違います。
単なる“いいアイデア”は数日経てば忘れてしまうものですが、そのアイデアばかりは2カ月経っても忘れられなくて、思ったのです。「このビジネスアイデアは、自分の一生で3度あるかどうかの出会いかもしれない」と。
毎晩会う人にこのアイデアをぶつけてみたのですが、そこでもいい反応をもらって自信になりました。そこから、リクルートの新規事業コンテストに参加していくことになったのです。
今振り返ると、ビジネスをどうにかしたい、というのが第一歩。困った声を実際に聞いて、ヒロイズムのようなものが生まれて、自分がやらねばならぬ、となった。32歳で初めて、人の先頭に立った経験ですね。
――つまり、「世の教育格差をなくそう」というところからスタートしたわけではないと。
山口氏:そもそもの始まりは、低価格でいつでもどこでもカリスマ先生の授業が受けられるのは面白い、ということです。そして、それが収益を生むかもしれない、となって。3番目に、みんなと話す中で「教育格差の解消にもつながるかもしれない」と思うようになりました。
つまり、最初は自分のビジネスをなんとかしたかった。そして面白いサービスを作りたかった。それがもうかるし、世の中の人の役に立つ。
起業するなら、最初から正義感というよりも、自分が面白いと思うことから始めるといいと僕は思います。
つてがまったくない教育業界、「人脈」が常に論点に
――そこからの話を聞かせてください。アイデアが出て、リクルートの新規事業コンテストに参加してから。山口氏:まず、書類は通ったのですが、2次選考、3次選考でより詳細に詰められていきます。
「面白いアイデアだし、君はこれまでなかなか頑張ってきたからやらせてあげたい。ただ、リクルートにおいて広告ビジネスではなくて直接ユーザーからお金をもらうサービスプロバイダはこれまでない。それを成立させるにはカリスマ先生の授業が一番だろう。だが君にそのつてがあるのか?」と。
そう、人脈がずっと論点になったのです。僕は誰も知り合いがいなかったので、とにかく社内で知り合いに先生がいないか声をかけました。そうしたら、幸運なことに、肘井学先生(スタディサプリ英語講師。“英語成績アップの請負人”)が最終審査前に見つかったのです。今は多少丸くなりましたが、当時の肘井先生は“ジャックナイフ”のように尖っていましたよ(笑)。
ただ、そこで真摯に熱く向き合ったら、協力してもらえることになった。そうしたら、肘井先生から「数学も必要だろう。たまたま同じ予備校にもうひとり“ジャックナイフ”がいるから、一緒に口説きに行こう」と言われました。12月のクリスマス、名古屋のマリオットホテル。そこで口説き落としたのが、山内恵介先生(スタディサプリ数学講師。“数学の本質理解のトレーナー”)です。
その後行われた2月の最終審査では英数の先生がそろっていることも押しの一手となり、グランプリを取って事業をスタートさせることができました。
【次ページ】山口文洋はどのようにして、カリスマ講師たちを口説き落としたのか
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