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  • 2018/12/21 掲載

日立を支えるBPOプラットフォーム、ソリューション提案型で必要な3タイプの人財とは(2/2)

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BPMNで業務を可視化してBPO化する対象を検討

 そして3つ目のソリューション提案型のBPOについて、和田氏は「まさに我々自身のBPOのやり方を、ソリューション提案型のBPOと呼んでいる」と説明する。

「日立グループ全体のノンコア業務を順次BPOとして受託していくのが我々の基本スタンスだ。一方で各BUが利用している業務システムは異なっている。それらをすべて我々が利用している業務システムに合わせてくださいとお願いすることは現実的ではない。日立グループ全体最適化の視点で考えた時、まず我々は“BU側の業務システムは現行のままでOK、最適なやり方は我々で考えます”ということを宣言するところから始めている」

 そしてソリューション提案型BPOの実際の進め方としては、まず経営者にヒアリングを行い、経営課題を共有するところから始める。

「その際によくあるのは、コンサルティング会社が入って、経営課題に対してトップダウンの視点だけで進めるやり方だ。しかし私たちは現場目線を強みとしている。課題解決は現場軸、つまりボトムアップで行う。ここが大きな特徴だ」

 ソリューション提案型のBPOでは、事前準備として顧客の経営課題を共有した上で、実際にバックオフィス業務に従事する担当者にヒアリングを行い、現状を把握する。

「顧客の現場の方々からのヒアリングはかなり工数がかかるが、ヒアリングの中から多くの課題が浮かび上がる。顧客側のご協力も必要なプロセスだが、幸いご理解が得られるケースが多い。そしてヒアリング結果から、国際標準のビジネスプロセス表記法であるBPMN(Business Process Model Notation:ビジネスプロセスモデリング表記法)を用いて、現状の業務プロセスを可視化する。As-Isが明確にならない限り、改善策も見えてこない。その上で現状分析をして課題を抽出し、改善策を検討し、BPOの対象業務を検討していく。その後、移行計画を作り、最終的な対象業務を決定する」

 特にこの進め方の中でBPMNを活用するメリットとして、和田氏は「誰にでもすぐに理解できる共通的な表記方法を用いて現在の業務の姿を描き出すことで、経営者自身がBPO化すべき業務プロセスであるか否かを判断することができる」点だと説明する。

ソリューション提案型のBPOで必要となる3タイプの人財

 このソリューション提案型のBPOでは、大きく3タイプの人財が必要になるという。順番にコンサルタント型、エンジニア型、BPMSマネジメント型だ。

「まず顧客の業務を分析するのは、いわゆるコンサルタントの仕事だ。ただし、我々が必要とするコンサルタントは、最終的なBPO化まで推進できる人財である。しかしそうした人財は社内を含め、グループ全体を見渡してもなかなか見当たらなかった。そこで今後のビジネスの方向性を見据えた上で、社内で育成する方針を2年前に固めた。我々の中では単なるコンサルティングだけではなく、個々のBPO業務を最適にインテグレーションできる人財という意味合いで"BPOインテグレータ"と呼んでいる。こうした人財がフロントに立って顧客現場にヒアリングに行き、現状分析を経てBPOの対象業務を提案する。現在当社の従業員数は約1,500名だが、今後、約1割程度を"BPOインテグレータ"とする方向で考えている」

 次に、コンサルタント型の人財と連携して、エンジニア型の人財がBPO化する業務フローを設計する。エンジニア型の人財は自らがBPO業務に従事することも多く、現場感覚に優れた人財であることも特徴の一つである。

「BPMNによる業務フローの設計からRPA化の要件定義までできる人財をBPOエンジニアと呼んでおり、こうした人財の育成も進めている。現在100名規模にまでなっているが、グループ全体のBPOを担うことを見越せば数百名は必要だ。その目標に向けて、引き続き教育を進めている」

 そして最後のタイプが、BPMSの運用全般とRPAロボットの設計・開発、さらにはBPMS運用の中で取得したデータログを分析・評価するBPMSマネジメント型の人財となる。「毎年20名規模での育成を計画している」とのことだ。

「2016年からBPOを事業の中心に据えている。当初は売上高比でBPO事業比率が40%程度であったが、2018中期経営計画の最終年である本年は同じく売上高比で80%程度を見通している」

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提案型BPOが必要とする人財

売上・利益を自社の評価軸から廃止した理由

 ここまでBPO事業会社としての日立ICTビジネスサービスの取り組みを紹介してきたが、和田氏は実際の活動をよりスムーズに進めるために「当社は“利益は出さない会社”だということを親会社に認めてもらった」と続ける。

「通常はいずれの会社も売上と利益を重視した経営を行う。もちろん日立グループも同様だ。しかしほとんどが内販取引のBPO事業会社である我々の売上は、日立グループにおける他のグループ会社のコストであるとも言える。我々自身が利益をあげてキャッシュを創出し、さまざまな分野に投資するとする考え方もありえるが、それよりも親会社のキャッシュ創出に貢献し、それをもとに親会社が投資して事業を成長させるほうが、結果的に我々の事業も伸びる。だから我々は、徹底的にコスト削減を目指す。利益は出さない。それを親会社に認めてもらった。BPO事業会社としてやっていくためには、実はこうした取り組みも必須だった」

 それに伴い、同社では経営指標や部門の評価軸、さらには従業員の評価軸も変えたという。

「たとえば部門を評価する際も、利益の数字ではなく、お客さま(=BU)のコストをどれだけ下げられたか、またそれが当初の見込みに対してどれだけ達成できたのかを見ており、それによって個々人の賞与も決めている。グループ会社をたくさん抱えている企業集団も多くあると思うが、その中で各構成企業の位置付けを明確化し、評価の指標とするKPIそのものを会社によって見直す、あるいは必ずしも同一のKPIである必要はないという前提に立つことが肝要だ」

 そしてもう1点、和田氏は「BPO事業会社として、自分たちを追い込む必要がある」と強調する。

「コスト低減を目指すBPO事業会社は、毎年毎年、効率改善を絶対に進めなければならない。そのために我々は、継続したコスト低減をお客さまにコミットしている。具体的には今、同じ業務範囲、業務量であれば、年に3%の効率改善を実現しますとお伝えしている。これによって我々自身が常に効率改善に取り組むモチベーションを維持できるようになると考えている。利益は出さない、3%の低減をコミットする。この2つの姿勢を明確にしたことで、お客さまからの評価も上がってきているのではないかと思う」

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日立グループ全体のBPMへの期待

 情報・通信システム事業のBUを対象にBPO事業を始めた日立ICTビジネスサービスは、現在もこの枠組みを日立グループ内でさらに広げていく活動を続け、BPOプラットフォームへの変革を進めている。

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