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  • 2019/04/26 掲載

佐藤優氏が自身の体験から獲得、人脈は「知」のセーフティネットだ

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自分の経済状況や出費の傾向を把握し、その中で賢くお金を使い、「浪費」を防ぐことは持続的な知的生産を可能にする。これはいわば自己完結型の経済の話だが、周りの「人間関係」を大切にすることも重要なセーフティネットとなりうる。なぜ人脈が「知」のセーフティネットになりうるのか。作家で、元外務省主任分析官の佐藤 優 氏が自身の経験を通じて得たものを解説する。

作家 佐藤 優

作家 佐藤 優

1960年東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了。外務省に入省し、在ロシア連邦日本国大使館に勤務。その後、本省国際情報局分析第一課で、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、起訴され、2009年6月執行猶予付有罪確定。2013年6月、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『人をつくる読書術』(青春出版社)、『勉強法』(KADOKAWA)、『僕らが毎日やっている最強の読み方』(東洋経済新報社)など、多数の著書がある。

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作家・元外務省主任分析官 佐藤 優 氏
(写真:榊智朗)

持続可能な知的活動は「人脈」次第

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 持続可能な知的活動には、「経済」の要素が分かち難く結びついている。

 自分の経済状況や出費の傾向を把握すること、そのなかで賢くお金を使い、「浪費」をなくす。こうしてインプットにも適切にお金をかけられるようにすることで、持続的な知的生産が可能になる。

 これは、いわば自己完結型の経済の話だが、経済には、別の側面もある。それが人間関係だ。誤解を恐れずに言えば、周りにいる人を1つの「財」と見なすことで、知的活動のインフラが、さらに整備されるのである。

 これは自分の利益のために、人をコマのように使うという話ではない。

 人間は生来、「社会的動物」であり、どれほど一人でいることを好む人でも、しょせん一人ぼっちでは生きられない。良好な友人関係、良好なパートナー・家族関係、良好な仕事関係などなど、自分が安心して暮らし、働くことができる人間関係も、知的生産の重要なインフラといえる。

 そして、自分が安心して暮らし、働くことができる人間関係を築くには、当然、コミュニケーション能力が欠かせない。

 コミュニケーション能力の乏しい人は人間関係が希薄になり、いくら頭がよくても、知的生産の経済的土台が脆弱になりがちである。知的生産というと、ひたすら自分を磨き、アウトプット力を高めていくことのように思えるかもしれないが、大事なのは、それだけではないのだ。

人生の「セーフティネット」を整備する

 世の中には生涯シングルを決め込んでいる人もいるようだが、どんな形でも誰かと生活を共にすることで、人生の安定度は格段に増すのは事実だ。

 プライベートの人間関係は、知的活動のインフラのなかでも、どちらかというと「セーフティネット」的な役割を果たすといっていいだろう。一人ではどうにもできない状況になったとしても、誰かと一緒ならば助け合って乗り越えられる。そのような関係性を築いておくことで、知的生産の持続可能性が守られる。

 人と一緒に暮らす形は、現行の制度で定められた結婚とは限らない。同性のパートナーシップもあり得るし、気の合う仲間同士でシェアハウスに住むのもいいだろう。ときどき飲みに行く友達程度では不十分だ。必要なのは、現実的に、金銭面・生活面で支え合えるパートナーや仲間である。

 若いころは一人も苦にならないかもしれないが、年を重ねるにつれて、「一人」が「孤独」になっていく。元気だった両親の老いが目立ち始め、自分より先に亡くなることが現実味を帯びてくると、孤独がいっそう身にしみ、がぜん婚活に積極的になる男女も多いと聞く。

 とはいえ、生涯をともにできる誰かと、すぐに出会えるとは限らない。

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佐藤氏は仕事の中では決して得られない人間関係の大切さを説く
(Photo/Getty Images)

 孤独を感じ始める前から、結婚であれ、もっと広い意味でのパートナーや仲間であれ、ゆくゆくは誰かと生活をともにしていくという想定で、プライベートの人間関係を充実させていったほうがいい。

 また、人間関係が希薄になると、どうしても視野が狭くなり、極端な考えに走りやすい。自分一人の世界に閉じこもるうちに、自分とは異なる意見に対する寛容性や、人として適切なバランス感覚を失ってしまうのだ。実際、ライプニッツやカントなど、生涯をシングルで過ごした哲学者には、極端な思想の持ち主も少なくない。

 すでに一人暮らしに慣れてしまっていると、他人と一緒に暮らすことがイメージしづらいかもしれない。生活上、思わぬところで衝突する可能性も十分にある。世の中には、誰一人として自分とまったく同じ感覚や思考回路をもっている人はいない。どれほど気の合う相手でも、何かしら違いがあるものだ。

 その違いを乗り越えて誰かと一緒に暮らすには、ある程度の「鈍感力」が必要である。生活上のささいなこと、たとえばお風呂に他人の髪の毛一本落ちていても我慢できない人、流しに皿1枚残っているだけでも許せない人などは、「ま、いっか」と許せる心を養ったほうがいいだろう。

 誰かが間違っているわけでも正しいわけでもなく、ただ「違う」のだと理解することだ。ひょっとしたら自分だって、知らないうちに人の感覚に障ることをしているかもしれない。要するに、「お互い様」と思えばいいのである。

【次ページ】お金を「くれる」友人が何人いるか?

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