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  • 2019/05/21

広報は“人事と採用”の要に? リンモチが「価値観の共有」に3億円払う理由

東証一部上場をはじめとする大企業のものだった広報機能を、新規事業やスタートアップのような小さな組織が活用し始めています。「経営戦略としての広報」が必要な理由とその実践方法などを解説してきた前編に続き、後編では、「インターナルコミュニケーション」や「人材採用」など、「人事」の要として広報を活用する方法や事例を紹介します。

リープフロッグ CEO 松田純子

リープフロッグ CEO 松田純子

「広報の力で企業競争力をアップする」広報コンサルティング会社LEAPFROG 代表。
伴走型、人材育成型による、広報組織の立ち上げから事業戦略と連動した広報戦略設計、エグゼキューション支援まで実施。「広報の目的」=「企業成長」と捉え、新人、独り広報の会社でも最速で効率よく広報部門を立ち上げ、企業成長に資する広報活動が行えるよう支援。早稲田大学卒業後、大手人材会社、求人広告エン・ジャパンでのコピーライターを経て、ITベンチャーのワークスアプリケーションズ、博報堂系デジタル広告会社スパイスボックスで10年以上にわたって広報業務に従事。一貫してコーポレート、インターナル、採用コミュニケーションのすべてに関わりビジネスゴールの達成を支える。2018年、スパイスボックス経営戦略室マネージャーに就任後、2019年に起業。プロフィールはこちら

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なぜリンクアンドモチベーションは社内広報に3億円かけるのか、グループデザイン室の広報・秘書ユニットマネジャー川村宜主氏の考えとは
(写真:同社提供)


経営を意識した広報活動で最初にすべきこと

 前編では、「経営戦略としての広報」が必要な理由とその事例を解説してきました。

 今回は、まず経営や広報活動を行う際に考えるべきことを説明します。

 「経営戦略としての広報」の視点で考えると広報活動を行う際に“最初にやらなければならない仕事”は明白です。

 米国でPRの教科書と評される『Effective Public Relations』(邦題:体系 パブリック・リレーションズ)では、広報活動を「組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能」と定義しています。

 前編での解説を踏まえると、今の時代に合わせて「パブリックと関係性を構築」するための第一歩は、自社(事業)のアイデンティティを定義、言語化し、それを顧客や市場、社会に示すことと言えそうです。

 ステップとしては、経営者と広報担当者が密にコミュニケーションを取りながら、自社(事業)の「アイデンティティ」を定義するところからはじめます。それを顧客や市場、社会などさまざまな視点を意識しながら適切な言葉に置き換えます。

 その内容をメディアを含む社内外のステークホルダーに、それぞれ適切な方法で伝えていくのが広報の役割と言えます。広報の仕事というと、とにかく「メディアとの関係づくり」「取材誘致」が最初に思い浮かぶ方もいるかもしれません。

 しかし、その前には必ず会社として「伝えるべきこと」を明確化することが必要です。行き当たりばったりで商品やサービスの情報発信だけを続けていると、情報に一貫性がなくなり中長期的には顧客や市場、社員の信頼さえ揺らぐことになりかねません。

 伝えるべき「言葉」や「ストーリー」が決まれば、社内イベントでトップは社員に何を語りかけるべきか、新製品に関するプレスリリースをどう書くべきか、求職者向けにどんな内容を発信すべきかは自然と定まってきます。こうして統一されたメッセージ性を持つストーリーが、社内外に一気通貫で伝わっていった時の効果は、小さな組織であればあるほど大きくなることは想像に難くありません。

事業運営を担う社内メンバーの「理解」と「共感」

 社内外のステークホルダーに自社のアイデンティティを伝え合意形成を図ると書きましたが、広報を取り巻く社内外のステークホルダーを整理すると、下図のようになります。

【広報業務の種類別ステークホルダー例】
社外広報
・顧客(潜在顧客含む)
・投資家
・株主
・協業企業
・市場、(各種関係団体、報道機関、生活者などを含む)社会 など

社内広報
・社員、アルバイト、契約社員、協業者など、事業を担う内側のメンバー

採用広報(注1)
・潜在求職者、求職者

注1:「人手不足倒産」の言葉が出るほど採用難の時代にあって、各社とも採用広報を社外広報から切り出して注力し始めている。

 こうして見ると、よく分かることがあります。それは、広報を取り巻くステークホルダーは、社外の機関や人に限らないということ。むしろ、事業のゴール達成に向けては、事業を担うメンバーがその意義を理解したり、意義に共感し、同じ方向に向かって進んでいることが何よりも重要なはずです。

 つまり、先ほど説明した会社・事業のアイデンティティを伝える先として最も重要なステークホルダーの一つは、社内の人間です。実際に社内広報活動(インターナルコミュニケーション)は、事業成長に対して大きな役割を果たしています。

 社会情報大学院大学教授の柴山慎一氏は共著書「広報コミュニケーション基礎」のなかで、インターナルコミュニケーションの効用を端的に以下のようにまとめています。

  1. 社員の成長を促進し、会社を成長させる
  2. 社員の生産性を高め、会社の業績を高める
  3. 社員を広報・PRパーソンとして位置付ける

 もし広報活動を「メディア露出」に限定して考え、インターナルコミュニケーションをまったく行わない場合、これだけのメリットを享受することができなくなり大きな損失となります。特に、新規事業やスタートアップに参画する人は、地位や金銭的メリットよりも事業体が持つストーリーに共感して参画している可能性が高いはずです。

 こうした人材に最大限能力を発揮してもらうためにも、トップや広報は繰り返しさまざまな角度からアイデンティティを言語化したストーリーを伝え続ける必要があります。それがその組織独特のカルチャーを生み、社員を結びつけて事業成長を推し進める強い会社を作っていくのです。

社内コミュニケーションに年間3億円を投資するワケ

 トップの創業時からの強い思いを反映して、社内のコミュニケーション施策に注力しているのが2000年に設立されたリンクアンドモチベーションです。企業競争力の源泉と定義する「従業員エンゲージメント」を向上させる各種研修や調査サービスなどを提供しています。

 同社では、従業員エンゲージメントを向上させるために最も大切なこととして社内コミュニケーションを位置付けており、管理本部機能を持つグループデザイン室が中心となって社内コミュニケーション施策に年間3億円を投じています。

 その投資の中身は、目的の異なる複数の社内メディアや3カ月に一度のグループ総会、同社が大切にする価値観を言語化した「DNABook」の理解度テストなど多岐にわたります。

 グループデザイン室の広報・秘書ユニットマネジャー川村宜主氏によると、創業者の小笹芳央氏が2002年に自ら始めたメルマガを元にして2005年に「DNA Book」が作られました。「DNA Book」には全110ページにわたって同社のサービスを形作る思想や哲学、企業理念、経営哲学、ロゴの由来などが記載されています。

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リンクアンドモチベーションでは、創業者が執筆した「グループの変遷」「次世代に継承したい考え方」などを記した冊子を作成。共通言語を紡ぎあげて意味共有度合いを高め、共通の思考フレームを持つことを目指しているという
(出典:リンクアンドモチベーション Webサイト)

 「このDNA Bookが、社員が同じ価値観を共有するための基盤となっているため、役員まで含めて年に1回理解度テストを行っている」(川村氏)といいます。社内コミュニケーション施策の効果は自社ツールである「エンゲージメント・サーベイ」(従業員エンゲージメント状態を偏差値で算出)で測っており、同社のスコアは非常に稀な「AAA」だそうです。こうした社内体制の構築が同社の短期間での成長を後押ししていると考えられます。

【次ページ】なぜ「採用広報」が注目度急上昇なのか

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