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  • 2019/05/17 掲載

メルカリやビズリーチも注力 、「経営戦略としての広報」が必要なワケ

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近年、それまでは東証一部上場をはじめとする大企業のものだった広報機能を、新規事業やスタートアップのような小さな組織が活用し始めています。ただし、その活動内容に四苦八苦している企業も少なくないようです。本稿では、広報活動を始めたいと考える新規事業の責任者やスタートアップ向けに、「経営戦略としての広報」が必要な理由とその実践方法などを解説します。

リープフロッグ CEO 松田純子

リープフロッグ CEO 松田純子

「広報の力で企業競争力をアップする」広報コンサルティング会社LEAPFROG 代表。
伴走型、人材育成型による、広報組織の立ち上げから事業戦略と連動した広報戦略設計、エグゼキューション支援まで実施。「広報の目的」=「企業成長」と捉え、新人、独り広報の会社でも最速で効率よく広報部門を立ち上げ、企業成長に資する広報活動が行えるよう支援。早稲田大学卒業後、大手人材会社、求人広告エン・ジャパンでのコピーライターを経て、2007年からITベンチャーのワークスアプリケーションズ、博報堂系デジタル広告会社スパイスボックスで広報業務に従事。一貫してコーポレート、インターナル、採用コミュニケーションのすべてに関わりビジネスゴールの達成を支える。2018年、スパイスボックス経営戦略室マネージャーに就任後、2019年に起業。 プロフィールはこちら

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現メルカリ取締役社長兼COO 小泉文明氏が入社時から注力していたのは「広報」だった
(写真:編集部撮影)

新規事業やスタートアップが「広報」に注力すべき理由

 2018年11月、都内でPR Tableが「PR3.0」と題した大規模な広報・PRイベントを実施し、経営者や広報関係者など、1300人に及ぶ人々が詰めかけました。主催者によると日本でこうした大規模な広報関連イベントが実施されたことは過去に例がなく、企業による広報・PR分野への関心の高まりがうかがえます。

 実際に、日本パブリックリレーションズ協会によると「PR業界の市場規模」は近年右肩上がりで成長しており、2016年度は調査開始以降初めて1000億円を突破、2018年度は推計1290億円と、大きく伸長しています。特に最近は、大企業に加えて新規事業やスタートアップなどの小さな組織までもが広報活動に力を入れ始めています。

 その背景にあるのが、生活者を取り巻く情報環境の変化です。総務省が発表している「情報通信白書(平成30年版)」によると、2010年には9.7%に過ぎなかったスマホの世帯保有率が2017年には75.1%に達しています。

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スマートフォンの世帯保有率の変化
(出典:総務省)

 そのスマホを通して最も閲覧されているのがSNSです。20代にかぎれば97.7%が主要SNSのいずれかを利用している(平成29年版同白書)ほどで、スマホやSNSを通して私たちが日々受け取る情報量は猛烈な勢いで増え続けています。

 しかし人が消費可能な情報量は変わりようがなく、昨今ではほとんどの情報が物理的に受け流されています。こうした変化を踏まえると、数多くある情報に埋もれさせることなく、自分たちのことを正しく理解してもらうために、企業が各ステークホルダーに向けて戦略的に情報発信を行う重要性がよく分かります。

メルカリに学ぶ「戦略的広報」とは

 昨今では創業期から企業成長を意識して広報活動に力を入れる組織が増えています。今や日本を代表するメガベンチャーのメルカリも、創業時から戦略的に広報活動を行ってきた会社の一つです。2013年、山田進太郎氏によって創業されたメルカリに同年12月、現取締役社長兼COOの小泉文明氏が参画しました。

 小泉氏はコーポレート組織の拡充を担っての入社でした。しかし、メルカリのPRグループマネージャー矢嶋聡氏によると「会社をスケールさせるために必須だったため、当初から『採用』と『広報』にコミットしていた」そうです。

 メルカリの成長の軌跡を追った書籍「メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間」(日経BP社)には、小泉氏が加わって以降、アプリのダウンロード数や流通額、CM開始など、市場の信頼や期待を醸成するためにさまざまな話題を作って情報発信していた様子が描かれています。

 メルカリでは、2017年にLINE広報・マーケティング部門のトップだった矢嶋氏が入社することで広報体制が拡充されていますが、その間際まで小泉氏が広報部門を直接指揮していました。創業当時から会社をスケールさせることを念頭に、トップ自ら先頭を切って社会とコミュニケーションを図っていたのです。

 2009年創業で転職サイトなどを運営するビズリーチでは、サービスの発表前からサービスの広報戦略を立て始めていました。

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ビズリーチが創業時に実施した「ピンクスリップパーティー」
(出典:ビズリーチ Webサイト「Reach One」)

 「ビズリーチ」の発表時には、米国金融街で流行していた「ピンクスリップパーティー」(ピンクスリップとは解雇状のこと。お酒を片手にヘッドハンターとピンクスリップを受け取った求職者がつながるパーティ)をイメージした、華やかなメディア向けイベントを実施しました。

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ビズリーチ
広報室
田澤玲子氏
 つまり、同社は世の中のトレンドに絡めながら、「サイトを通して即戦力人材を採用できる」というインターネットサービスの世界観をリアルに表現したのです。

 ビズリーチ広報で当時このイベントを企画した広報室の田澤玲子氏によると、イベントは70社近いマスコミから取材され「ニュースがTVで流れる間に登録者数が目に見えて増えていった」ほど認知度の向上に効果があったそうです。

 そして何よりも大きかったのが、「この初期の成功によって、会社の中にPRは経営戦略の柱の一つというDNAが生まれたこと」だと言います。

 田澤氏は「今では新規事業の立ち上げでは事業の企画段階から必ずPR視点を入れますし、協業を行う際も、事業戦略と共にPR戦略を提案することが多くあります」と説明します。

【次ページ】事業運営を担う社内メンバーの「理解」と「共感」

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