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  • 2019/08/14

矢萩邦彦×徳岡晃一郎 勉強とは「楽しくてテンションが上がる」ことだ

教育を1つの軸として、報道、人材育成、コンサルティング、カウンセラーなどさまざまな領域で活動する矢萩邦彦氏。20年以上前からパラレルキャリアの道へと歩んだ同氏が、自身の生涯を通して追究し続けている“探究的な学び”とは何か。同氏が経営する知窓学舎で、受験の合格だけを目指さない理由は?子どもを育てる上で、そして自分自身を成長させる上で知っておきたい“学びの真髄”をライフシフトの専門家、多摩大学大学院教授・研究科長 徳岡晃一郎氏が聞いた。

構成:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎

構成:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎

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矢萩氏が経営する塾「知窓学舎」にて

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1995年に起きた3つのできごとが、パラレルの道へと歩ませた

多摩大学大学院教授・研究科長 徳岡 晃一郎氏(以下、徳岡氏):人とは違う、特異なキャリアを歩まれてきたと思いますが、まず矢萩さんがパラレルキャリアになったきっかけを教えてもらえますか?

知窓学舎 塾長 矢萩 邦彦氏(以下、矢萩氏):私がパラレルキャリアを始めたのは、1995年に起きた3つの事件がきっかけです。当時私は東京の大学に在籍していました。

 1つ目が阪神淡路大震災。地震の翌日に大学に行ったら、その死者数で賭けをしている学生がいたのを見て衝撃を受けました。「義務教育、失敗しているじゃないか!」と。そして「こんな感性の人たちが社会に出て、いずれ決定権を持っていくのは本当にまずい」と強く思ったのです。

 そんな状況を草の根的にでも変えようと始めたのが塾講師のアルバイトです。バイトながら成果を出すことができ、社員として登用されました。これが、私が「教育」というキャリアを始めたきっかけです。

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実践教育ジャーナリスト・スタディオアフタモード代表取締役CEO・知窓学舎塾長・教養の未来研究所所長・リベラルコンサルティング協議会 理事
矢萩 邦彦氏

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、一つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を目指し探究するアルスコンビネーター。「探究型学習」「想像力教育」の第一人者。一万五千人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに学校・民間を問わず多様な教育現場で出張授業・講演を展開している。代表取締役を務める株式会社スタディオアフタモードでは人材育成・メディア事業に従事、主宰する教養の未来研究所では「教養と豊かさ」「遊びと学び」「キャリア編集」をテーマとした研究を軸に、研修・コンサルティング・監修顧問を手がける。

 2つ目が地下鉄サリン事件。当時の私にとってオウム真理教は、上層部はさておき末端の信者は救いを求めている人であって、“悪”だとはまったく感じませんでした。でも、メディアはそれをひとからげにして“悪”とみなす。その報道の仕方に違和感を覚えて、直接話を聞くためサティアン(宗教施設)に向かいました。私の初めての取材です。

 信者の人たちは事件後、メディアに追いかけられて、上層部とは連絡がつかなくて、心底困っていました。彼らと直接対話し、そのリアルな心境を知ることができたのです。

 しかし取材を終えた私を待っていたのはテレビカメラでした。私は取材した意図を言葉を尽くして説明しましたが、翌日のニュースではほとんどカットされ「興味本位の学生」として紹介されていました。そういった編集をされるものだと知ってはいましたが、改めて愕然としました。

 この経験から、「メディアの内側に入り込んで自分が発信しなければ、メディアリテラシーを子どもたちに教えることはできない。“中の人”が教える国語や社会科に意味はあるはずだ」と思い、ジャーナリストになりました。「報道」というキャリアのスタートです。

 3つ目がWindows 95の登場です。当時はちょうどバナー広告、アフィリエイトが出始めたころでした。私が持っていたホームページにも依頼がいくつか来て、それをきっかけにブランディングやライティング、編集という領域に興味を持ち、手をつけ始めました。「執筆/編集」がキャリアに加わったわけです。

 また1995年以前から音楽活動もしていたので、「音楽」「教育」「報道」「執筆/編集」とたくさんのわらじを一気にはいて、私は社会に出ることになりました。それからそれぞれの活動を深め、さらに広げながら現在に至るわけです。

問題発見のカギは「倫理」である

徳岡氏:きっかけを聞いていると、矢萩さんは「世の中の問題を感じ取る力」を多く持っていると思いました。しかも、感じ取るだけではなく、なぜそうなっているのか調べるため、その世界へ潜入するという行動にもつなげている。普通は、問題にも気づかない。仮に気づいたとしてもその世界には入らない人が多いでしょう。一体、何がそんな矢萩さんを形作っていると思いますか?

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徳岡 晃一郎 氏
1957年生まれ。日産自動車人事部、欧州日産を経て、2009年よりフライシュマン・ヒラード・ジャパンのSVP/パートナー。多摩大学大学院教授・研究科長。野中郁次郎名誉教授との共同研究によるMBB(思いのマネジメント)の第一人者。2017年よりライフシフトCEOを兼務。

矢萩氏:“意味付け”だと思います。私の家は古く厳しい家庭でした。さらに中学で私は不登校も経験しています。小さいころから自分自身への“意味付け”を他者があまりしてくれない環境でした。だから「なぜ自分が存在しているのか」「自分が言ったことは果たして本当に間違っているのか」という裏付けを改めて取りたかったのでしょう。もちろん、幼少期の環境だけが自分のキャリアを作ったとは思っていませんが。

徳岡氏:企業に対して研修を行っている立場で思うことは、企業の中ではスキル・ノウハウや問題解決力は教えていて、たしかにそれは生産性の向上にも役立つのですが、“意味を問い直す力”は教えていないということです。

矢萩氏:最近、ある進学校に授業のお手伝いで行きました。「この学校の生徒、一体何が問題なんですか?」と先生たちに聞いたら、「うちの子たちは、どんな問題でもすぐ解決する。次の日まで時間を与えれば大人顔負けの解決策を持ってくる」と言う。でも、「問題が発見できないんですよ」と。

 この“問題発見”の根幹は、「倫理」が担っていると私は考えています。似て非なるもので、「道徳」という言葉がありますが、道徳は外側から規定するものです。一般的な基準に則して「やるべき」「やらない方がいい」とか。

 一方で、自分自身で物事への判断を決定するのが倫理です。自身で考えて、「法律では禁止されているけれども自分は良いと思う」とか、逆に「法律ではよしとされているけども、自分はそれはやらない方がいいと思う」とか。

 まず根底に、自分がいいと思うかどうか。“真善美”に対するどういう思いがあるのか。それと他者や環境を比べて、自分はどういう選択をするのか。小さいころからその訓練を行っていると、たぶん自然に思考力というのは出てくるはずです。

【次ページ】合格を目指さない塾を経営する理由、学びは“アップデート実感”があればいい

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