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- 2019/08/16 掲載
リクナビ問題でスルーされがちな「提供を受けていた企業側の問題」
『リクナビDMPフォロー』の何が問題だったのか
廃止に追い込まれたサービス『リクナビDMPフォロー』では、前年度にリクナビに登録した学生の行動ログを解析し、今年度の登録学生の行動ログと比較、「内定辞退」の可能性を算出し、提供していた。詳細については、新聞やネットメディアが詳細を報じている。ここでそれを繰り返すことはしないが、問題となっている点だけ整理しよう。
- 内定者個人を特定して辞退率のスコアを企業に提供
- 個人情報保護委員会に問題があると指摘される
- 個人情報の利用について同意を取る手順に不備があった
- 同意手順の不備を解消するためプライバシーポリシーを修正
- 情報提供は違法という認識はないが当該サービスは廃止
一部のメディアでは、辞退率は「個人を特定したものではない」といった解釈による報道もあるが、企業に提供されていた情報は、「特定の学生に対して」辞退率を計算したものだった。
スコアは、リクルートキャリア関連サイトの利用履歴と内定者個人が名寄せされていたので、個人情報であることは明白である。また特定企業の内定情報やそれを辞退する可能性という、利用方法やルールが確立されていない情報であるため、より明確な同意確認が必要となるケースだ。個人情報保護委員会は、この点を問題視した。
包括的な同意で有効な範囲の難しさ
スコアを算出するための機械学習のデータは匿名化されていた。これをもって「問題ない」とする意見もあったが、匿名化されていたのはスコア算出のための学習モデルを作成する作業についてだ。今回リクナビが企業に提供していた情報は、特定の学生の関連サイトの閲覧履歴などを基に作成した分析の結果についてである。それはつまり、Aという学生がBという企業の内定を辞退する可能性はどれくらいかというふうに、「名寄せされた情報」だ。
なお、リクルートキャリアは、『リクナビDMPフォロー』の提供目的を、次のように説明している。
「辞退率を導き出したのは、内定を辞退しそうな学生を事前に把握して、企業が『フォロー』などコミュニケーションを取るためだった。採用の可否の判定には使わない同意書を得た上で事態率を提供していた」
検証不能な企業との同意書の限界
たしかに、プライバシーポリシーなどには第三者提供を含むデータの利用を明記していた。しかし、実際に第三者に個人情報を提供する場合は、利用目的を明示した上で個別に同意を得るようにするのが一般的だ。「サービス向上のため第三者に提供することがある」と明記するだけで、あらゆる情報の利用許可を得たとは言えない。
【次ページ】悪いのはリクルートキャリアだけなのか?
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