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  • 2019/12/27

アリババの「フーマフレッシュ」は何がスゴイ? 売上が既存スーパー4倍のワケ

第5回:中国イノベーション事情

現在、中国では最新のテクノロジーを活用した新しい小売業態「新小売(ニューリテール)」が注目を集めている。中でも、アリババが展開する「盒馬鮮生(フーマフレッシュ)」の勢いが好調だ。「30分配送」や「フードコートの併設」などの印象が強いが、それだけでは凄さの本質を見誤かねない。長年、多くの企業が解けずにいた問題を解決する糸口となる可能性があるからだ。

ITジャーナリスト 牧野武文

ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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盒馬鮮生(フーマフレッシュ)の店内は、装飾がほとんどない。一般的なスーパーでは、価格変動の大きな食材順に野菜、魚、肉と来店客が回遊するレイアウトを取る。商品を見ながら献立を考えられる。フーマフレッシュでは、種類別のゾーン配置をし通路も広くとっている。ピックアップスタッフの効率を考えてのことで、あくまでも「倉庫」が基本になっている
(写真:筆者撮影)

アリババが提唱する「新小売」の“本当の意味”

 中国のアリババが展開している新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ:以下、フーマ)は、最近日本でもよく紹介されるようになった。

 生鮮食料品を中心にしたスーパーでありながら、半径3km以内の地域には無料で30分配送をすることが売りの1つだ。また、フードコートが併設されており、店内で販売されている食材を使った料理を食べることも可能だ。

 この形態は、米国で注目を浴びている「グローサラント(グロッサリー+レストラン)」に宅配ECを追加したものだと言える。アリババは、2019年内に中国全土で300店舗を出店する計画を進めている。

 しかし、これを「宅配もする新しいスーパー」と考えてしまうと、過小評価になってしまうかもしれない。なぜなら、アリババが提唱する「新小売(ニューリテール)」は、成長の限界を迎えたECが、小売業の未来の姿を模索する挑戦でもあるからだ。


ECとの相性は良くない? 巨人たちも踏み込めない領域

 アマゾンやアリババなどのEC分野の世界的な企業が直面している最も大きな課題は、その成長が頭打ちになっていることだ。

 先進国の都市部でほぼ普及しつつあるため、成長する余白は、農村や途上国に移っている。一見、数字としては成長を続けているものの、人口密度の低い地方への配送は、配送効率が低いため、利益率の面で苦しい状況にある。

 この天井を突き抜けて、EC業界がさらに成長を続けていくためには、今までECが扱いづらかった生鮮食料品を含む日用食品の市場に進出をしていくほかない。

 「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」(経済産業省)によると、日本国内の食料、飲料、酒類の市場規模は64兆円以上。このうちECでの取引は約1.7兆円で、EC化率はわずか2.64%でしかない。それどころか、EC全体の市場規模ですら、18兆円であるため、食料品市場がいかに巨大であるかがわかる。

配送物流の課題を解決する宅配方式への変革

 こうした状況は、世界各国でも変わらない。ECにとって飲食品、特に肉、野菜、魚などの生鮮食料品をどのようにして扱うのかが大きなテーマだといえる。

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生鮮食料品を扱えるようになればECの突破口となる
(Photo/Getty Images)

 ここで大きな課題になるのが、配送物流だ。

 ECや配送を委託される宅配企業の多くが「集中物流方式」をとっている。広域をカバーする物流センターで仕分けして、各地区の配送拠点に配送し、そこから各戸に配送をする。この集中物流方式のすべてに冷蔵施設を整え、温度管理が必要な生鮮食料品を扱うのは現実的とはいえない。

 消費者から見ても、生鮮食料品を宅配便で届けられるのは、ユーザー体験が悪い。宅配便は早くても翌日配送、通常は翌々日配送だが、明日や明後日の献立を先に決めて、食材を注文しておくというのは、生活スタイルになじまない。夕方になって、自炊をやめて、外食で済ませてしまうというのもよくあることだ。

 また、生鮮食料品は不在時に大きな問題となる。宅配ボックスに入れることは、腐敗の恐れがあるためできない。持ち帰って再配達という場合も鮮度面での問題が発生する。

 集中物流方式の課題を解決するために生まれたのが「前置倉方式」だ。テンセント系の生鮮EC「毎日優鮮」が採用している。

 この前置倉方式の考え方は、「配達先に近い場所に、小型の倉庫を多数置いて、市内全域をカバーする」というものだ。1つの倉庫は、だいたい半径3km程度の地域をカバーする。このような小型倉庫を多数配置していき、蜂の巣のように市内全域をカバーするというものだ。各倉庫までは、大型の配送車で補充商品の配送を行う。

 消費者が、スマートフォンを使って、生鮮ECに食材を注文すると、配送地域の倉庫に指示が伝わる。それを受けて、配送員がバイクなどを使って配送する。配送時間は、注文をしてから1時間以内が目安となる。

 この短時間配送に意味がある。消費者にとって「注文をしてから待っていられる時間」であるために、不在率が極端に低い。この利便性から、毎日優鮮は20~30代の単身者を中心に利用されている。

 しかし、この前置倉方式にも1つ大きな課題がある。生鮮食料品は、品質や鮮度の個体差が大きい。しかし、この方式では事前に確かめることができない。そのため、ファミリー層や中高年は、生鮮ECの利用になかなか踏み切れないという。

【次ページ】既存の課題を解決できる、フーマの独自戦略とは?

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