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  • 2020/01/13

空き家大国ニッポン、やはり「家は買ってはいけない」のか?

「両親が住んでいた家に、今は誰も住んでいないが、どうしたらいいだろう?」「家って買ったほうがいいの? それとも賃貸がいいの?」など、ビジネスパーソンに家の悩みはつきものだ。昨今、空き家が増えていると言われているが、ならば家が欲しい人に空き家を売れば、需要と供給がマッチするのではないか。しかし、坂口 孝則氏によれば、事態はそう簡単にいかないようである。それはなぜか? 坂口氏に解説してもらった。

調達・購買コンサルタント 坂口 孝則

調達・購買コンサルタント 坂口 孝則

調達・購買コンサルタント。未来調達研究所株式会社取締役。講演家。2001年、大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、 資材部門に従業。2012年、未来調達研究所株式会社取締役就任。製造業を中心としたコンサルティングを行う。『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ 0円iPhoneの正体』(すべて幻冬舎新書)、『レシートを捨てるバカ、ポイントを貯めるアホ』(朝日新聞出版) など著書多数。

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日本の空き家は増え続ける一方だ
(Photo/Getty Images)


空き家問題が世間を騒がせている

 個人的な話ですが、私の実家は佐賀県にあります。佐賀駅から実家に移動していると、小学生の頃の記憶とは違い、だいぶ閑散としたのがよくわかります。商店街にはシャッターが閉じたままの店舗が目立ち、なにもなくなってしまいました。

 郊外にあるショッピングモールは、かろうじて集客を保っています。ただ、中心地から郊外に行くまでに、多くの空き家を見かけます。実家の近くにもたくさんの空き家がありました。母親に様子を訊くと、こんなふうに言っていました。

「あそこは、おばあちゃんが亡くなってから、放置されている」
「買い手を探すって言っても、誰も買わないだろうしねえ」

 実家に帰ると「この家はどうなるのだろう」と考えます。残念ながら私は東京に住んでおり、都内から移って子どもの生活基盤を変更するのは現実的ではありません。でもこれは私だけの問題ではありません。いま日本の多くの地域で空き家が問題になっています。

 ある研究機関によると、現在、空き家率は10%強(内、賃貸用が約50%、一戸建てが約30%)、2033年には約30%になると言われています。両親の死後、親が住んでいた一戸建てが空き家になれば、そこには遺族間の相続問題が生じます。「うちの両親は財産が少ないから相続問題は起きない」と思っているあなた。それは誤りです。実際には相続額が少ないほうが、相続争いは起きています。

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日本の空き家率

 あなたの両親が家を残して亡くなったら、それをどのように遺族で分割しますか? もしも誰かが住むとなれば、その人が相続したことになりますから、他の遺族は家を相続できません。1000万円の価値のある家を相続したのが1人、でも、そのほかに相続権利者が3人いるとすれば、その家に住んだ人は、3人分の750万円相当を渡さねばなりません。遺族の1人が住むにしても、そのリフォーム代は誰が出すのか。

 空き家を壊して更地にしても、すぐに売れるかはわかりません。しかも一度壊すと住宅地ではなくなるので固定資産税が上がります。その負担は遺族の誰が担うのでしょうか。すべてを放棄しようにも、日本という国は土地を寄付として受け取ってはくれません。だから空き家のまま放置されるケースが散見されているのです。

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空き家は、住むのも売るのも壊すのもお金がかかるので、そのまま放置されることが多い
(Photo/Getty Images)

少子高齢化問題

 母親に質問してみました。

「うちの隣も空き家になったみたいだけど、誰か定期的に来てるの?」
「たまに息子さんが掃除しに来ているみたいだけど、大変そうねえ」
「売ればいいのにね」
「誰も買わないでしょう」
「静かでいいじゃん」
「こんなになにもないところに来ないでしょう」

 母親の言葉には一つの真理があります。私が幼いころ遊んだ近くの商店街は、いまではシャッター街になっています。「商店街のほうが多様性は保たれる」と言う人がいますが、大型のショッピングモールの品揃えはあきらかに多様で、あきらかに便利です。そのリアルに多くの地方は抗えず、たくさんの商店街が消えていきました。しかも商店街に出向く人の数も減っています。人口減少です。

 なぜ空き家が増えるのでしょうか。都心の一等地では、一軒家がずっと空き家のままにはなりません。その土地を買いたい人や、商業店舗を構えたい人がたくさんいるからです。人口がそれなりに多ければ潜在的な需要も多いはずです。

 しかし誰もが知っているとおり、現在日本は少子高齢化問題に突き当たっています。下の図を見てみてください。ただでさえ少ない0~14歳人口は上昇の兆しを見せず、下落したままです。さらに労働人口に近い15~64歳の人口も急激に減っています。その一方で、65歳以上の人口はゆるやかな横ばいを示しています。

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日本の将来推計人口

空き家に勝手に住めるわけじゃない

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都道府県別将来の総人口の指数
 都道府県別将来人口推計も見てみましょう(右図参照)。網のかかったところが人口をつなぎとめるであろうトップ10の都道府県です。東京は2045年も現状維持となっています。一方、岡山県はトップ10とはいえ80%台。でも他の都道府県が30%、40%と人口を減らす中、80%は立派です。

 自身のライフプランの中心にある場所が、今後、どのような人口推移をたどるかまずは確認してください。もちろん日本のすべてが空き家だらけになるといった予想はできません。たとえば私が仕事で関わっている茨城県のつくば市、つくばみらい市は、2045年に東京都全体の伸びを超えています(107%/107.6%)。

 しかしここで私たちを悩ませるのは、空き家が増えたからといって、そこに誰かが自由に住めるわけではないということです。その家には持ち主がいます。持ち主は死去したかもしれませんが、相続したはずの遺族がいます。それを行政が買い取って、誰かにタダで配れるわけでもありません。

【次ページ】「コスパ」以前の「リスク」についても考える

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