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  • 2020/02/14

IT大国インド、製造業に本気でテコ入れ中 「Make in India」とはどんな取り組みか

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

2030年には世界一の経済大国になると言われているインド。マイクロソフトやグーグルといったIT大企業のCEOにもインド出身者が就任するなど、多くのIT人材を抱えています。国内でもIT産業が急速に成長しており、IT大国として台頭しつつあります。今回は、このインドにおける第4次産業革命の取り組みについて取り上げます。

東芝 福本 勲

東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター 参事
東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 担当部長
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)正会員となり、教育普及委員会副委員長、エバンジェリストなどをつとめる。その他、複数の団体で委員などをつとめている。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』『デジタルファースト・ソサエティ』(いずれも共著)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。

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今、インドの製造業で何が起ころうとしているのか
(Photo/Getty Images)


インドの経済成長のけん引役はサービス業から製造業へ

 近年インドは G20諸国の中でも高い成長を続け、2014 年以降は期によっては中国を上回る成長率を示しています。

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図表1:実質GDP成長率(前年同期比)の推移

 製造業を中心に発展した中国などの東アジア諸国とは異なり、インドではIT 産業を含むサービス業が経済成長を牽引してきました。産業構造の推移を見ると、中国が1990年代に入り製造業のシェアが急拡大し「世界の工場」と呼ばれるまでに発展したのに対し、インドは1990年代半ばからサービス業のシェアを急速に高めています。

 現在中国でも第2次産業が頭打ちになる中でサービス業のシェアが高まりつつありますが、インドのサービス業はそれを上回る拡大を続けています。

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図表2:インドと中国の産業別実質付加価値シェアの推移

 インドの人口は現在中国に次ぐ世界第2位で、2025年には世界首位に達すると予測されています。また、人口の約半数を25歳以下の若年層が占めています。こういった面から見ると、インドは生産・消費の両面でさらなる成長が期待される巨大マーケットを有しています。

 サービス業が先行して発展したインドは、今後海外から製造業を誘致し、これまでの輸入依存から国内生産へ体質を切り替えることによって、インド国内の製造業を発展させようとしているのです。

インドの製造業振興策「Make in India」

 インドのナレンドラ・モディ首相は、2014年に国家政策として「Make in India」を発表しました。Make in Indiaは、インドの高い経済成長と雇用創出のために、従来依存していたサービス業から製造業へと成長の軸足をシフトさせ、海外からの投資促進により製造業を発展させることを目的としています。


 雇用という観点では、インドでは製造業、特に中小製造業の占める割合は大きく、農業に次ぐ就労人口を抱えています。高い経済成長と、増大する人口に見合う雇用創出を両立させようとしているのです。

 インド政府はMake in Indiaによって、製造業によるGDPシェアを60%程度に向上させることを目標とし(政策発表時は15-25%)、自動車、バイオテクノロジー、オイル・ガス、鉄道、宇宙など振興対象となる25業種を中心に若年層の雇用を確保し、2022年までに製造業で1億人の雇用を創出することを目指しています。

 Make in Indiaには、対象業種における投資やイノベーションの促進、知的財産の保護、製造インフラの構築に向けた新規優遇措置などが含まれています。この製造のインフラとして想定されているのは、デリー・ムンバイ間 産業大動脈構想(DMIC:Delhi Mumbai Industrial Corridor)、産業クラスター、スマートシティーなどです。

 DMICは日本とインドの共同プロジェクトであり、その対象地域は、日本の国土面積を上回る約51万平方キロメートルを予定。鉄道を中心に巨大な産業地域を形成することが目的であり、工業団地や物流拠点、都市交通システムなどが整備される計画です。日本はDMICを通じて再生可能エネルギー、リサイクルシステム、スマートグリッドなどをインドに普及させ、環境に配慮したスマートコミュニティーの実現を目指しています。

世界の製造業変革の動きの取り込みをはかるインド

 現在、世界の製造業は第4次産業革命と言われる構造的な変革期を迎えており、新興国においてもそれに追随する取り組みが急速に広がっています。

 この背景には、ドイツのインダストリー4.0における国際標準化の動きが加速し先進各国でDXの取り組みが推進される中で、これらを製造拠点である新興国へスムーズに展開させようとする目的があると考えられます。ドイツは中国などの新興国と連携を進めていますが、インドは「ハノーバーメッセ2015」(ドイツで開催された世界最大規模の産業見本市)のパートナー国となるなど、比較的早くドイツとの連携を開始しています。


 Make in Indiaのビジョンには、インドを「デジタルによって強化された社会と知識経済に変える」ことが掲げられています。そこで製造業における雇用創出とともに、第4次産業革命に必要な先端技術を導入し製造業のデジタル化を進めようとしています。インドでは1990年代に経済が自由化されIT産業が発展してきましたが、そのIT産業の力を今後発展を目指す製造業に活用しようとしているのです。

 インド政府はその政策の1つとして、産業界における高速通信を確保するため「デジタル・インド・プログラム」を立ち上げ、デジタル技術によるさまざまな恩恵を国民が享受できるようにする取り組みを進めています。スマートファクトリーを実現する、ドイツのインダストリー4.0と同様の取り組みなどもここに含まれます。

 また、外国企業の製造拠点を誘致し、インドを世界の重要な製造ハブに位置付けようとしています。中国が人件費の高まりなどによって「世界の工場」としての注目を失いつつある中で、多くの企業が中国の代わりとなる製造拠点を探しています。インドには従来のサービス産業による成長だけでなく、豊富やIT人材を活用した製造業のデジタル化、DX推進の担い手となることへの期待も集まっています。

【次ページ】製造業デジタル化の担い手となるインドのIT産業・スタートアップ

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