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  • 2020/03/19

「米海軍で最重要」ミサイル原潜コロンビア級のプログラムはどう展開されているのか

連載:軍事産業の新潮流

米国海軍の「コロンビア級原子力潜水艦プログラム」が新たな指揮系統の下、進展している。米国のジェームス・ガーツ次官補によれば、同プログラムは「米国海軍の最重要プログラム」という。資金と技術に関する懸念はじめ、同プログラムの現状をIHSマークイットの軍事アナリスト、マイケル・ファービーがレポートする。

執筆:IHSマークイット マイケル・ファービー

執筆:IHSマークイット マイケル・ファービー

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コロンビア級潜水艦は今後数十年の米国原子力ミサイル能力の大半を運ぶことになる

米国海軍にとって最重要プログラム

 コロンビア級弾道ミサイル原子力潜水艦(略称:SSBN)プログラムに対し、最近になってプログラム・エグゼクティブ・オフィス(PEO)の設置と熟練の潜水艦将校であるスコット・パパーノ海軍少将のPEO司令官任命により、米国海軍は今、オハイオ級フリート(船隊)の潜水艦後継プログラムを軌道に乗せるため、新たな取り組み強化を進めている。

 軍は現在、一部の潜水艦ブロック購入計画や設計ソフトウェア開発の仕上げ、また2020年4月に予定されているプログラムの重要な設計審査に向けた準備に追われている。

 コロンビア級原潜のプログラムが米国海軍にとってこの10年間最も重要な調達案件だった。しかし、この次世代SSBNは、後継プログラムを推し進め、資金ニーズ解消に向けた官僚的アプローチが不足していた。

 「これは海軍の最重要プログラムであり、新たなPEOの設置は明日の課題に立ち向かうためのものだ」と米国海軍で調達と研究開発を担当するジェームス・ガーツ次官補は言う。「12隻のSSBNの初期資金調達から建造、開発、試験、連続生産に至る進展は、国家安全保障戦略への目標達成にとって非常に重要だ。PEOコロンビアは資金スポンサーや利害関係者、外交パートナー、造船業者、サプライヤーらと直接協力し、圧倒的な打撃・破壊能力を提供でき得る持続可能性に取り組む」と同氏は語る。

 コロンビア級原潜のかじ取りを引き受ける以前、パパーノ海軍少将は海軍魚雷ステーションの司令官として、また海軍総合試験施設のディレクターとして海軍将官任務を担当していた。新たなPEOはそのプログラムの性質を考慮して「深く静かに潜航せよ」をモットーとする態度を取ってきたが、プログラム全体の取り組みが加速するに伴い、同海軍少将の尽力も目に見えるようになってきた。



資金と技術に関する懸念

 パパーノ海軍少将の就任から間もなく、Huntington Ingalls Industries(HII)の一部門であるNewport News Shipbuildingがリードシップ用の公式スチールカットを行った。この造船所では6月に潜水艦の事前建造を正式に開始している。リードシップの建造自体は2020年10月1日に予定されている。新たな指揮部隊はこの潜水艦プログラムが構想と要件の段階から初期建造段階にちょうど移行したときに立ち上げられたが、資金と技術に関する懸念はこの取り組みに引き続き打撃を与えている。

 米国海軍は、仕様あるいは要件について、100%完成しており潜水艦の詳細設計もほぼ仕上がっているという。コロンビア設計のための統合製品開発環境(IPDE)も完成している、と海軍海洋システムコマンド(NAVSEA)はJane’sに語っている。設計を支援するツール能力はすべて納入済みで、造船を支援する1つのツールのみが認証待ちとのことだ。

 「リードシップは本当に面白い段階に来ている」とHIIのマイケル・ペターズ CEOは8月1日の四半期財務実績報告で述べている。「設計は建設に間に合うか? 我々のスケジュールは素晴らしいものだ。Electric Boatにいる我々のパートナーはこれまで素晴らしいスケジュールを組んで順調に進んできたが、今その実行の時が来たわけだ」

 米国海軍のバージニア級攻撃型原子力潜水艦(SSN)プログラム同様、コロンビアも造船業者2社が開発と建造を手掛けている。米国海軍は潜水艦統合建造戦略(SUBS)計画の下、バージニア級潜水艦建造時のパートナーであるNewport News ShipbuildingとGeneral Dynamics Electric Boat(GDEB)にコロンビアプログラムの業務にともに取り組むことを要請、業務の大半は主契約者であるElectric Boatが手掛け、Newport News Shipbuildingは副契約者となる。海軍では、Electric Boatの担当分は造船業務全体の4分の3をやや上回り、残りをNewport News Shipbuildingが担当することになると推測している。

 バージニア級同様、Electric BoatとNewport News Shipbuildingはコロンビア級潜水艦をセクションあるいはパートごとに建造し、Electric Boatが12隻すべての最終組み立てを行う。

 コロンビア級業務の調整と潜水艦建造全体の分割をより円滑に進めるため、米国海軍はバージニア級の業務におけるNewport News Shipbuildingの担当分を増やす計画である。たとえば、バージニア級の現在の契約では、最終組み立て作業を2社で概ね均等に分割することになっている。しかし、コロンビア級プログラムがひとたび本格的に動き出せば、米国海軍はNewport News Shipbuildingに割り当てるバージニア級潜水艦の最終組み立ての隻数を当初計画より増やす予定である。

 米国海軍はバージニアと同じくコロンビア潜水艦でも、少なくとも建造当初はブロック購入を考えている。「海軍はSSBN 826とSSBN 827の契約については2隻ブロック購入を計画している」とNAVSEAはJane’sに述べている。「海軍はコロンビア級の残りの潜水艦について、契約戦略を評価中である」。

 バージニア級プログラムのここまでの成功を受け、米国海軍あるいは防衛アナリストの間には、Electric BoatあるいはNewport News Shipbuildingによるコロンビア級プログラムの遂行に問題を予想する者はほとんどいない。しかし、両社より下の階層に位置する業者のなかには、この新たな潜水艦の開発に波風を立てているところもある。

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業者の審査はどう行われたのか

 たとえば、2017年には、製造上の不具合が確認され、統合電源システム(IPS)の第一生産見本モーターの納入が遅れ、その後にサプライヤー生産設計の更新と海軍によるテストが必要になった、と政府系監督機関が指摘している。

 1年後の2018年中盤、Electric Boatの下請け業者であるBWXT Technologeis(BWXT)がコロンビア級とバージニア級の潜水艦プログラム向けにElectric Boatに納入される外注品のミサイル管に溶接の問題を確認した。

 この問題はBWXTのミサイル管とペイロード管に影響する非破壊検査に関するものだった。BWXTのCEOであるレックス・ジェベーデン氏は、その年の8月7日開催の四半期実績報告会で防衛投資アナリストに対し、同社は「この領域の溶接業務の一部を自主的に中止」し、影響を受けるコンポーネントの修正をするとともに、この問題の解決法を見出した、と説明している。

 影響を受ける管は計画済みのバージニア級バージニア・ペイロード・モジュール(VPM)とコロンビア級と英国ドレッドノート級SSBN用に共同開発された共通ミサイルコンパートメント(CMC)の一部であった。英国はバージニア級潜水艦4隻の次世代ドレッドノートSSBN 3~4隻への置き換えを計画中だが、これまでにCMC設計用に資金の一部を提供済みで、そこにはこの作業の初期資金の大部分も含まれている。

 コロンビア級潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射管はオハイオ級のそれと同じサイズになり、直径は87インチ、D-5 SLBMの収容に十分な長さを備える。両級とも長さは約170.7mになるが、コロンビア級の13mビームはやや幅が広くなる。しかし、コロンビア級潜水艦のSLBM発射管が16基しかない一方、オハイオ級は24基を備える。ミサイル発射管の数が少ないにも関わらず、コロンビア級潜水艦の水中排水量は18,883トン、一方オハイオ級のそれは17,033トンとなっている。

 BWXTはコロンビア-ドレッドノートプログラムに発射管を供給する3社のうちの1社であり、バージニアプログラムに発射管を供給する2社のうちの1社である。BWXTの体積検査を要する溶接はすべて、問題発覚により一時中断された。問題のある発射管の一部はすでに造船所に納入済みで艤装のさまざまな段階にあったが、潜水艦に設置済みだったものはなかった。

 米国海軍では溶接問題につながる3つの問題を特定したとコロンビア級のプログラムマネージャーであるジョナサン・ルーカー大佐は言う。第1の問題は性能で、溶接の難易度が業者の能力を超えるものだったことが判明した。次の問題は監督で、溶接の適合性を確保するための検証プロセスが不十分だった。最後の問題は、米国海軍が業者の能力の適切な評価に失敗したことで、軍では、業者が別の作業を正しく実行しているため溶接作業も正しく実行できるだろうという誤った結論を下していた。

 溶接に関する当面の懸念を是正するため、米国海軍は各溶接部を積極的に検査することを決定、業者と下請け業者による現地検査を実施するとともに、主要潜水艦建造契約社は下の階層の業者が溶接その他の潜水艦建造作業を適切に実施し検証するよう確保させた。米国海軍はまた重要サプライヤー329社を特定し、その作業とプロセスのより徹底した見直しを開始した。

 米国海軍はJane’sに対し、5月に軍はElectric Boatによる溶接不具合の修復計画を支持していると語った。「General Dynamic Electric Boatは米国と英国のクアッドパック初回分と契約管すべてについてミサイル発射管修復計画を米国海軍に提出、軍はこれをレビューし、GDEBが溶接と非破壊検査の問題の根本的原因を特定し関連下請け業者からの情報も組み込んだ総合的修理修復計画を実行していることで意見の一致を見た」という。

 米国海軍いわく、この計画はElectric Boatの、溶接問題に対処しコロンビア級初の潜水艦用Super Module 3(ミサイルコンパートメントモジュール)の納入に11ヵ月の余裕を維持するためのそれまでの取り組みの上に構築されたものだという。

 「Electric Boatと海軍は溶接品質と不十分な非破壊検査の問題からの復旧を続けている」とNAVSEAはJane’sに語っている。「Electric Boatはミサイル管業者に対する是正措置を継続しており、必要な溶接の修理が進行中だ」。

 同じく、米国海軍はElectric Boatに対し、コロンビア級フリートを支持する潜水艦産業基盤の開発および拡大と統合事業計画およびマルチプログラム材料調達・生産支援ユニットの一環である原子力潜水艦建造事業(バージニア級SSNおよびフォード級航空母艦)に、4億9,700万米ドルの修正契約を供与した。この契約は、下請け業者の安定性向上と主要コンポーネントの生産経済に基づく経済的効率の獲得を目的としている。

 米国海軍は契約公開リリースにおいて、原子力潜水艦建造の産業基盤は「海軍の武力構造評価に関連する需要の高まりを支えるべく生産能力を拡大している」とし、さらに「下請け業者の能力改善はコロンビア級、バージニア級、フォード級の各プログラムのリスクを軽減するだろう」としている。

【次ページ】SSBN置き換えプログラムは「国家としての我々の存続の基本」

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