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  • 2020/04/24 掲載

新型コロナで苦境の飲食店、配膳ロボットの活躍の場は?

森山和道の「ロボット」基礎講座

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今回は、フロアー配膳ロボット「PEANUT」について紹介する。飲食店向けのPOS、オーダーエントリーシステムを手がける日本システムプロジェクトが、飲食店の省人化・スマート化、エンターテイメントを目的として手がけている移動ロボットで、レンタル料金7万円/月で3月末から展開中だ。飲食業でもITを使った効率化や省人化が進められていた一方で、新型コロナウイルスでいま非常に厳しい状況にある。どのような展開を考えているのか聞いた。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。


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飲食店向け配膳ロボットは新型コロナ対策にも活躍中

 日本システムプロジェクトが日本国内ディストリビューターとして展開しているフロアー配膳ロボット「PEANUT」の用途は配膳の省人化である。具体的には、焼き肉とフードコートを組み合わせた業態の「肉の夜市 大曽根店」、仙台市の焼き肉レストランひがしやま六丁の目店、福岡市中央区の「定楽屋 天神大名店」などに導入されている。

 ロボット自体は、2010年に創業した中国のサービスロボットメーカーKeenOn Robotics製である。「PEANUT」というのは、KeenOn社のサービスロボットのシリーズ名だ。KeenOnのロボットはすでに大手火鍋チェーン「海底撈(HaiDiLao)」他で広く活用されており、 6,000体以上の稼働実績があるとされている。「海底撈」は日本国内でも展開しているが、歌舞伎町店と海浜幕張店では主にランチタイムでの配膳に使われているとのこと。



 店員はロボットのタッチパネルで移動指示を与える。一度に複数のテーブルへの配膳も可能だ。一般的なAGVに必要な、床面のガイドテープやマーカーの埋め込みなどの施工は必要ない。ロボット頂部にカメラがついていて、天井に貼られた位置マーカーを赤外線で見ながら移動していく仕組みだ。移動速度は1m/秒。体感では結構早い。床は最大傾斜角度5度まで対応している。最大積載重量は1パレットあたり10kgで、合計30kgまで。人や障害物は自動回避する。

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フロアーロボット「PEANUT」の機能

 客側から見たロボット操作も単純だ。タブレットで注文を行うと、しばらくするとロボットが料理あるいは食材をトレーに載せてやってくる。料理をロボットのトレーからおろした後は、頭の部分をポンと触るとロボットは厨房(ちゅうぼう)に戻っていく。行うべき操作はロボット自身が音声でガイダンスする。



 飲食店だけではない。KeenOn Roboticsのロボットは昨今の新型コロナウイルス禍以降は軽症者が入院する病院やホテルなどでも配膳用途に用いられている。今回新たに開発されたわけではなく、むしろすでに多くの運用実績がある点が評価されたと報じられている。

 主に下膳を目的としたこのロボットも国内販売している。国内でも医療関係からの問い合わせがあれば応じるとのことだ。ただし、エレベーター連動によるマルチフロア対応などはできないので、各フロアに1台といった運用が必要になる。なお同社は薬の払出伝票など医療関係向けの情報システムも一部手がけているという。ほかにも、同じく重量物を扱う図書館からも引き合いがあるそうだ。

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バッシング用モデルの仕様

 飲食店向けレジやPOSを手がけている会社がロボットを導入するのは、すでに販路を持っているだけに相性が良さそうだ。それにしても、なぜロボットを扱うことになったのだろうか。ロボット事業を担当する日本システムプロジェクト営業部 次長の長谷川洋一氏に話を聞いた。



オーダーのセルフ化から配膳のセルフ化へ

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日本システムプロジェクト
営業部 次長
長谷川 洋一氏

 いま、飲食店ではオーダーはセルフ化による省力化・効率化が進んでいる。だが配膳はセルフ化されていない。一言でいうと「配膳をセルフ化する」ことが、このフロアーロボットの用途である。

 日本システムプロジェクトは1991年創業。「飲食店の未来をおもしろく」を掲げて、チェーン店だけでなく個店も含め、全国およそ 4,200店の飲食店にシステムを導入、ソリューション事業を展開している。主要取引先には誰もが知っている中華チェーンやラーメンチェーン、居酒屋、回転ずし、喫茶店などが含まれている。全国35カ所の保守拠点を持っている点も同社の売りだ。

 今のセルフレジシステムは進化している。同社のシステムはセルフオーダー、ハンディ、セルフレジ、グローリーや日本コンラックスの釣り銭機などが連携可能で、券売機方式への対応や、マルチ決済、すなわち最近やたら増えてしまった各種支払い方式にも対応している点が売りだという。

 セルフレジだが、たとえばランチを複数人で食べに行くときには必須の機能である個別会計や、逆に複数テーブルの伝票の合算などができる機種もある。昼間は券売機で、夜はセルフレジといった1台2役タイプもあるのだ。

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日本システムプロジェクトのセルフレジの一つ

 POSシステムは、厨房内へのオーダー表示、注文状況管理、空席や予約中といったフロア情報管理や注文管理もできる。客のスマホ自体をセルフオーダーシステムにしてしまう低価格システムや、レジの渋滞を緩和するためのオーダー受付と会計を分離した前会計システムなどもラインアップされている。また、ASP各社のシステムと連携することもでき、クラウドに各店舗のPOS精算データを送信することで本部は日々の利益を管理することができる。各店舗にメニューデータを配信することも可能だ。

 このほか、回転ずしチェーンのベルトコンベヤーを制御するPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)を上位からたたくレーンコントロールモニターなども展開している。既存の操作パネルよりもミスなく商品を届けることが可能になる。

 配膳ロボット「PEANUT」は、日本システムプロジェクトが持つ、これらのソリューションの一つとして位置付けられている。同社には海外事業を行うJSPインターナショナルという関連会社がある。飲食店の独立開業のコンサルやシステム導入、保守などを行っている法人で、日本の大手回転ずしチェーンや居酒屋チェーンの海外店のシステムなども手がけている。

 そこに前述の大手火鍋チェーン「海底撈」から「日本の店舗でもロボットを使いたい」という話が持ち込まれたことがきっかけの1つだったという。ロボットを使うには管理保守ができる会社が必要だ。もともと日本システムプロジェクトでも、オーダーに続いて配膳のセルフ化を模索していたことから、もともと「海底撈」が使っていた KeenOn Roboticsのロボットをパートナーシップ契約を締結して日本国内で扱うことになったというわけだ。

 現状のロボットはスタンドアローンの機能だけで動いており、まだセルフオーダー端末との連携はしていない。だが「将来は座席状況を考慮してデザートを提供したり追加オーダーを取りにいく、ハンディ端末やセルフオーダー端末で呼び出ししたり、レジや会計との連動などを進めていきたい」という。将来といってもそれほど先の話ではなく、夏を目途に順次実装するという。

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オーダー端末とロボットの連携や、自動で追加オーダーを取る機能も実装予定

【次ページ】大手チェーンは「働き方改革」をロボットに求める

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